第229話 ご予定椅子取りゲーム


皆様はゴールデンウィークと聞くと何を想像するでしょうか。


そうですね。修羅場ですね。

ゴールデンウィークが近づいて来た今日この頃、例に漏れず通学中の8人は腹の探り合いをしていた。



「麗奈? GWの予定聞いていいかな?」


「ダメですわ。これだからマナーのないファンは……そういうのはちょっと事務所通して貰わないと困りますわ」


「まだ予定は無いわよ」


「じゃ、じゃあこの日とかデートに……」



マネージャー気取りの四方堂をガン無視して2人は会話を進める。



「あれ? でもあーちゃん、その日ってワタシとデートって言ってた気が……」


「東堂ッ……先輩、大概にして下さい」


「そもそも言ってないよ……」



この様に、お互いに予定という席を奪い合っているので一向に話は進まない。

こういう時に話をまとめるのに一役を買うのはこの女。



「今、いい案を思いついたわ。全員放課後までにGWの予定を部長に提出しなさい」


「間にその部長とか言うワンクッション要らねぇだろ。俺はお前のマネージャーか」



こうして妙案を思いついた西宮だが、それが役に立つかどうかはまた別のお話。



***


その後結局、全員の予定を集計した西宮。

招集を掛けられた部員全員は放課後の家庭科室に集まった。


室内で怪しい配置の椅子を見て顧問の百合ひゃくあはいつもの頭痛を発症する。



「みんなの予定を取り合うなら公平な勝負をしましょう。名付けて『ご予定椅子取りゲーム』よ」


「マジでそのまんまだな。この並んでる椅子見たら2秒でやる事理解出来たわ」



単純とは言え、西宮は念のためにルールをする。


・まずはくじ引きで順番を決める


・順番が来た人の空いてる日程通りに西宮が椅子を並べる

(例)4月30日の椅子とか、5月2日の椅子とか


・他7人がその予定を賭けて椅子取りゲームをする


・予定が埋まった人はそれ以降は不参加


そして、ここから重要。


・椅子を取ったら絶対にデートする(or 遊ぶ)こと


西宮が最後の一文を読んだ時、全員に緊張が走る。

仮に十河と東堂が、美保と南雲が一緒に遊ぼうものなら流血必至だろう。

尚、ルール違反が発覚した場合、厳しい罰則が科されるとの事。


しかし、全員が己が目的を果たす為これを了承。

一人一人くじ引きを引いていき、闇のゲームは始まった――



①北条茉希

(空き予定日:4/29 ,4/30 )


「この女、生意気な事にほぼ予定で埋まってるのよね」


「す、凄いね。席が2つしかないよ」


「なぁなぁ、西宮さん。席2つ取るのって有り? 妹だからOKだよな?」


「良いわけねぇだろ。寧ろお前は遠慮しろ」



曲が流れ始め7人が椅子の周りを歩き始める。

曲を停止させるのは北条で、公平を期す為に目隠をしている。


北条が曲を止めた瞬間、まず南雲が4/29の椅子に座った。



「やたー!! 茉希ちゃんとデートだー!!」


「あっ! 南雲、てめ!! クソが!!」


「よっしゃ……!!」


北条は小さくガッツポーズをする。


「……てか、おい美保。普通に暴言やめろ」



そして4/30の席の前では一ノ瀬が立っているのだが座らない。

その後ろの四方堂もだ。



「ボクはその日は助っ人で……」


「家族旅行ですわ。そもそも座る気もありませんけど」


「じゃあ、まぁ僕が座るね?」


「よっしゃぁー!! アタシが……え?」


「あ、ごめん……」


「と、東堂さん嘘だよな? まさか東堂さんも姉貴狙い……?」



何故か北条の4/30の席には東堂が座っていた。

東堂としてはたまには2人で遊びに行くのも悪くないな、程度の考えだったが美保は顔に絶望感を滲ませていた。


と、御覧のような流れでゲームは進んでいく。ここからは簡単に。



②南雲優

(空き予定日:4/30 ,5/3 ,5/4 ,5/6 )


初動から執拗に東堂の足を刈り取ろうとする十河。

曲が止まった瞬間、


「いやん♡ 足が滑……ていッッッ!!」


露骨に足を滑らせた十河の回し蹴りを回避した東堂は2人仲良く隣合わせに座る事に。


「よ、よろしくね?」


「……チッ!!」



これが大人気Vtuber本気の舌打ちである。

これにより5/6に東堂、4/30が十河となった。

空いていた5/3と5/4には、西宮と青筋を浮かべた一ノ瀬が座る。



③一ノ瀬紗弓

(空き予定日:5/2 ,5/3 ,5/5 )


一ノ瀬と殺し合いデートをしたい十河は出来れば座ろうとしたが、都合が合う日が一日しかなく、それも余りにも席が遠かったので断念した。


結果的に5/2が西宮、5/3が美保、5/5が四方堂となった。



と、この辺りでお気づきの方も居られれるとは思うが、このゲーム。

進めていくと、予定がほぼない西宮は、日替わりデートになる運びとなっている。

なんか言われたらオリエンテーションという事にしておこうと西宮は考えていたが、みんな争奪戦に夢中で気付いていない。


全員、完全に西宮の術中に嵌っていた。

なのでこのゴールデンウィークで西宮は唯一7人とのデートをフルコンプ出来る。

(※↑この人は北条のバイト日に凸するつもりです。)


しかし、ゴールデンウィークは8日。

1日だけ隙間が出来てしまう。そんな時にはこの女。



「4/29は百合ひゃくあ先生とデートするわ。予定を開けて置いて頂戴」


「えぇ!? 私も含まれるんですか!? せ、生徒と遊ぶのはちょっと……」


「じゃあ、2人きりで部活動という事で」


「どういう事ですか!?」



こうして、各々デート予定でぎっしりのGW編が始まる――



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