第206話 諸葛亮vsナポレオン
一足先に決勝トーナメント進出を決めた東堂に挑戦すべく、初心者4人よる将棋対決が始まった。
2つの対局は同時進行で行われ、第一試合は西宮VS一ノ瀬、南雲VS四方堂が戦う。
まず、西宮vs一ノ瀬の対戦風景。
鏡合わせのように『歩』を動かし、なんとお互いの王が自ら出陣した
そして、『王』と『玉』はお互い1マスを開けて睨み合う。
見た事のない盤面に十河と東堂は目を見開いた。
「こ、これはっ!? ……何が起こっているの?」
「僕らには分からない次元で何か凄い事が行われているね……!」
お互い1マスでも前に動けば取られるので西宮が左に右にステップを踏めば、一ノ瀬も右に左にステップを踏む。
それはまるで死の舞踏。
やっていることは非常にしょーもないのだが、まるで達人の仕合いのように場には緊迫感が漂う。
――刹那、先に踏み込んだのは西宮だった。
「なん……だと?」
なんと、西宮の『王』は一ノ瀬の『玉』の真正面に仁王立ちである。
まったく予想外の一手に美保は言葉を失った。
この神の一手には一ノ瀬も苦しそうに盤面を見詰める。
「……参りました」
やがて、一ノ瀬は西宮の前で首を垂れた。
「なん……だと?」
終始、美保は何が起きているのかを理解出来なかった。
それは東堂と十河も一緒で、途中に指摘する事すら忘れていた。
「れ、麗奈? そこ置いたら相手に取られるだけだから、『王』は動かせないけど」
「一ノ瀬さんも『玉』を動かしたら勝利なんだけど……?」
「ボクにはあの間合い、踏み込むことが出来なかったんだ……仮に対局には勝ったとしても勝負には負けていたよ」
「いや、どっちにも勝ってんだよ。先に踏み込んだ方が負けなんよ」
しかし、意思の固い一ノ瀬はトーナメント進出を辞退した。
よって、西宮が準決勝進出となる。
一方、南雲と四方堂の対局では……
「東南の風を吹かせよう!」
「あれはまさかッ!? 諸葛優先輩!?」
「フッ……
「……ナポリエル杏樹ちゃん?」
「こいつら頭わるそー……」
名将同士の夢の対決が繰り広げられていた。
その内容はお互いの『角』が暴れ散らかして両者甚大な被害を受けるという、だいぶIQが低めの内容となっている。
そんな泥沼の乱戦の中、先に光明を見出したのは南雲だった。
持ち駒の『飛車』を四方堂の『玉』の進路上に置く。
「行くのです張飛さん! やってしまいなさい!」
「水戸○門混じってるぞ。しかもお前の張飛、敵から寝返って来たやつだし。もう設定メチャクチャだな」
「くっ……私はこれで『玉』が取られてしまったわね。でもこの戦、こちらの方が残り兵力は多いですわ。ポイント精算をしてください」
「ごめん、悪いけど将棋って残り兵力とかそういう概念は無いんで……」
そして、準決勝は西宮vs南雲。
例えるなら振り飛車ならぬ『振り王』の西宮と『振り角』の南雲。
当然、西宮は瞬殺された。
***
決勝戦はこのままやっても東堂が圧勝するのは目に見えている。
なので、東堂には圧倒的なハンデが与えられた。
東堂は19枚の駒を落とす。つまり、東堂の自陣には……
――『玉』1枚である。
「いくらあーちゃんとは言え、この天才軍師と言われたワタシを前にそんな布陣で大丈夫かい?」
「布陣もクソもねぇだろ。やってることは西宮さんとそう変わらねぇぞ」
「そうだね。麗奈。見てて! 王の戦い方を見せるから!」
果たして、東堂ならこんな盤面でも勝てるのか?
5人は手を握りしめて盤面を見つめて固唾を飲んだ。
遂にアツいバトルが始ま――ガララッ!
「す、すいません! 職員会議長引いちゃって、活動内容……で、すが……」
突然の
家庭科室に入室したはずだった顧問の
もう一度、教室の名前が『家庭科室』である事を確認して扉を開けた。
「……何をやってるんですか?」
「明里が王の戦い方を披露するらしいわよ」
「あ、いやっ、ちが……わないですけど! これには深い訳があって!」
「ほーう? それは家庭科部の活動内容よりも深いんですか?」
「えーと…………ごめんなさい、浅いです」
百合の圧で東堂は一瞬で折れた。
しかし、南雲は一人謝罪をする東堂を庇おうとする。
「百合先生! 悪いのはあーちゃんだけじゃないよ! これはワタシたちの責任でもあって……」
「もちろん。あなたたち全員お説教してあげますからね」
「あわわ……そうですわ! 私、ちょっと急用を思い出したのでお暇させて頂きますわ。ごきげんよう」
「あ、こいつ汚ぇ!! だったらアタシも……!!」
百合は捕らえた2人を含め、7人をこの後メチャクチャ説教した。
***
翌日。北条が活動内容決めの進捗を聞いた際、7人は再び北条に怒られたらしい。
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