第205話 丸女竜王戦
本日こそ活動内容を決めたい北条率いる家庭科部。
尚、率いるはずの北条はバイトの為不在。
そんな、刃物も火種もない状況でも争いは起きる。
「そっ……そんなバカな!! 私がこんなイキり小娘に……!!」
美保と対面する十河は詰まされた盤面を信じられないという目で見る。
何度確認しても自らの王には逃げ場が無かった。
「うぇ~い!! 散々バカだと煽って負けるってどんな気持ちぃ??」
「十河さんとか全然大したことないじゃん! どうだ! これがインテリヤクザと言われたみほっちの実力だ!!」
「……ちょっと待て? アタシってそんな陰口言われてたの?」
北条がヤンキーと言われるように、美保もパッと見でチンピラだと思われている。
と言うか、北条と違って素行がやや悪いのでチンピラと言っても差し支えはない。
そして、なによりこのチンピラ。見た目に反して非常に賢い。
「ねぇねぇ? ほら? 君言う事あるよね?? ほら、上手に『参りました』出来るかな~?」
「ぐッ……! くぅ……!!」
「終わってますわね。あなたのスポーツマンシップ」
本日の家庭科部の活動は『将棋』だった。
***
きっかけは些細なもので、家庭科部の今後の活動内容についての話し合いの最中、南雲の意見に噛み付いた美保が十河に殺害されそうになる。
咄嗟に美保は非暴力を掲げ、十河に知力勝負を持ち掛けた。
そして、どう見てもアホにしか見えない美保を舐めてかかった結果、惨敗を喫した。
「……はい。じゃあ2人の決着もついたし、そろそろ本題に……」
「もう一回勝負させて下さい!!」
「えぇ……」
副部長の東堂が北条に代わり仕切っていたのだが、相変わらず部員の纏まりはない。
「面白そうね。じゃあトーナメントにしましょう」
「よし。じゃあ、今日はみんなで将棋をやってみよう!」
「あーちゃん……? まぁいっか。そもそも、西宮さんって将棋差せるの?」
「雰囲気で行けるわ。一ノ瀬さんとガブもいけるかしら?」
「何となく知ってます! 王手マシマシ飛車角抜きで、みたいな奴ですよね!」
「たぶん違うと思いますわ。
こうしてここから、にわかと超人たちのアツい将棋バトルが始まる。
トーナメントのブロックは初心者組と上級者組に分かれ、まずは初心者組が駒の動きをスマホで調べながら上級者たちの戦いを見る事になった。
十河に一回勝利している美保はシード枠として、第一回戦は東堂VS十河に。
「あーちゃんがんばえー! カッコいいとこ見せてー」
「ッ!! 東堂ッ……先輩、対戦よろしくお願いします」
「よ、よろしく。すごいね、圧が……」
「さて。お手並み拝見と行きましょうか?」
「西宮さんの強キャラ感すげぇーな。 ……弱いんだろうけど」
~~十分後~~
「ボクもなんとなく駒の動かし方は分かったかも!」
「……で。どっちが勝ってますの?」
「一応、東堂さんが優勢かな」
「この勝負、ふふ……まるで将棋ね」
「そっか……『王』を取れば!」
「何言ってんのこの人たち」
西宮と南雲がなんか盛り上がっていた。
~~さらに十分後~~
「ぐぐッ…… ま、参りましたッ……!」
「ありがとうございました。ふぅ。勝ててよかったー」
「雑っっっ魚、こいつ。何が新入生代表だよ。実は大して頭よくねぇんじゃねえの?」
「えーん、せんぱぁい! うぅっ、慰めて下さーい!」
「雑魚乙」
初心者の見学があるので、このまま上級者ブロックから進行する事に。
一足先に決勝戦進出を賭けて戦うのだが、ここが事実上の決勝戦だった。
東堂VS美保、
――対局開始ッ!!
~~20分後くらい~~
「ば、バカな……アタシが負けるなんて……」
熱い戦いは全編カットで、要約すると美保が負けていた。
「どうだ! 参ったか、みほっち!! これが神童と言われた東堂先輩の実力だ!!」
「てめぇの立ち位置はなんなん?」
「し、神童? そんな事言われたことあったかな……?」
「ほら、北条さん? 盤面に額を擦り付けてちゃんと東堂先輩に挨拶して? 上手に言える??」
水を得た魚のように意気揚々と美保を煽る十河。
これが戦う彼女たちの流儀である。
何かを堪えるように俯く美保はやがて口を開き……
「……負けてない。アタシは負けてないっ!! ズルズルズル! ヤダヤダヤダ!」
「駄々を捏ね始めましたわよ」
「うわぁー……」
「この姿を晒す方が負けを認めるよりもよっぽど屈辱的だと思うのだけれど」
こうして、丸女将棋王は東堂に決定した。
……と、見せかけて一応まだ初心者同士の対戦が残っていた。
ここから始まる底辺同士の戦いを駆け上がり、頂上決戦に進出するのは誰なのか。
アツい家庭科部の戦いは続く――
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