第251話 天と地


楽しいゴールデンウィークが終わると、今度は楽しい学園生活が始まる。

しかしながら、やはり長期連休が名残惜しいのか彼女たちの表情には陰りが見えた。


それでも安心して欲しい。楽しい行事はたくさんある。例えば――



――中間テストとか。



西宮の初日のデートで薄々感づいてたと思うが、GW明けは即中間テストである。

そして、おそらく皆様の予想通りの結果をお見せする事になるだろう。



***


時はテストの結果発表まで進む。

個人の順位表を持った8人と顧問は家庭科室に集まっていた。


室内の空気は厳かで、これから起きる事は人の生き死にを左右する。

そんな緊迫感が漂っていた。



「ま、まぁ大体オチ担当は誰かは分かってる。だから前評判で頭良いヤツから発表してくか」


「わ、わかったよ。じゃあ僕からだね……」



①東堂明里(2年生)

13教科合計点:1300点 順位:1位/240人中



「「「「はい。次」」」」(←全員)


「反応薄くない!? 既に出オチだよ!!」



東堂は人類の神秘枠なので全員さほど興味は無かった。

残り7人とオチ担当たちが居るので時間には限りがあるのだ。



②十河灯(1年生)

13教科合計点:1300点 順位:1位/240人中


「腹立ちますわよね」


「うん。腹立つー」


「納得いかねー。なんでコイツのが前評判いいんだよ」


「くッ……なんで天はボクじゃなくてこんな女に2物を与えたの?」



「あれ? この部屋空気悪くないですかー?」



兼ねてから自身の事を万能だとのたまっていた十河は本当に勉強が出来るらしい。

容姿端麗で文武両道と言えば何処かで聞いたことがあるが、だいたいそういう『あかり』は冷遇される傾向にあるらしい。



③北条美保(1年生)

13教科合計点:1300点 順位:1位/240人中


「私からしたら明里よりもこっちの方が神秘枠なのだけれど」


「みほっちは前の学校でインテリヤクザって言われてましたよ」


「ふ、普通に褒めてあげようよ……」


「……何気に凄ぇな。この部って1年生で一番頭良いヤツと2年生で一番頭良いヤツが揃ってんだな」



簡単だと思われている丸女のテストだが、100点を取ること自体は割と難しいのでここまでの3人はあまり参考にならない。

ここからが一般人枠となる。



④北条茉希(2年生)

13教科合計点:1040点 順位:37位/240人中


「茉希ちゃんすごい! 頭良くなってる!?」


「あ、ありがと」


「当たりめぇだろ。学園いたら普通は頭良くなってくんだわ。でも姉貴グッジョブ!!」


「……何だろう? 何故かもの凄く釈然としないというか……」


「奇遇ですね東堂先輩。私もです」



北条は1年の頃は平均点くらいだったが、南雲に良いとこを見せようと裏でコソ勉をした甲斐があった。

何故かこういう人の方がもてはやされる現実に2名ほど打ちひしがれていた。



⑤四方堂ガブリエル杏樹(1年生)

13教科合計点:910点 順位:91位/240人中


「えッ!? 杏樹って頭良かったの!?」


「えぇ……? これは『良い』に含まれるのかしら?」


「う、嘘。ガブがこんなに頭が良いだなんて……」


「……わたくし、もしかしてバカだと思われてました?」



彼女も推薦入学組で学力は未知数だったが、実は平均的な知能は持ち合わせていた。

おそらく一般入試でも受かっていただろう。


……さて、これは箸は休め。


ここからは一般人枠からまたも神秘枠へと突入していく。



⑥一ノ瀬紗弓(1年生)

13教科合計点:200点 順位:???位/240人中


「ちょっと待て……これ平均点何点くらいなんだ?」


「15.38くらいだな」


「じゅっ……一ノ瀬。あなた順位は何位だったの!?」


「ちょ、ちょっと見るの怖いからみんなで見て!!」


ぺらっ。


――240位。



遂に大台に乗ってしまった。

流石に平均点15点はヤバすぎた。これには全員で合掌である。


しかし彼女は、南雲や西宮と違って素行が良いので情状酌量の余地はあるかもしれない。



⑦南雲優(2年生)

13教科合計点:200点 順位:???位/240人中


「ちょっと待て……」


「姉貴。平均点教えようか?」


「ゆ、ゆーちゃん? 順位見た?」


「ううん。まだだよー」



再び全員が固唾を飲んで見守る。


ぺらっ。


――239位。



「「「「あっ……」」」」(←全員)



この時、全員が何かを察した。



⑧西宮麗奈(2年生)

13教科合計点:???点 順位:???位/240人中


「そ、十河。平均点は?」


「13.84……つまり……」


ぺらっ。


――240位。



「おめぇが最下位じゃねぇかッッッ!!」


「に、西宮先輩ーっ! ボクの本当の理解者は先輩だけですー!」


「安心しなさい。あなたを一人にはしないわ」



涙を浮かべる一ノ瀬を西宮が優しく抱きしめる。

パッと見は感動のワンシーンである。



「えぇ……やば。どうゆこと? この部って1年、2年の一位と最下位抱えてんの? やばぁ……」


「えーん! 百合ひゃくあ先生ー! どうしてこんな事に……」


「どうしてって……あなたたち、GW中に勉強はしてたの?」



「「「……はにゃ?」」」(←おバカ3人衆)



「はい。じゃあ、あなたたちはしばらく部活禁止ですね。追試勉強はお手伝いします」


「ありがとうございます……でも、どうしよう。これで追試に落ちたら……」


「安心しなさい。私たちの経験則上、追試はそんなに難しくないわ」


「そーそー! ワタシたちが今までどれだけの修羅場ついしを乗り越えて来たと思ってるんだい!」


「しぇんぱぁい……(涙」



「おい、姉貴……コレ、世界で一番ダメな助言だろ」



***


こうして、3人はしばらく収監され学園にはひと時の平穏が訪れた。



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