第185話 お待たせしました。修羅場です。


急に隣の部屋から物音が聞こえた西宮は少しだけ襖を開けて居間を覗く。

すると、何故か雉岡と東堂が入れ替わっていた。



「……明里?」


「ん……んん!? れ、麗奈!? なんでこんなところに……?」



西宮は考えた。


・雉岡は西宮を例のヤリ部屋へ呼んだ

・雉岡が東堂を例のヤリ部屋へ呼んだ(?)

・その雉岡が消えた


つまり、

『後は2人でごゆっくり~』という事だろう。

脳内で手を振る雉岡の姿を鮮明に映した西宮はその意図を完全に理解した。



「なるほど。ここでヤらねば女が廃る……と。そういう事ね」


「れ、麗奈……? ちょっとまだ僕状況が。 ……ッ!?」



こうして西宮は寸分の迷い無く東堂を襲った。



***


そしてその後、今まさに東堂の下着越しに西宮の指が入っている状態を5人は目撃している。



(き、雉岡さん!? まさか俺を呼んだ理由がこれぇ!?)


(あわ、あわわ~? 一体何がどうなって~!?)


(えええ!? 想定外かよ!)



しかし、なんだかんだで全員年頃の女子。

その視線は2人の行為に釘付けである。



(見て見て、北条さん! アレ完全に入ってるよね?)


(そういう生々しい表現とかいちいち報告しなくて良いから!)


(やば、私ちょっとムラムラしてきたかも……)


(ワンチャン、今からでも混ぜて貰えないかな!?)


(おい! バカッ! お前ら……ッ!?)



引き止めようとした北条の努力は空しく、アホのバスケ部3人組は軽いノリで突入していった。



「たのもー! 私たちも混ぜて下さい!」



「「 え……? 」」 (←東堂&西宮)



場の空気が完全に凍り付いた。



「あちゃ~……」


「え、えーと……よっ、東堂、西宮! えーと、最近調子どう?」


天を仰ぐ雉岡、その後ろから気まずそうに現れる北条。


「……ひゃっ」


顔を真っ赤にした東堂は目に涙を浮かべる。


「あ、あれぇえ? 東堂さん的にはNGだった感じ? だったり?」


「東堂さん……? 一応言っとくけど、叫ばない方が……」



「ひゃぁーーーーーーーーーーーーッッッ!!」



旅館には東堂の悲鳴が響き渡った。

ほぼ全裸の状態の東堂は体を隠すように抱いて蹲る。



「お、おいバカ! お前らとりあえず、ちゃんと服着ろ!!」


「そうだよ! こんなところ南雲ちゃんに見られたら……」


すると、悲鳴から1分も経たないうちにドドドと足音が聞こえて来た。


「ヒイイィ! マズいって東堂さん!! 早く! 服! 服!」



しかし、啜り泣く東堂は動く事が出来ず、西宮はせめて浴衣だけと上から優しく羽織らせた。

ちなみに西宮は元々着崩れていた程度だったので、今は普通に着直している。


程なくして南雲が現着する。



「どうしたのみんな!? あーちゃんの悲鳴が聞こえたんだけど!?」


「優。落ち着いて話を聞いてくれ。とにかく落ち着いて……」


「……? 安心して! 落ち着きのゆーちゃんと言えばワタシの事だよ! で、あーちゃんは?」



5人は気まずそうに顔を見合わせた後に道を空ける。

北条はいつでも止められる配置につきながら南雲を部屋へと案内した。


そして、南雲の目に2人の姿が映る。


北条が南雲の表情を確認しようと振り返った頃にはもう遅い。

南雲は既に西宮に本気で殴り掛かろうと飛び出していた。


誰もが目を瞑ろうとした瞬間、南雲と西宮の間に割って入ったのは東堂だった。



「ゆーちゃん!! 大丈夫だから! 僕は、大丈夫だから!」


「大丈夫じゃないッ!! どいて!! あーちゃんを泣かしたそいつを殴らせて!!」


「違うよ、ゆーちゃん。泣いちゃったのはそれが原因じゃないんだ」



すぃ~、とすり足をしたバスケ部2名の首根っこを北条がノールックで鷲掴みにする。

残り1名は雉岡が羽交い絞めにした。



「で、でも……あーちゃん、服……西宮さんに犯されて……ッ!」


「こ、こっちは、その……


「え……う、うそ…………」


「本当よ」



今まで黙っていた西宮が短く答える。

彼女にしては珍しく、その表情にはうっすらと苛立ちが見えた。



「う、噓だよね? 西宮さんを庇って、話を合わせてるだけだよね?」


「その……最初は強引だったけど、途中から麗奈は確認を取ってくれて。 ……それで、その、同意したんだ」


「でも! イヤだったよね!? 仕方なく同意したんだよね!?」


「……ううん。初めてだったけど、むしろ、 ……優しかったよ」



今度は南雲の足から力が抜けてそのままペタンと座り込む。



「ウソだもん。絶対ウソ……うぅっ。 …………っく! どうして……ワタシだって、あーちゃんと……ないのに、なんでぇ……」


南雲も俯いて泣き始める。


「優……」



北条は南雲に寄り添って背中を擦った。

同時に彼女は雉岡に一応担任を呼んでくるように指示し、バスケ部には席を外して貰うように言った。


雉岡たちはその道中、会話は無かったが全員胸に抱いた感想は一つ。



――普通に地獄。



***


そして、日付は変わっていたが何故か起きていた百合聡美を立ち合い人にして4人は話し合いをする事となった。


……例の部屋で。



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