第264話 週刊東堂(付録つき)


6月11日。

この日は南雲誕生日。


南雲は裏でコソコソと7人が何かを用意しているのは知っていたが、敢えて知らないフリを通していた。

そして当日の朝、登校中に美保からプレゼントを渡された。


代表が美保なのは中々意外に感じる南雲だったが、早速プレゼントを開けると……


……10cmくらいの用途不明の棒(?)が入っていた。



「……?? な、何これ?」


「プレゼント。多分、喜んでくれると思う」


「用途が全く分からないんだけど……?」


「みんなで頑張って考えたプレゼントだから大切にしてくれ」


「う、うーん。大事にするね? みんなありがとう!」



あまり多くを語らない美保と会話は噛み合っておらず、腑に落ちない南雲。

しかし、最終的には笑顔で受け取ってくれた。


……ところが。


南雲が下駄箱に着くと一ノ瀬からもプレゼントを渡された。

恐る恐る開けると――中身は同じような謎の棒。



「?????」



この一時間後、南雲は四方堂から3つ目のプレゼントを貰った時にようやくその正体に気付く事になる。



***


5月末――


今日は十河の号令により、南雲以外の7人が学園から一度帰宅した後にわざわざファミレスに集合している。



「……皆さん。今日は何故呼ばれたのかは分かりますね? 6月と言えば?」


「梅雨か?」


「衣替えですわ」


「期末テスト嫌だなぁ……」


「うん。そうだね。先輩の誕生日だね」



「えぇ……? いま誰一人として意見が一致してなかったけど……」



この時期の十河の号令という時点で先輩組はだいたい内容を察していた。

西宮でもない限りそんな大々的にやることは無いと思っていたが、どうやら十河の思惑は違うらしい。


まずはパーティーをやるのか、或いはサプライズ的な何かをするのかどうかの議論から必要だった。



「俺が言うのもなんだけど。パーティーまではやらなくてもいんじゃね?」


「え? 先輩軽視? 北条先輩、もしかして舐めて……」


「いや違う、違う! だって、それで言うと俺ら後7回パーティーしないといけなくなるだろ? それはちょっと多くね?」


「そもそも先輩以外のパーティーとか要らなくないですか?」


「いや、それだと優が気まずいだろ……」



南雲ファーストを掲げる十河と、隠れ南雲ファーストの北条で熱い議論を交わしていた。

結果的に今回はパーティーは無しとなったが、西宮の希望で何らかのサプライズはする事となった。



「プレゼントはどうします? 南雲さんは何が好きなんですの?」


「まぁ一番好きなのはかしらね」


「えへへ……照れます」


「おめーはパチモンじゃねぇか」


「あと、ゆーちゃんはゲームとかアニメが好きだよ」



ちなみに昨年はバスボムという事で全然関係ない物を贈っている。

あの頃はまだ4人の関係性も違ったので仕方がないだろう。


プレゼントもサプライズも中々決まらず全員が悩む中、意外にも妙案を出したのは一ノ瀬だった。



「ボクはアニメやゲームってよく分からないんですけど、フィギュアとか好きなんですかね?」


「ほう。陽キャアピは要らないわ。けど、続けなさい」


「東堂先輩のフィギュアとか作ってあげたら喜ぶんじゃないでしょうか?」



「「「「あー」」」」 (←十河以外全員)



「絶ッッッ対要らない。私だったらそんなの捨てるもん」



十河以外は全員納得の品だった。

フィギュアは恒例の西宮家の伝手でなんとか作ってもらうとして、問題はどうサプライズするかだ。



「七等分に切り分けてみんなでバラバラに渡すとかどうだ?」


「ま、まさかの輪切り!? 僕の体を!?」


「それだと手とか足がどっかいきそうね。パーツごとにしましょう」



輪切りとか、手がどっか行くとかファミレスでとんでもない会話しているが、その後の話し合いの結果でプレゼントを渡す順番と部位は以下の通り。


①美保:右脚

②一ノ瀬:左脚

③四方堂:右腕

④十河:左腕

⑤北条:胴回り

⑥西宮:胸部

⑦東堂:頭部


なんか週刊で付録付きの雑誌みたいになった。

7回目の付録で東堂の1/7スケールのフィギュアが完成するらしい。

創刊号が右脚だけなのはだいぶ謎。


尚、未だ納得していない女もいる。



「なんで東堂なんですか!! 私じゃダメなんですか!?」


「まぁ……諦めろ。優の最推しが東堂なのはしゃーない」



北条は既に割り切っていた。

しかし、十河はそう簡単には割り切れない。


このまま遺恨を残したままだと東堂の左腕は無事に南雲の元に届かないかもしれない。

そう思った西宮はそんな彼女に対し折衷案を提案した。



「あなたたち胸以外の体型はそっくりなのよね。どうかしら、サプライズ的にも面白そうだから丸井月まるいるなのコスプレをした東堂さんでどうかしら?」


「だったら! 胸部と頭部は本物わたし.Verも作って下さい!」


折衷案に対して食い下がる十河はだいぶ良い性格をしていた。


「……なるほどな。差し替え可能と。そこは本人の判断に委ねる訳か」


「じゃあ、幻の8回目のプレゼントにそれを渡しなさい。それで納得してくれる? ……と、いうかしなさい」


「はい! 東堂から上半身の座を抉り取ってみせます!」


「言い方……奪い取るで良くない? しかも余った方の胸部と頭部怖いよね? 別に十河さんの腕も用意すればいいだけでは……?」


「へ、へぇぇぇ?? 随分と自信があるんですねぇ?? えぇ!? まるで私の四肢が足りなくなるような言い方じゃないですかぁ??」


「いや、無くなるだろ」



東堂と十河、2人の四肢を掛けた戦いが今始まる――

尚、結果は予想よりも悲惨な事になる模様。



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