第2話

そんなある日、お店の出入り口にあるマットを交換している男性が「あれ?今日は賄いまだなんですか?」なんて聞いてきた。

えっ?「あっはい…」と、とっさに応えましたが、ん?なんで?って感じでした。

別に普段から話したりしてないのになれなれしいなって…

それから1週間くらいしてから、「あのバイト君カッコよくないですかぁ?」って仕事中にいつも話かけてくる太田が言った。ふと見ると、あのマット交換の彼でした。「えーなんか軽そうじゃない?」と私が返すと、「そうかな〜?なんか横浜流⭐︎くんに似てない?」え?そうなの?そんなによく見てないけど…いつも結構髪がボサボサって感じだった気がしてい、た、けど…

似、似てる〜そう言われると似てます!って思ったのに「そうかな?」そんなイケメンが私に話かけてくれたのにそっけなくしてしまったーーーガーン…それから仕事をどこまでやっていたのかよく覚えていない程ショックでした。


それから1週間後にまたやってきた。今日こそこっちから話しかけてみるぞ!って思ってたら、緊張して話せずに「サインもらえますか?」と普段通り彼はペンを渡してきた。何か言わないと、話したい、でも話題が…と思ってたら「あれ?村上さんって左ききなんですねー」って話してくれたー!「あっうんそうだけど…」あっやばーまたこんな返し…

そう私こと、村上花恵はつい男に優しく出来ないのだ。昔からこれでかなりの誤解をまいてきた。またやってしまった!

でも私ももう30歳だし、危険な橋は渡らないのです。慎重にいきたいと…

仕事場から駅まで歩いて10分ほど。これが疲れてる時にはこたえる…歳かなぁと思いつつ歩いていたら、プップー!車にクラクション鳴らされた。えっ私歩道をあるいてるのに?と思い振り向くとそこにはマットの彼がトラックの窓から顔を出して手を大きく振っている。えっ?私?と、自分を指さして、びっくり顔。

彼は優しくうなずいて、近くに車を停めた。

「お疲れ〜村上さんだよね?」「あっはい」「いつもどうも。駅まで歩くの大変だよね?」「あっまぁ、いつもの事だから」「どこからきてるの?」「保土ヶ谷」「マジで?うちもそっち方面だよ。今、時間あるから乗せてってあげるよー」え?ええええぇぇぇ?「悪いからいいよ」「どっか行くの?まっすぐ帰るなら、ついでだし、送って行きますよー」え?なんで?「仕事の車だけど、さっ乗って乗って!後ろから車くるし」流れで「あっはいありがと」手を差し出して引っ張ってくれた。が、ちょっと強引だよね?なんか企んでる?宗教?なんて考えてたら、「そこに缶コーヒー入ってるからよかったら」「あっどうも」なんか言われるままになってる。「あっいきなり後ろから声かけてスイマセンでした。いやー今日いいことあって、なんかぱっと見たら知ってる人かな?って思ってつい話しかけちゃいました。あっ自分、田村琉二って言います。名前知らないですよね?」「あっはい。私は村上…」「そう村上さんだよね?いつも忙しくテキパキ動いてますよね」え?えーー評価してるの?「下の名前は?」「花恵です。」「へぇー花恵さんって言うんだーいい名前だね。」普通だけど…って思いつつも嬉しい!「友達とかには花ちゃんとか呼ばれてる?」「いやーさすがにちゃんはないですね」「えっそうなの?」いやーそのとぼけた顔、ズルイ、カッコいい♡うなずくのが精一杯。

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