第277話 悪魔の契約
しばらく東堂と一ノ瀬がソフトボール部の助っ人に行くようになった。
そんな2人が一時的に抜けた家庭科部では……
「大変よ! うちの部員2名が引き抜かれたわ!! やいの」
「な、なんだってーッ!! やいのーーーッ!!」
「いや、違うだろ。東堂たち助っ人に行くって言ってたじゃん。
……あと、その掛け声は何なん?」
「東堂先輩と一ノ瀬さんかぁ……じゃあ、まぁいっか」
「興味なし」
「お姉様がゴネるなら
3名ほどがやいのやいのと騒いでいた。
東堂も一ノ瀬も事情はちゃんと説明しているが、悪意ある解釈によって事実は歪曲されていた。
「あーちゃんを引き抜くなんて許せないよ!」
「そうよね。家庭科部のメンバーに手を出した報いは受けてもらいましょうか……」
「カチコミですか? 皆さん、バットの準備を!! 部室に乗り込みますわよ!!」
「い、いいえガブ。そんな物騒な事はしないわ」
「一人やべぇ過激派が紛れ込んでんな」
流石の西宮もインターハイ直前の運動部に強襲を掛けるつもりはない。
では、何をするつもりなのか?
「――ジャックよ」
***
その週の土曜日。ソフトボール部にて。
「え、えー……突然だがお前たちには今日、練習試合を行ってもらう」
「やった!! くそたるい練習よりよっぽどマシだ!!」
「
「嘘だよな? 監督?」
突然組まれた練習試合だが部員からの反応は上々だった。
この時期なら練習より実戦経験の方が大事なのは確かだろう。
しかし、こんな唐突に練習試合を組んで来る相手など碌な相手のはずもなく……
「相手は何処なんですか?」
「う、うちの学園だ」
「……は?」
「――私よ。待たせたわね」
「れ、麗奈!? と、みんな…………と、誰????」
まぁ、だいたい予想は付いていたと思うが対戦相手は家庭科部。
……ただし、戦うのは厳密に言えば家庭科部ではない。
西宮が連れて来た9人は丸女の制服を着用してはいるが、どう見ても学園の生徒ではない。
と、言うかどう見ても成人しちゃってる人たちだった。
そう、彼女たちは西宮の執事、
言うなればこれは『西宮選抜チーム(ルール違反)』だ。
「どうも。3年生の五味渕麻里奈です。今日は対戦よろしくお願いします」
「嘘だろ!? 絶対こんな生徒居なかったって!?」
あまりの白々しさに地主さんもびっくりである。
「ふふっ。丸女も広いですからね。3年間合わなくても不思議ではありませんよ」
「いやいやいやいや!! それにしたって9人見た事ないのは無理あるだろ!?」
五味渕含め、メンバーはだいたい20代後半~30代後半。
頑張って制服を着て貰っているところ大変申し訳ないが、制服では隠しきれない貫禄が滲み出ていた。
「彼女たちは裏3年生と言って普段は別の校舎で勉強してるの」
「この学園、裏とか表とかあんの!?」
「年が行ってるように見えるのは10~20年留年してるだけよ」
「じゃあソフトボールやってる場合じゃないだろ!? 勉強しろよ!!」
適当過ぎる西宮の解説も入ったところで、
ソフトボール部は13年生~23年生の裏モノ生徒たちと練習試合をする事となった。
***
顧問の海瀬によるスタメン発表で守備位置と打順は以下の通りになった。
一番:東堂(投手)
二番:
三番:
四番:一ノ瀬(中堅手)
五番:
六番:
七番:
八番:金谷(左翼手)
九番:木原(遊撃手)
FP:
ややこしいので細かい説明は省くが、ソフトボールでは打撃専門の『DP』と、守備専門の『FP』というものがある。
今回の場合なら捕手は太齋が担当して、二番打者は土方が担当するという認識で構わない。
そしてこれは現在11人居るソフトボール部の内、
「監督ちょっと待った!! なんで太齋はちゃっかり出てるの!?」
「まぁ捕手は代わりが居なかったからな。東堂と一ノ瀬の球捕れるのはあいつしかおらんだろ」
「自分が先発で東堂が捕手というパターンは……」
「あ"? 新入りぃ!? 東堂はお前より先輩なんだからちゃんと敬称をつけろや。東堂の投球をよく見とけ!!」
東堂と一ノ瀬が来たのは地主と太齋よりも先なので先輩と言う事になっていた。
海瀬はもはや東堂と一ノ瀬の事を部員だと思っている。
しかし、実はこれはあながち間違いではない。
何故なら、海瀬は西宮と悪魔の契約を交わしていたからだ。
「そうそう。一応、海瀬先生からは聞いてると思うけど、負けたらよろしくね?」
「ん? 監督? 西宮がなんか言ってるけど、変な約束とかしてないだろうな?
あの人この学園で前科たくさんあるって聞いたぞ」
「あぁ、なに。大したことじゃない。負けた方が勝った方の部活に吸収合併されるだけだ」
「「「「はいぃぃぃ!?!?」」」」 (←ソフトボール部全員+東堂と一ノ瀬)
「負けたらあなたたちは今日から『家庭科部(ソフトボール支部)』よ」
「部としての看板掛かってんじゃねぇか!? 大した事だぞ監督!?」
「なぁに。勝っても負けても東堂と一ノ瀬が手に入るなら……OKです☆
部の名称なんてなんでもいいっしょ♪」
「マジで終わってるだろ。この監督」
勝てればそれでいい。
汚い大人の目は口よりもそれを物語っていた。
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