第284話 リニューアルした意味
「えー。それでは、ヒーローインタビューに参ります。十河さん、逆転3ランお見事でした」
「あ、ありがとうございます……」
地獄のような雰囲気で登壇させられた十河。
新聞部と放送部の即席インタビューを受けていた。
まさかの幕切れに観客から十河は大罪人の様な扱いを受けている。
「あの時、打席ではどんな気持ちでしたか?」
「しぇ、しぇんぱぃに褒めて貰おうと必死で……」
涙目の十河は観客席の南雲たちに助けを求めた。
「優、巻き込もうとしてるぞ」
「茉希ちゃん! 目を合わせちゃダメッ!」
「やべ! アタシらも家庭科部だと思われる!」
「くッ……十河。あなたの犠牲は忘れませんわ。」
「撤収するわよ!」
血も涙もない関係者たちはほとぼりが冷めるまで十河を人身御供にする事にした。
その後、十河は観衆の前でインタビューという名の尋問を受ける事になった。
***
ソフトボール部に紛れて運動場まで帰って来た西宮たちは改めて健闘を称え合った。
「今日はいい試合だったわ。ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ! 収穫もありましたし、インターハイに向けいい刺激になりました!」
西宮と海瀬は熱い握手を交わした。
十河から逆転3ランを打たれ、反省点があった
(日暮)「一つもアウト取ってませんが、気にしないで下さい地主先輩!」
(月岡)「点数取られてただけですが、元気出して下さい!」
(火山)「逆転3ラン先輩! 地主打たれたけどドンマイです……あ、逆か」
(太齋)「いやぁ、最後のライズボール。アレにはシビれたね。試合を決める一球とはまさにあの事だよ。GG」
「みんなッ……! そうか! 私、次は頑張るよ!!」
「いや、どんだけメンタル強いんだよ。次からお前は東堂、一ノ瀬に次ぐ3番手な」
「次こそ監督の期待に応えて見せるぜ!」
監督と部員全員にチクチクされていたが地主は全然気にしてなかった。
もしかしたらその強心臓こそが彼女一番の持ち味なのかもしれない。
「……それじゃあ、話もまとまったところで、ソフトボール部は吸収合併という事で」
「そ、そういえばそんな話もあったね……麗奈たちはなんでソフトボール部を乗っ取りに来たの?」
「うーんと、なんでだったかしら……?」
「バットでボコボコにするからじゃありませんでした?」
「それは過激派の意見な。実際はお前らの悪ノリだぞ」
「なるほど! いつも奴ですね!」
「まぁなんでもいいわ。約束は約束よ」
こうしてソフトボール部員たちは正式に家庭科部に入部してソフトボール部は廃部となった。(本当)
彼女たちはこれから『家庭科部(ソフトボール支部)』として活動する事になり、その見返りとして一ノ瀬と東堂という最強の矛と盾を手に入れた。
これに加え十河まで参入すればソフトボール支部は安泰だろう。
噂の当人も泣きながらやってきた。
「ふえぇぇ……しぇんぱぁい! 置いてくなんて酷いですよ!」
「これはこれは十河のアネキ。お務めご苦労でした!」
「あら十河? シャバの空気はどうかしら?」
出所してきた姉御を子分たちが出迎える。
あくまであの事件は姉御の独断という事にするつもりらしい。
酷い子分たちである。
「まぁ……うん。無事に練習試合も終わったし、みんなで出店回らない? お腹も減ったよね?」
「「「「「え?」」」」」 (←観戦してた5人)
「……え? なんか食べてたの? 僕らの試合中に……?」
「いやいやいや、そんな! なぁ!? 東堂たちの試合中だぞ! 流石にな?」
「そうよ。ちゃんと応援してたわよ。流石に、ね?」
「東堂先輩は試合に集中して観客席見てなかったかもしれませんが、南雲さん以外ちょくちょく離席してましたよ」
センターに居た一ノ瀬からは観客席が良く見えていた。
5人が途中から……いや、割と序盤から飽きていたのもしっかりと目撃していた。
一ノ瀬の告発によって4名ほどが開き直った。
「全然ボールが飛ばないから楽しくありませんでしたわ」
「頑張って投げてたのに!?」
「そうそう。変化球とか言ってもアタシらよく分かんねぇし。球速遅いとなんか投げたんかな? くらいの反応しか出来んわ」
「ま、まぁそれは観戦あるあるかも……だけどなぁ……」
試合というよりはスポーツ観戦を満喫した5人はもう色々お腹いっぱいだった。
ていうか、外も暑いし。そろそろ室内でのんびりしたい。
「せっかくだし、今日はソフトボール支部で交流を深めなさい。出店は全部私の奢りよ」
「「「「家庭科部、最高ッ!!」」」」 (←ソフトボール支部の皆さん)
「東堂先輩! こうなったらヤケ食いしましょう!」
「う、うーん。まぁいっか! ヤケ食いはしないけど、みんなで回ろっか」
***
こうしてソフトボール吸収した家庭科部だが、その後別に何かが変わった訳でもない。
家庭科部は家庭科部として、ソフトボールは普段通りに活動し、名称がただややこしくなっただけであった。
強いて言うなら、
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