第243話 真心 in the box


本日の5/4の予定は、


東堂:バイト

西宮:四方堂とデート

南雲:一ノ瀬とデート

北条家:家族旅行

十河:イベント


となっており、本日は家族旅行から帰ってきた四方堂が早速西宮にお土産を献上しに自宅まで駆け付けていた。

西宮が手配した送迎車ではなく、自身の家の送迎車で来るのは彼女くらいだろう。



「ごきげんよう、お姉様! 会いたかったですわ!」


「ごきげんよう。今日も元気ね、ガブ」



感激した様子で涙を浮かべながら笑顔を綻ばせる四方堂。

言うて、西宮と会ってない期間は一週間にも満たない。


一応これでも一年生たちの間では要注意人物たち例の4人組のクール枠として扱われている。


実際には一ノ瀬がクール枠で他3人はごりごりのパッション枠なので関わる際は注意が必要だ。



「今日はお姉様にお土産を持って参りましたわ!」


「あら。わざわざありがとう。と言うか、あなたここから他の家も巡回するの?」


「いえ、お土産を買ってきたのはお姉様だけですわ!!」


「……流石に他の人にもお菓子くらいは買って来てあげなさい」



さっそく四方堂が呼んだ執事が丁寧にお土産を持ってくる。

凄くまともそうな人だったので西宮は改めて五味渕を眺めてみた。



「恐縮です」


五味渕はキリッとした表情で一礼をする。


「まだ何も言ってないわよ。あと、急にまともそうな感じにするのはやめなさい」



四方堂のお土産は何故か台車のようなものに乗っており、上からは布が被せられていた。

まるでバラエティー番組の企画のようになっている。



「それでは行きますわ! まずは1品目……」


「1品目!? 他の人のお土産は無いのに私だけそんなに何品もあるの……?」


「もちろんですわ! それでは1品目……」


「……特にそれについての解説はないのね」



①ものすごくカロリーの高そうなお菓子


「1品目はこちら! 謎の露店で買った謎のお菓子ですわ!!」


「謎が多すぎる……! 妙に油でギトギトなのだけれど……大丈夫なのこれ?」



皿に乗せられたそのお菓子は、サーターアンダギーの亜種のような見た目で、表面にまぶしてある何かまでカロリーが高そうだった。

ナイフで切ってみると中にも油ギッシュな何かが入っている。


形容するならば、カロリーonメガカロリーinギガカロリーである



「美味しかったですわよ」


「あなたは食べたのね……確かに匂いは良いけど……」



尚、味は良好だった模様。



②怪しすぎる茶葉


カロリーモンスターを前に若干手が止まっている西宮だったが、四方堂は次のお土産の紹介に入る。



「2品目はこちらですわ!! カロリーゼロ茶葉ですわ!!」


「カロリー0? それってほとんどのお茶がそうじゃない?」


「いいえ、この茶葉は違いますわ! なんとッ!! 食べたもののカロリーを0にするらしいですわ!!」


「怪しすぎるわよ!! ……いや、怪しすぎるわよ!!」



ツッコんだ後に冷静に考えてみたが、やっぱり怪しかった。



「そっちは美味しかったの……?」


「美味しそうな匂いはしてますわ!」


「の、飲んでないのね。五味ぶ……「嫌でございます」」


「まだ何も言ってないわよ。あと、食い気味に否定するのはやめなさい」



あの五味渕がこの反射速度で拒否反応示すという事はよほど危険なシロモノなのだろう。

西宮は是が非でも飲ませて見たかったが今日の所は見逃した。


お茶の缶を受け取った西宮は五味渕にマーカーを借りて、『五味渕懲罰用』と書いて彼女に保管するように命令した。



③手掘りの入れ物(?)


「最後の品はこちらですわ!! 現地民から譲り受けた逸品だそうですわ!!」


「これは何かの入れ物? 装飾は綺麗ね。中に何が入ってるのかしら?」



入れ物を振ってみるが異様に軽かった。

しかし、見た目は厳かでただのものを入れる箱とは思えない。

気になった西宮は蓋に手を掛けた。



「是非とも部屋に飾ってくださいまし! 現地民は魂の入れ物と言っておりましたわ!」


「……ん? 作品という意味よね??」


「いえ! この中に精霊たちの魂が入ってるそうです!!」


「怖ッッッ!! 絶対精霊怒ってるわよ!! 封印してそのまま送り返しなさい!!」



お土産は『魂の逸品』というかモロに『魂』だった。



「い、いいんですのお姉様!? 激レアですよ!? モロたまですわよ!?」


「ふりかけみたいに言うのはやめなさい」



尚、四方堂が購入したというアンティークショップは何故か消えており返送は出来なかった。

これにより西宮の恐怖はさらに加速する。


後に曰く付きの入れ物は西宮家の祈祷師が清めた後に、どこかの博物館に寄贈されることとなった。



***


「どうでしたかお姉様! 楽しんでいただけましたか!?」



目をキラキラさせた四方堂は褒めて欲しそうに西宮を見ている。

しかし、3品中2品は欠陥品だったので微妙なラインではある。



「ええ。ありがとう。どれも刺激的で攻撃的な品だったわ。こんな贈り物は初めてよ」


「こんなに喜んで頂けるなんて……!!」


「よろっ……え? この感情は喜びなの……?」


お土産が微妙過ぎて感情を失ったアンドロイドのような発言をする西宮。


「……こほん。次はみんなも巻き込んであげなさい」


「はい!! お姉様がそう仰るならば!!」



そんなまぶしい笑顔の四方堂が帰った後、お菓子の箱の裏にある成分表を見た。


……この後、メチャクチャ運動した。



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