第286話 ホラー人狼


(微ホラーかもしれないので苦手な人は注意!)


暗闇の中でホラゲをやる事になった西宮、北条、百合ひゃくあの3人。

プレイするのは先ほど梅雨町と丸井がやっていたのものと同じタイトル。

操作は主に北条が行うらしい。


不気味な洋館で目を覚ました主人公が脱出を試みるところから物語は始まる。



(主人公)『ここはどこ……? 脱出しなきゃ!!』



「いやいやいや!! 迂闊すぎるわよ!! 知らない洋館よ!? よく探索しようと思えるわね!?」


「そうだよ!! なんで主人公がこんな乗り気なの!?」


「まぁゲームだし……ほら、見て欲しいとことか探して欲しいとこ言ってくれ」


「何も見たくないし、何も見て欲しくないわよ!!」


「し、視線は斜め下でお願いします!! お化けの顔は見たくありません……!!」


「やりづれぇー……」



北条は普段そんなにゲームをやる方ではないのでプレイヤースキルに自信はないのだがやたらと注文が多かった。



「百合先生はいいリアクションだね! 流石に西宮さんも演技が上手い! 茉希ちゃんは……まだ怖くないのかな?」


「そ、そんな事ないぞっ! 超怖い気もしてきた!」


「ホンマか姉貴ぃ?」



この中にホラー人狼が2匹紛れ込んでいるのだが、他のメンバーは未だ気付いていない。

北条は先ほどの動画視聴で最初の方の探索は答えを知っていたので、ボロが出る前にさっさと終わらせた。


問題は初見のゾーン。

主人公は懐中電灯を持って暗い廊下を歩いてる。



――ぴた……ぴた……



「……待ちなさい。なんか足音してない?」


「ん? 裏か?」



くるっ。

北条は自然に振り返った。



「「――きゃああああッ!?!?」」



「……うるっさ」



ちなみに後ろには何もなかった。



「ちょっと!! 振り向く時は振り向くって言って下さいっ!!」


「そうよ!! 私たち操作していなんだから!!」


「す、すいません。以後気をつけます。 ……てか、操作変わる?」



「「それは絶対にイヤ!!」」



全力拒否を頂いたところで北条は再び進行しようと振り返る。


くるっ。



――なんか居た。



「「合図はッ!?!? いやぁぁぁッッッ!!」」



抉り取られた両目から血を流す化け物は首が据わっていない。

明らかに尋常ではないソレはゆっくりとこちらに歩みよって来る。



「来る来る来る来る!! 逃げてぇッ!!」


「なんで様子見してるの!? 得意のクイックターンを見せなさいよ!!!!」


「あ、わりぃ。操作受け付けてないんだわ。詰んだ」


「じゃあこの時間は何!? この時間は何で存在してるんですか!? 一思いに○して下さいよ!!」


「演出じゃないですかね。……お? でも、ほら。よく見たら足あるからお化けじゃないかもしれませんよ」


「そういう問題じゃないわよ!! 明らかに殺意が……ひッ!」



――(グシャ)YOU DIED



西宮と百合は死の間際に目を閉じて北条を強く抱きしめた。

巨乳と貧乳の違いがよく分かる瞬間だった。

北条もワンテンポ遅れて自分の目を覆い隠しておいた。



「いいねぇ!! ホラゲのリクエスト多いのも分かって来たかも!! 皆の反応良くて、ワタシもワクワクしてきちゃった!!」


「姉貴、ホントにビビってんのか? なんか南雲に似たものを感じるぞ」


「それを言うなら西宮先輩は演技じゃないような……?」


「お姉様の演技が完璧過ぎるのよ。むしろ百合先生が怖がり過ぎて演技っぽいですわ」


「どーする? じゃあ単品でやって貰う?」



――ガシィ!! ――ガシィ!!


(ふるふる、ふるふる)



西宮と百合は全力で首を振って涙目で北条に訴えかけている。



「あ、あー……俺怖いから3人じゃないと無理だわ!!」


(なんで継続する流れなんですかッ!!)


(そうよ!! やめるなら今しかなかったでしょう!?)


「おっけー! じゃあせっかくだし、一番怖いらしいとこの反応見せて貰おうかな」



「「ひいぃ…………」」



南雲がノートPCを操作してロードが明けた瞬間から既に画面が赤い。

場所は地下らしく、なんかピチャピチャと滴る音もしており全体的に雰囲気は終わっている。



(主人公)『ここを抜ければ……外に出られるかも!』



「『かも』!? 確証ないんだったらやめた方が良いと思うんですけど!?」


「なんでこういう人たちは地下に行きたがるの!? 洋館なら窓から飛び降りた方がマシよ!!」


「……進んでいいか?」



埒が明かないので北条が軽く進めていくとある部屋に辿りつく。

室内の中央には井戸のような穴があり、主人公曰くそれは外に繋がっているらしい。


まぁどう見てもり部屋であるのは間違いない。



「や、やー。覗くの怖いなぁ(棒) 操作変わる?」



「「……ぇ?」」



2人は『この人はどうしてそんなことを言えるの?』という真顔だった。



「だよな! 覗くぞ!?」



ちらっ。



――思っていた10倍は近い位置にかなりヤベー奴が居る。



近くから見えるか見えないかギリギリの縁にへばりついていた。

井戸の穴と同じくらい顔面、そして満面の笑み、目は完全にイッており、口からは用途不明の小さな腕が無数に伸びている。

体にもそこら中に手足があるらしく移動方法は虫に近い。


どうあがいても無理そうなバケモンがそこに居た。



「きっっっしょ!!」


「うあ、ぁ……ぁ……」


「…………(きゅう)」



ガチ泣きし始めた百合と失神した西宮。

もはや北条が頼れるものは自身のプレイヤースキルだけだった。

こいつと接触したら何を見せられるか分かったもんじゃないので全力で主人公を操作した。



「き~~~んもっ!! 無駄な手足多過ぎんだろ!! びしゃびしゃ飛ばしてるのは何なん!?」


「でもバタバタして可愛いよね。カ○ナシみたい」


「いや、あれもキモいだろ!!」



――数分後。


だいたいこういうゲームのラストチェイスはそう難しくないので死に物狂いだった北条は一発でクリア出来た。



「……っく、ひっく……主人公はっ、これでぇ、うっく、お家に帰れるん、ですか?」


この期に及んでまだ百合は主人公の心配してくれているらしい。

聖人である。


「……ぁ、あら? 終わった、の? もうエンディング?」


「お、おう。2人ともお疲れ」


西宮も無事再起動出来たらしい。


「いやぁ、ホントみんなありがとう! 参考にさせてもらうね!」


「結局姉貴はビビってたのか? キモがってただけな気が……」


「最後はびっくりしてなかったし西宮先輩はやっぱり演技だったんだね」


「逆に百合先生は疑って申し訳ありませんでしたわ。わたくしたちが悪い事をしたなってしまいましたわね」



「え……? 『みたい』?」



***


こうして、ホラー人狼1日目は誰も吊るされる事なく終えた。

いや、2日目はないんですけど。


しかし、その日の夜に人狼側に動きがあった。



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