第213話 イメチェン
8人で登校するようになってからも基本的には駅で集合するのは変わらない。
東堂と南雲たちが先に駅に到着して、大体その数分後に北条か西宮と合流する。
今日は先に北条と合流したので、後から来た西宮と四方堂が送迎車から出てくるのを待った。
すると、
「おはよう」
「れ、麗奈!? どうしたのその髪!?」
「出家して尼になろうかと」
なんと、西宮の頭は丸くなっていた。
「いや、だったら剃れよ」
……それはスキンヘッドなどの類ではなく、
昨日までは腰ほどまであった黒髪を突然バッサリと切ってマッシュボブになっていた。
本当に突然である。
「イメチェンしてみたわ。これで2年生デビューよ」
「1週間遅刻してるし、西宮さんは一年生から鮮烈デビューしてたじゃん」
「
「ぼ、僕も! 凄く似合ってると思うよ!」
西宮ファンの方々は必死にポイント稼ぎしているが、またも唐突に西宮はそのウィッグを外した。
「と、言うのは冗談で。今回のテーマは『イメチェン』よ」
「だろうと思ったわ」
その一瞬のネタの為に髪を結っていた西宮の髪を移動しながら器用にストレートに戻す五味渕。
四方堂以外の後輩はいつの間にか居た忍者のような女にたじろいでいた。
そんな事はお構いなしに、西宮はくじ引きBOXを五味渕から受け取る。
「このくじを引いて出て来た名前の相手に好きなコスプレをさせるといった趣旨よ」
「……ッ!? と、という事は、せ、先輩に全裸のコスプレとかさせる事も可能なんですか!?」
「きっしょ」
「検閲は家庭科部の部長が務めるわ」
「俺かよ!! ってか、これ部の活動なんか」
西宮の説明によると、この時点でコスプレの内容を決め、放課後までには五味渕がコスプレセットを調達してくるという内容らしい。
もちろん、身長、体重の他にスリーサイズまでも五味渕が全て把握しているので安心して欲しいとの事。
その一言で後輩たちの五味渕を見る目は変わった。
ところが、またも彼女は忍者のように忽然と消えており、ゴミを見るような視線は虚空を彷徨う。
「じゃあ、ここは後輩組から行きましょうか」
「畏まりました、お姉様。それでは、後輩代表の私から引かせて頂きますわ」
「てめぇがいつ代表になったんだよ。一番頭が良いアタシがリーダーに決まってんだろ」
「めんどくさいから同時に引きなさい」
くじ引きBOXが無駄にデカいので後輩たちは一斉に手を入れる事に。
「痛たたッ!? おい!? 誰だ、いまアタシの指を逆に曲げようとした奴!?」
「あれ? ごめん、一ノ瀬さんの指と間違えちゃった」
「ふーん、いい度胸じゃん。掛かってきなよ」
「……さっさと引きなさい」
いちいち段取りを破壊してくる一年生たちに静かに喝を入れる西宮。
彼女たちの結果は……
一ノ瀬 ⇒ 西宮
四方堂 ⇒ 一ノ瀬
十河 ⇒ 南雲
美保 ⇒ 東堂
「キャーーーッ♡ もしかして、運命……!? コツコツと善行を重ねて来た甲斐が今ここに……」
「何が善行だよ。アタシは入学してからお前の悪行しか見た事ねぇよ。さっきも辻斬りみたいに人の指折ろうとしてたし」
「一ノ瀬。今あなたお金に困ってません? くじを交換して下されば……」
「や、やり方が汚い……しかも、それやったらボクはボクをプロデュースする事になっちゃうよ」
ヤジや談合が見え隠れする一年生を放置して続くのは2年生、
東堂 ⇒ 四方堂
西宮 ⇒ 北条
南雲 ⇒ 美保
北条 ⇒ 十河
「僕は杏樹ちゃんか。なんだかんだでお互いを知るいいオリエンテーションになりそうだね! こういうのは流石の麗奈だね」
「全て計算通りよ。もっと褒めなさい」
「いや、どう考えてもただの思い付きでしょ。しかも、西宮さんとか茉希ちゃん引いてるの全然オリエンテーション関係ないし」
「俺は十河さんか……この子も謎が多い子だからなぁ」
「謎も何も、ただの変態だよ」
丁度、下駄箱に着く頃には各員の指名選手が決まった。
先輩組と後輩組が別れる前に西宮が記入用紙を全員に配る。
HRが終わるまでには記入して提出しろ、との事だ。
「提出? どこに提出するんですか?」
「五味渕を呼べば回収してくれるわ」
「……学校の中だぞ? んなアホな」
「おい、バカ……ッ!!」
すると、ニュルっと美保の肩越しに五味渕が耳元で囁いた。
「お呼びでしょうか?」
「うおっ!? い、いつの間に!?」
「なるほど。こうやって回収してくれるんですねー」
相変わらず北条の血筋は五味渕を背後から出現させる特性を持っていた。
しかしウッキウキの十河はまったく気にしていない模様。
「どんな先輩見たいかなー♡ あれかなー、あれもいいなー♡」
「茉希ちゃん。NGフィルターは『強』設定でお願い」
「お、おう。覚悟しておくわ」
そんな家庭科部のオリエンテーションは放課後に行われる予定。
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