第218話 お尻警察24時


昨日は西宮の思いつきで部員たちは散々な思いをするハメになった。

顧問の百合ひゃくあは、その一連の流れは知らないが活動報告書と言う名の記念写真で大体は察した。


そんな顧問を含め今日こそは、改めて今後の部活の方針を――



――バンッ!!



「確保ーーーッ!! 強制捜査執行よ!! 無駄な抵抗は止めなさい!!」



突如開けられた扉から特殊部隊のように複数の生徒が乗り込んできた。

拘束まではしないものの逃げ道は完全に塞がれ家庭科部の部員は監禁された。



「とうとう年貢の納め時ね。覚悟しなさい家庭科部ッ!!」



本日のお客様は六波羅舞菜香率いる風紀委員会の皆様だそうです。



***


身に覚えのない因縁をつけられ現在監禁されている家庭科部の部員たち。

六波羅さんは相当お怒りのご様子で……



「なんで捕まっているかは言わなくても分かりますね?」


「知らん。西宮、またお前か?」


「また、とは失礼ね。捕まったことなんて無いわよ」


「あ、あのー。何かの勘違いとかそういうのじゃないかな?」


「そーそー。どうせ私怨でしょ? 私人逮捕とかサイテー!」



「んなワケありますか!! 新学期からそれぞれが犯した罪を胸に手を当てて考えて見なさい!!」



一年生としては初対面の偉そうな先輩がキレ散らかしているだけだが、とりあえず言う通りにしてみた。



「うーん。ねぇな。十河。とりあえずお前が謝とっけ」


「ヤだよ!! どうせ、一ノ瀬さんの暴力事件の事言ってるんじゃないの?」


「は? 煽ったのはそっちじゃん!!」


「ふふふ。御覧の通りわたくしたちは何も問題は起こしておりませんわ」



「いや起きてるよ!? 今、現在進行形で君の後ろで起きてるよ!? 君の目は節穴なの!?」



四方堂としてはあまりにも日常過ぎてあれが問題としてカウントされていなかった。

険悪な部員2人を先輩が宥めたのを見て、改めて六波羅が咳ばらいをする。



「……コホン! 個々への言及はこの際いいでしょう。今日は家庭科部の話です。まず、将棋盤強奪事件です」


「……強奪??」



その場に居なかった北条は冷や汗を流して首を傾げる。



「人聞きわるー。ちょっと貸してって言っただけじゃん」


「そうだ、そうだー! 今回は南雲の言う通りだ!」


「将棋部はチンピラみたいな女↓北条美保握力70kgの女↓南雲優に頼まれて断れなかったと……! そして、後ろには乱闘騒ぎを起こした1年生2人も控えていたと……」



「「「「…………」」」」



そりゃまぁ断れないわな、と納得する部員たち。

将棋部には心の中で謝罪した。



「まだありますよ!! 昨日、家庭科室に謎の業者が出入りしているのを目撃した生徒が居ます!」


六波羅の追及はまだ止まらない。


「そして昨日、床に伸びていた3人の生徒はうわ言でこう言ってました……


『レオタード。最高。目が幸せしゅぎる』と……」



六波羅はある拡大写真をホワイトボードに貼った。



「そして最後に更にもうひとぉーつッ!!」


その写真を見て部員たちは息を飲む。


「こんな不埒な恰好をした痴女が学園を徘徊してたと言うではありませんか!! 」



それは北条のコスプレ(スカートなし.Ver)だった。

誰に撮られたのかは分からないが、前面はエグい布面積で背面はお尻の食い込みがヤバいというシロモノである。

幸い、眼帯とウィッグの効果で誰なのかはまだバレていない。



「…………あなたたちですね?」


「なんの証拠があるのかしら?」


「証拠ならあるじゃないですか……」


「「「「???」」」」 (←全員)



「お尻。見せてください」



「「「「な、なんだってーーーッ!?」」」」 (←全員)



「この写真と一致する人物に今回の責任を負って貰います」


「や、やめなさい! あなたはシンデレラでも探しているの!? 王子だってそんなエグい犯人捜しはしないわ!」


「そうだ、そうだー!! 多少ハミケツしたくらいでごちゃごちゃ言ってんじゃねーぞ、風紀委員!」


「多少!? ほぼ丸出しですよ、これ!?」



風紀委員の悪質な犯人捜しから北条を守るために頑として抵抗する家庭科部員。

その熱い友情に北条の胸は熱くなる。


……だが、忘れてはならない。


昨日、北条を生贄にして職員室に送ったのはこいつら7名であるという事を。



「いいから! 無駄な抵抗を止めて、さっさとお尻を見せなさい!」



六波羅は他の風紀委員に指示を出して部員を拘束しようとする。



「……ほい。ポチッっと」


「ん……? 南雲さん、今何を……」



南雲が掲げる謎の機械からは音声が流れる。



『いいから! 無駄な抵抗を止めて、さっさとお尻を見せなさい!』



その瞬間、西宮が邪悪な笑みを見せた。



「あらあらあら。風紀委員ともあろうものがまさか生徒を拘束しながらケツ出しを強要するなんて……」


「あわ、あわわわ……」


「汚職だよねー? これはセクハラなんて温いもんじゃないよー?」


「ちょ、ちょっと2人とも……六波羅さんがこの世の終わりみたいな顔してるから……」



しかし、家庭科部の問題児は一匹や二匹ではない。



「おいおいおい。どう落とし前つけてくれんだぁ? 風紀委員さんよぉ?」


「この事が知れ渡ったらあなたも大変ですわねぇ。これからはお尻警察として後ろ指を差されて学園生活を過ごす事になりますわ」


「あわわ、ど、どうかそれだけは……」


「おい……これ大丈夫か? 俺ら完全に悪役……」



こうして、丸女に蔓延る凶悪犯罪者集団こと家庭科部は風紀委員長の決定的な弱みを手にした結果、第一次強制捜査を免れた。



***


「勧善懲悪とはまさにこの事! 流石は先輩♡ ボイスレコーダーとは天才です♡」


「どうだ! 参ったか! 風紀委員め……やりきりましたね! これで活動に戻れ……」


「やりきってません……ッ!! あなたたち、全員そこに正座しなさい!!」



その後、部員たちは事情説明して顧問にめちゃくちゃ怒られた。



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