第203話 OPPA部(ボツ案)


入学式と始業式があった本日は半日で下校の為、1年生以外は大してやることはない。

2年生の4人はホームルームをゆるりと過ごして帰り支度をする。



「……そういや。帰りはどうする? またバラバラに帰んのか?」


「考えてなかったね。紗弓ちゃんはそのうち部活に入ると思うけど、他の子はどうなの?」


「ガブは多分部活には入らないわ。一緒に帰りたがるんじゃないかしら」


「十河さんも部活には入らないと思う」



西宮も南雲も本人に確認を取った訳では無いが、彼女たちの行動原理から推測するにおそらく部活動には参加しない可能性が高い。



「ほんじゃ、仮に一ノ瀬さんが部活入っても7人か……多いな」


「それならもう登下校もみんな一緒でもいいんじゃないかな」


「そうね。帰りが一緒なら行きに気を遣うのも変だし」


「結局何しても十河さんはついて来そうだし、ワタシもそれでいいと思う」



と、言う事で本日は早速8人衆で帰ってみた。



***


「東堂先輩! 今度、部活の見学一緒に……」

「お姉様! もしよろしければこの後お茶を……」

「先輩、先輩♡ 今日の入学式どうでした?」

「姉貴! こんな奴ら置いて2人で帰ろうぜ!」



「……うん。やっぱり分かってはいたけど、情報量が……」


「やはりまず、親睦を深める必要があるみたいね。そこで私はこんなものを用意したわ」



西宮がカバンから出した謎の用紙を7人に配る。



「……お前がこういう用意周到な時って、だいたい碌な事じゃないんだよな」


「なになに……? 部活動設立申請……え。何部を作るつもり?」


「OPPA部よ」


「おっパブじゃねぇか!? 碌でもねぇな!!」



丸女では5人以上の部員と顧問の教師を確保出来れば部活動が設立出来る。

最終的な決定権が校長の印鑑一つで決まるので面白ければだいたい申請は通る。


なので、このいかがわしい申請も通ってしまいそうなのだが、



「お姉様? 『おっぱぶ』とはなんですの?」


Oceanオーシャン Pacificパシフィック……えーと。どうしようかしら……Puddingプリン A la modeアラモードの略よ」


「聞いたところで何をする部活なのかが全く分からないんですけど?」


「流石、西宮先輩! 凄く頭良さそうな響きです!」


「……てか、綴り間違えてね? 太平洋ってPacificOceanだよな? それにプリンと何の関係が……姉貴はわかったのか?」


「深く考えるな。どうせこいつの考えてることはよく分からん」



西宮曰く、部活動を作るのは親睦を深める為で、名前や活動内容はどうでもいいらしい。

なので、この場で名前と活動内容を募集するくらい適当な動機だった。



①帰宅部(南雲優)


「平和に帰宅する為の部活だったら名前はこれでいいんじゃない?」


「いや、勝手に帰れよ。いちいち設立申請出す必要ないだろ」


『帰宅部』という部を作るという斬新なスタイルは美保によって却下された。



②キャバレークラ部(西宮麗奈)


「却下。次」


北条が代表してくれたので特筆すべき点はない。



③軽音部(東堂明里)


「青春といえば軽音部ってイメージあるよね。この中で楽器出来る人ー?」


「「「「「「「…………」」」」」」」


「解散ッ!!」


厳密に言えば十河は出来るが手を挙げる気は無かった。

こうして彼女たちのバンドは方向性の違いにより解散した。



④家庭科部(北条茉希)


「これならやることもほぼ自由だろ? 百合先生も確保出来るかもだし」


「なんか急にマジレス来ましたわね。冷えましたわ」


「いや、大喜利やってる訳じゃねぇだわ」


アンチの辛辣な意見が飛んできたもののこちらは一旦保留となった。



⑤勉強部(一ノ瀬紗弓)


「みんなで居残り勉強して分からないことを教え合おうという部です!」


「あ♡ 先輩! 私、実は保健体育が凄く得意でー……」


「そうなんだ。じゃあ一ノ瀬さんに教えてあげな」


こちらも貴重な常識人枠として意見が保留になった。



⑥お茶部(四方堂ガブリエル杏樹)


「放課後にお茶を飲んだりお菓子を食べる部活ですわ」


「そ、それは流石に部活ではない様な気が……」


「このお嬢は頭お花畑なんか?」


部室を設ける分、帰宅部よりタチが悪いので却下された。



⑦法務部(北条美保)


「字面でもまったく活動内容がわかりませんわ」


「要するにそこらへんの生徒のいざこざをアタシらが理知的に解決しようってんだ。すげーだろ」


「うん? でも、みほっち。まずボクらの問題を理知的に解決するべきなんじゃ……?」


ぐうの音も出ないほど正論パンチを貰って美保は沈んだ。



⑧ご奉仕部(十河灯)


「後輩たちが先輩にご奉仕させて頂きます♡」


「奉仕の前に『ご』って付くとちょっと性的なサービスを期待してしまうわね」


「これもう実質キャバクラ部と一緒じゃん」


こちらも動機が怪しかったので却下された。



***


――最終結果発表。



「第一印象から決めていたわ。顧問をお願い」


「……なんの話ですか? 『家庭科部』? う、うーん。真面目にやるならいいけど?」


「安心と信頼のマジ宮よ」


「いま一気に不安になりました」



後日、一応百合の許可も降りた為、8人はとりあえず家庭科部を発足してみた。


遂にここから彼女たちの青春ストーリーが――始まりません。


ちなみに、勉強部は勉強アンチが多かった為却下されたらしい。



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