第214話 二難去ってまた二難
2年生の4人は午前の家庭科の授業が終わった後に
「と、言う事で今日から家庭科部は本格始動するわ」
「活動内容が決まったんですね」
「いえ」
「『いえ』とは……?」
即答で否定された百合は困惑する。
内容が決まっていないのに何を本格始動するのかが不安で一杯である。
「と、とりあえず、私が居ない時には包丁や火は使わないように!」
「もちろんよ。ところで聞きたい事があるのだけど、あなた千堂先生と万里先生との件はどうなったの?」
「あ、その節はどうも! おかげ様で保留にする事が出来ました! 2人とも快く承諾してくれましたよ!」
「快く……? やけに物分かりが良いわね。他に何か言ってなかったかしら?」
「うーん、と。あ……そう言えば。2人とも私と一緒に何処かへ遊びに行きたいみたいな話をしてましたよ」
「ほう……」
4人はあの2人の性格、思考を読み取って推理を始めた。
「先生。それって、2人が百合先生と居る時に言ってきたんですか?」
「ううん。別々にだよ。でも多分3人で行くんじゃないかな?」
「……いや、2人きりでしょ。ちなみにどうゆーとこに行きたいって言ってたの?」
「夜景が綺麗なとことか、温泉とか?」
「ホテルだな。しかも泊まりっぽいし。完全に西宮のやり口だぞ」
不躾な申し出を快諾してくれた優しい2人にあらぬ疑いをかける4人を百合は窘める。
「あなたたち! 失礼ですよ! 千堂先生と万里先生の事をなんだと思ってるんですか」
「ゴm……」 (←北条)
「クz……」 (←西宮)
「カs……」 (←南雲)
「……ノーコメントで」 (←東堂)
「ほ、本当に失礼ですね!?」
百合としては尊敬している2人を信じたいのだが、もちろん生徒たち4人も信じたい。
真実を知る為に最も簡単な方法を百合は思いついた。
「じゃ、じゃあ、そんなに言うなら……千堂先生や万里先生と仲の良い皆さんが真偽のほどを確かめて見て下さい! そうすれば真実は分かります!」
「都合の良いように使われてるだけのような……」
「まぁいいんじゃない? 十中八九当たってるし」
「分かったわ。百合先生を犯そうとしているのか聞いてくれば良いのね?」
「おかっ……!? え!?」
と、言う事で4人は昼休みに分かれて千堂と万里の犯行声明を伺う事にした。
***
(東堂&西宮)
2人は保健室にて暇そうにしていた万里に事情聴取した。
もちろん、百合からの依頼と言う事は伏せて、あくまでも『百合先生が警戒していたわよ』という
「人聞きが悪いな。勝手な印象を抱かないで欲しいね」
「すいません……一応、泊りで何するのかって教えて貰えます?」
「ホテルで行う行為はあくまで同意の上だ」
「行為とは一言も言ってないわよ。尻尾を出すのが早すぎるわ」
百合の件を全然保留にする気がないという事が早速露見した。
一応、確証を得るために東堂は確認を取る。
「百合先生は、その……そういうのに同意されてるんですか?」
「まぁ、それは私のテクニック次第にはなるかな」
「事後承諾!?」
百合の合意も取れていないという事で、しっかりと犯行声明を頂いた。
納得のいく証拠をゲットした2人は退室しようとする。
「ふむ。なるほど、捜査にご協力感謝よ。本官はこれで」
「お勤めご苦労様。百合先生には内緒だよ」
「任せなさい。安心と信頼の守秘宮よ」
「急に不安になったよ」
***
(南雲&北条)
相変わらず屋上にいた千堂にも事情聴取をする。
コソコソ喫煙していた頃ならまだしも、何の目的もないのにこのクソ寒い屋上に居る時点で変人なのは間違いない。
「かくかくじかじかで……」
「なるほどな。君たちは私が百合先生の嫌がる事をするとでも?」
「えーと……その、実績とかありますし……?」
この女も今までは百合に碌な事をしていないのだが、この真剣な表情を見るにもしかしたら今回は本当にちが――
「初回はハードなプレイは検討していない」
「よかったー! カスじゃないかと思ったよー」
「……き、聞き間違いか? 今、とんでもない暴言が出たような気が……」
……違わなかったらしい。
これには南雲さんも安堵の表情で暴言を吐く。
「そもそも私は百合先生にシたいと言うよりは百合先生にされたいんだ。ドSな百合先生を想像してみろ……飛ぶぞ」
「先生、変なクスリやってる?」
「やっとらんわ!! 一応教師だぞ!!」
一応、その教師が生徒に対して自らの被虐願望について語っているのだが、その件まで立件していたらキリがないので2人はこれでお暇する事に。
「あんまり変な事ばっか考えて百合先生を悲しませないでねー」
「当たり前だ。百合先生には内緒だぞ」
「もちろん。俺は口堅いんで安心してください」
***
放課後前のHRにて。
「……って、千堂先生言ってたよー」
口が堅くない方が速攻で情報漏洩していた。
「こっちも似たようなものね。やっぱりあなた犯されるそうよ」
西宮の方もなんの迷いもなく情報を横流ししていた。
「あわ、あわわわわ……こ、これじゃあ2人からの誘いを素直に受け取れません……」
目を白黒させて百合は狼狽える。
そんな百合の様子をみて流石に気の毒だと思ったのか、西宮が背中を擦りながら優しく声を掛ける。
「一回犯されてみたら?」
「そんな無責任な!?」
***
告白の悩みから解放されたと思った百合に更なる悩みが出来た。
この日から千堂と万里への対応が明らかに変わったので両名は、
(……あいつらやったな?)
と、即原因を特定するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます