第268話 本当の"オチ" Part.2
西宮の占いは牡牛座が贔屓されている可能性が浮上したので、7人は西宮から本を借りて
「えーと……次は四方堂さんですよね」
「射手座のA型ですわ」
「このページだね、
『一見近寄りがたいイメージとは裏腹に気さくなあなた。
周りの気配りも出来る典型的ないい人です。
恋愛では、あなたは一途な感情を相手に抱きますが、
相手にとって『都合のいい人』で止まってしまわないように気をつけましょう。
時にはワガママを言ってみるのもいいかもしれません。』」
「百合先生が読むだけで急に信憑性増したな」
「ねー。なんか胡散臭さ消えたよね」
西宮は特に言及していなかったが、百合は事細かに未来が書いてある占い本を見て心が躍った。
しかし、膨大な情報量のこの本をさっきまで西宮が本当に読んでいたかは怪しい。
ちなみに、本の帯を見てみると今年度の最新版と記載があった。
「『時には』って、具体的なタイミングとかはありませんの?」
「あ、あるみたい。直近だと……、
『6月20日(土)にあなたの意中の相手はやや凹みする可能性が極めて高いです。
慰める意味でも、いつもより大胆に甘えてみましょう。』」
「具体的に過ぎんだろ!?」
「もはや予言書ですわ。でも一応は身構えておきましょうか」
「……待ちなさい。意中の相手のやや凹みって」
仮に四方堂の意中の相手が西宮だった場合、今週末の彼女には何やら不幸な何かが起こるらしい。
「まぁいいか。そんな事より次はアタシだ! 魚座のB型!」
「そんな事って、ちょっと待ち……」
そんな事で片付けられた西宮を放置して百合は魚座のB型を読み始める。
「『活発的で社交性のあるあなたは周囲から愛される人気者……』」
「ほな、みほっちちゃうか」
「繊細で少女趣味のお前に言われたかないわ! だいたいな、こういう風に大多数に当てはまるような事を言うのはバーナム効果つって……」
「あ。でも、魚座のB型も6月20日は要注意みたい」
「き、聞こう。参考な? 一応だからな?」
「気にしてんじゃん」
北条美保は腕組みで占いの否定をしつつ、横目で百合をチラ見した。
「ふむふむ、要約すると、
『6月20日(土)にあなたの意中の相手はあなた以外の女性とデートするでしょう』
って、事らしいよ。なんか事細かに注釈とか書いてあるけど……」
「姉貴!! 聞いてないぞ!!」
「報告の義務はねぇよ。しかも別にその日予定無いし」
「ほらな? 占いなんてこんなもんよ」
「みほっちの手のひらどうなってんの?」
結局審議のほどは当日になってみないと分からない。
何やら起こるらしい6月20日(土)の特異点であろう女にも話を伺ってみる事に。
「『周囲の目を引く可憐な女性』らしいわ。あと、『みんなの恋人』よ」
「アイドルか。お前は」
「麗奈の6月20日(土)はどうなってますか?」
「えっとね……、その前日みたいだね。
『6月19日(金)思い切ってスマホを捨てちゃいましょう!』」
「思い切り過ぎよ!! そんな行動派存在する?」
「そ、『それが出来ないのであれば、今日は極力スマホを触らない事』って書いてあるよ」
「なんでスマホを捨てさせようとしたの……? 最初からそう言いなさい」
斯くして、家庭科部の楽しい占いタイムが終わった。
しかし、『6月20日(土)』という不穏なワードは何名かの脳裏に残った。
***
(side 千堂 陽子)
ある日の放課後、西宮から借りたらしい占い本を持って私の元に訪れた百合先生。
上目遣いで本を抱きしてめて私の誕生日と血液型を聞いて来た。
死ぬほど可愛い。
「うるな……占いですか。こほん。百合先生は好きそうですもんね」
可愛すぎて噛んだ。
「……千堂先生はお嫌いなんですか?」
「あ、いえいえ! ……好きですよ。(占いが好きな百合先生が)
これでも私、化学の教師なんでね。あまり、そういうのは信じられなくて」
「でも、この本凄く当たるんですよ!」
「ははは。そういうのはバーナム効果と言って……」
「『つい最近、半年我慢してたものを小一時間悩んだ結果買ってしまった。』
当たってますか!? 何か欲しい物でもあったんですか!?」
「…………」
私はあまりにも的を射た発言に冷や汗を流す。
百合先生は欲しい物と勘違いしてくれているようだが厳密に言うと違う。
――タバコである。
百合先生の協力のもと禁煙から約半年、もう吸いたいと言う気持ちは何処かへ行ったかと思っていた。
しかしある時、居酒屋でタバコの匂いを嗅いだ後小一時間悩んだ末に、私はコンビニでタバコを購入してしまったのだ。
自分に言い訳をするならば、吸ってはいない。
ただ、いつでも吸えるぞという安心感が欲しかっただけで、吸うつもりで買った訳では無いのだ。
完全に禁煙出来た暁にはこんなもの箱ごと燃やしてやる気概は持っている。
「ちょ、ちょっと美味しそうなスイーツがありまして~」
「スイーツを半年間我慢してたんですか!? す、凄い……ストイックなんですね……」
「いえ、それほどでも」
ちなみに甘いものはそんなに好きなわけでは無いので、スイーツを買ってまで食べようと思わない。
そんなものよりタバ……いかん、いかん!!
(……ん??)
タバコの亡霊に意識を持っていかれそうになった私はふと、百合先生の持つ本に視線が行った。
――『よくわかる占星術!! 誰でも2秒で予知 ~入門編~』
過去に万里先生が見せてくれた禁書のタイトルに酷似するそれを見て私は戦慄した。
確かタイトルは、
『よくわかる催眠術!! 誰でも2秒で爆睡 ~入門編~』だったはずだ
「……よく当たる本なんですね。読み終わったら私にも貸して貰っても? 西宮には伝えておきます」
「千堂先生も占いに興味が!? ぜひぜひ! 読んでみてください!」
「わ、わぁ~。楽しみです~(棒)」
一体、このヤバすぎる本を西宮はどこから仕入れて来るのか。
というか、アイツはこのシリーズのヤバさに気付いているのだろうか。
とりあえず私は万里先生協力のもと、この本も禁書庫に入れる事にした。
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