第187話 反省は大事
――翌朝。
というか、解散してから数時間後。
寝れる訳がない4人は自室で例の一件を思い返し考えに耽る。
東堂が言った通り、時間が経つにつれて全員冷静になっていった。
すると、それぞれは押し寄せてくる感情に悶える事となる。
要するに、全員後悔はしていた。
***
反省点①:性に対する知識不足
(れっ、麗奈は何しようとしてたのーーーッ!?)
事の発端ともなった東堂と西宮の同意の上での行為だが、実際には東堂自身は何をされるのか具体的には分かっていなかった。
――『最後まで、その……してもいい、よ?』
東堂は『最後まで』を知らずに発言していたので、精々胸とお尻を激しく揉まれるくらいだろうと思っていた。
しかし、何故かキスをされて舌まで捻じ込まれた頃には何が何だか分からず成すがままの状態。
もはや東堂にはどこからが最初でどこまでが最後かなど見当もつかない。
(だ、ダメだ……! 全然分からない……あの場に居たみんなは分かっていたのかな?)
東堂は知識無く放った軽率な発言を後悔していた。
***
反省点②:下世話な好奇心
(あっ、アホか俺はッ!! 覗き見なんてせず撤収すれば良かっただろ!!)
よくよく考えなくても他人の情事を覗くなど失礼千万。
――『俺だって悪くねぇよ!』
(いや! わりぃよ!! 俺は最低な事してたわ!!)
不慮の事故はあったとは言え、もし北条があの場で帰ろうと提案すれば事態はここまで悪化しなかったかもしれない。
寧ろ、わざわざ他の部屋から遠いところで誰にも迷惑を掛けないようにしていた西宮の配慮を自分が台無しにしてしまった。
(そりゃ、西宮もキレるわ……2人に逆ギレしちまった事を謝ろう……)
北条は自身の不義理な行いを後悔していた。
***
反省点③:普通に言い過ぎ
(あそこまで怒る必要はなかったのでは?)
性欲の赴くままに東堂を襲って何故かOKが出てテンションが上がった西宮。
さらに東堂の反応は西宮が求めていた女の子の反応で、テンションはさらに加速した。
……しかし、突然の闖入者たちによって行為は中断を余儀なくされる。
状況を理解するにつれ、高まっていた性欲は次第に怒りへと変換されていった。
怒りが最高潮に達する頃には行き場を失った矛先は一番手頃な方向へと向く。
――『これ以上私たちの邪魔をするのはやめて頂戴』
(い、言いすぎよね……どう考えても……)
そもそも今回は最初から南雲は邪魔などしていなかったし、東堂が半裸で泣いていたあの状況を見れば南雲でなくとも西宮を疑うのは自然な流れだろう。
にも拘わらず、怒りに飲まれていた西宮は弱っていた南雲に対してマウントを取るような発言をしてしまった。
西宮は感情に任せた吐いた暴言を後悔していた。
***
反省点④:???
(や、やっぱりムリっ! いくら2股を承認してるとは言ってもムリなものはムリッ!!)
現在、南雲は東堂にとっての2番手で、それを承知した上で2股させて貰っている立場である。
――『ワタシもそれでいい! あーちゃんと浮気しますッ!!』(※127話参照)
しかし、あぁは言ったものの東堂が西宮とヤるのは『全然OK!』となるワケが無い。
(いや、ムリムリムリムリ! ふつーにムリ。。。)
あの状況から西宮が東堂に何をしていたかまでは分からないが、南雲は自分より先に西宮との関係が進展した事に生理的な嫌悪感を感じていた。
……では、どうすれば良かったのか?
答えは簡単である。
(ワタシが先にあーちゃんを襲えば良かったのでは……?)
南雲は西宮より先に東堂に手を出さなかったことを後悔していた。
***
若干1名は反省の色が見られないものの、朝食の際に4人は自然と一つのテーブルに集まった。
流石のバスケ部3人衆も昨夜の出来事を吹聴するような事はせず、故に4人が好奇の目に晒される様な事も無かった。
「その、東堂、西宮……昨日は覗いて悪かった。ごめん」
「許すわ。南雲さん、私も言い過ぎてごめんなさい」
「うん……あーちゃんもごめんね?(先に襲ってあげられなくて……)」
「ぼ、僕? う、うん? なんかよく分からないけど、これで一旦は仲直り出来たのかな?」
まだ少し気まずそうな様子の3人はお互いの視線を少し外しながら小さく頷いた。
「ところで……」
3人が丁度落ち着いてオレンジジュースを口に含んだ瞬間、
「麗奈がやろうとしてた『最後まで』ってどんなことなの……?」
「「「 ぶふッッッ!!! 」」」
「……ゴッホ、ゴホッ!! おい、東堂!! 食事中だぞ!?」
「しょ、食事中に吹いたのなんて初めてだわ……」
「もー、あーちゃんはえっちなんだから……旅行から帰ったらワタシが続きを教えてあげるねっ!」
「えっ、ああ! ご、ごめん! 食事中の話題じゃなかったよね! 忘れて!!」
こうして、なんとか今回は関係が修復された4人。
しかし、南雲は心の中で逆襲の炎を燃やすのであった。
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