第255話 友情、努力、勝利


――球技大会当日。



「やれる事はやったし、今日はみんな頑張ろう!!」


「「「「おー!!」」」」



4人はソフトバレーの試合前に円陣を組んでいた。

友情と努力と勝利の物語はここから始まる。



「まぁ、練習もしたし、策も用意してあるしな。別に今回は負けても失うもんもないんだから気軽に行こうぜ」


「え? ……まさか西宮さん2人にアレを言うの忘れてない?」


「え? 私、てっきり南雲さんが言ってる物かと」


「おい。なんか嫌な予感が……」


「……罰ゲーム、ありまぁす!!」


「聞いてないよ!!」


「考えが甘いわ。勝負事にリスクがないとでも?」


「やかましいわ!! またなんか変な約束でもしてきたんだろ!!」



突如浮上した罰ゲームによって円陣が崩れる。

この時点で友情を語るには怪しくなってきた。

2人が罰ゲームの内容を確認しようとした所でちょうど後輩組がやって来る。



「よぉよぉ、これは先輩方。罰ゲームを受ける覚悟は決まったか?」


「おい、なんかチンピラ来たって……」


「覚悟も何も僕たちは罰ゲームの話を今聞いたんだけど……」


「どうせ負けるからいいんじゃないですかぁー?」


「もの凄く好戦的ね。まるでスポーツマンシップが無いわね」


「ウチの鉄砲玉2人が申し訳ありません……」



お互いの顔合わせも終わったところで8人は大会でのブロックを確認しに。

尚、東堂と北条は罰ゲームの内容を聞きそびれた模様。


対戦表は都合良く決勝戦で当たるような組み合わせになっていた。



「アツい展開ですね! それでは先輩方、決勝で会いましょう!」



スポーツ大好き少女こと一ノ瀬後輩は弾けるような笑顔で別れを告げた。

きっと授業そっちのけで体を動かせるのが嬉しくて仕方がないのだろう。


そして、そんな可愛い後輩を見送った先輩方は、



――準決勝で敗退した。



***


「ちょっと、ちょっと!! なんで準決勝で負けてるんですか!? これじゃ戦えないですよ!!」


「兵どもがなんとやらね」



ハイライトと言うまでも無いが、ここまでの先輩組の戦いは単純明快。

スコアを見ればそれは分かる。


第一回戦:14-0

第二回戦:14-0

第三回戦:0-14



要するに、東堂のサービスで全部決めちゃおうという作戦……というかいつものアレである。

しかし、バレーと違ってソフトバレーでは弾丸サービスは不可能。

幾ら東堂でもサーブで全てを決めるのには無理があった。


そして、東堂のサーブを受けれような相手とはメンツ的にラリー対決は不可能。

あっさり敗北を喫した。


つまり、ここから導き出される結論は西宮と南雲は大してなにもしていない。

なのでこのチームには友情も努力も勝利も何も無いという事である。



「諸行無常でござるな」


「そんな事言ってる場合じゃありませんわ! どうするんですの!?」


「落ち着け杏樹。今アタシは天才的な着想得た」


「まぁ誰でも思いつくけどね。 ……みんな。次の試合わざと負けよっか♪」



一ノ瀬と四方堂は手のひらに拳をポンと乗せる。

こうして、後輩組は準決勝でわざと負けて3位決定戦で先輩組と戦うことになった。


……そこに、スポーツマンシップなどは存在しない。



***


3位決定戦を行うコートでは決勝戦よりも観客が多かった。

一年生の奇人代表VS二年生の奇人代表ともなれば当然の事なのかもしれない。


両者、コートに入りポジションにつく。



「……ふふふっ。準決勝で負けるようなチームに負ける道理はないよね……もろたで、東堂」


「十河。先輩をつけ忘れてますわよ」


「つーか、なんか十河、お前露出高ない?」


「どーせ、またしょーもない理由でしょ。勝手に脱がせておこう」



汗を掻く前から十河は体操服を縛ってへそ出しである。

ズボンも何故かハーフパンツに着替えている。


対する先輩組は、



「……あ。そういえば結局罰ゲームってなんだったんだ?」


「茉希ちゃん! 戦う前から負けた時の事を考えるのはダメだよ!」


「そうね。南雲さんの言う通りよ。私たちに敗北の2文字は無いわ」


「いや……僕らもう負けてて、これ3位決定戦なんだけど……」



こちらもいつもの調子である。

そして試合は先輩チームのサーブから始まり、当然最初のサーバーは東堂である。



「東堂。分かってるな? 遠慮はいらん」


「まぁ、マキが許可してくれるなら……」



東堂は美しいフォームのジャンプサーブで対面右側手前に居るを狙った。



「クククッ! 甘いぜ東堂さん! すべてはこの知将北条美保の計算通りッ!」


最初から狙われることを見越していた美保はボールが飛んでくる前にはポジションをスイッチしようとに動いた。


「……ッ!! 違う! みほっちそれは……!!」


すると、ボールも右側に変化した。


「邪魔……!! カバーが出来ませんわ!!」



衝突を避けた四方堂と美保の間にボールは落ちた。

あっさりと東堂がサービスエースを決めた。



「あーちゃんナイスー!!」


「よくやったわ明里。それをあと13回頼むわよ」


「他力本願もいいところだな。まぁいいか。ナイス東堂」



なんだかんだ言ってこっちにはチームワーク(?)があった。

一方あちらは。



「おい知将? どうした? 病気なの?」


「あなたに与えられた命令は一つ。『邪魔をするな』でしたわよね?」


「みほっち……東堂先輩のサーブが来たらコートの外に出よっか?」


「もうそれアタシ、参加者じゃねぇじゃん!!」



足を引っ張る者には厳しい罵倒が与えられる格差社会が広がっていた。

とは言え、勝負はまだ始まったばかり。


ここからも熾烈な争いは続く――



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