第2話

私は東京の田舎の病院で生まれた。生まれた時の私の体重はとても少なかった。実際に流産の危機もあったそうだ。

きっと私が生まれた時の父と母の喜びは凄まじかったことだろう。

私は今、それを想うだけで幸せな気持ちになる。

この高度資本主義社会の波に揉まれ、ときに、なぜこのような物質主義の冷たい世界に私は生まれたのだろうか。

きっと罰ゲームでコウノトリに無理やり拉致られたのではないか?と考える時も多々あるが、生まれた時の周りの喜び。家族の喜び。を胸に想うと、それだけで、この世界もそんなに悪くないのではないか。と簡単に幸せな気持ちになったりもする。

不安定な天秤の上に乗っているような気持ちになる。

サバンナの肉食動物や草食動物をみると、なんて安定していて、システマティックな存在なんだと想う。

起きる。食べ物を探す。食べ物を食べる。寝る。


それに対して人間は、

起きる。顔を洗う。歯を磨く。シャワーを浴びる。朝ごはんを食べる。携帯を確認する。etc...

など、あまりにも複雑でその上、無責任に不安定ではないか。やはり技術が精神を恐ろしい速さで追い越してしまっているのがここ数百年の人間だと感じる。


父親は有名国立大学を出ており、母親は地元の商業高校を出ている。

私は昔からなぜ、父親は名の知れた大学を出ているのに、家族はやや困窮しているのだろう。とずっと謎だった。でも結局はどこの家庭もそうなのだろう。どの家庭もやや困窮してるのだ。

余裕のある家庭なんてない。


その後私は、5年ほど東京で育ち、父親の転勤の影響で、中部のある県に移りそのまま高校生まで育った。

物語は高校生になってから始まる。

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