第171話 複数属性の使い手
汚い大人の裏切りにより、西宮に強制連行されて更衣室へと向かった東堂。
彼女は普段着用しないメイド服より更に見慣れない服を着る事となる。
「麗奈……これ、僕は本当に着るの? というか、着かたが分からないよ……」
「全裸になりなさい。私が着せてあげるわ」
「下着まで脱ぐ必要は無いよね!?」
西宮は今日がネコの日ということで更衣室で半裸の東堂とじゃれ合ってみた。
すると当然のように魔が差して来た。
西宮はその欲望の赴くままに東堂の小ぶりな胸にソフトタッチして掬いあげる。
「……んッ!? れ、麗奈? えっ? どゆこと!?」
「ふむ。あなた、胸は小さいけど感度は中々……」
「んぁッ! ちょっ……麗奈、ダメだよ……!」
「おーい、東堂。一応仕事ちゅ……あ。 おっ邪魔しやしたーーー……」
気遣いの出来る女、北条はゆっくりと更衣室の扉を閉める。
それを見届けた西宮は再び東堂の胸を揉むのを再開した。
「えええ!? まずは早く着替えて北条の誤解を解こうよ!!」
「北条さんは誤解なんてしてないわよ。せっかくだしご厚意に甘えましょう」
「これ以上はダメ! ちゃんと仕事はしなきゃ」
「演技は棒なのに……?」
「そ、そこはこれから頑張るから!」
と、言う事でお預けを食らった西宮は仕方なく東堂の着替えを手伝った。
***
ホールに戻ると北条が引き攣った笑みを浮かべていた。
「す、すげーな、お前ら。出来れば店の外でやって欲しかったけどな……?」
「流石の私でも屋外でやるのはまだちょっと……」
「そういう意味じゃねぇよ!!」
先に戻ってきた西宮に続き、東堂もホールへとやってくる。
「ごめんね、北条。おまたせ」
「おう。……おう? お前、その恰好……」
「ここからは頑張るから」
東堂は謎の衣装を身に纏い死んだ魚のような目を携えて決意を固めていた。
西宮が東堂に着せた服は色々な意味でややこしい構造となっている。
順を追って上から説明すると、
頭:ネコミミ、お面
首:首輪
服:胸元が大きく開いているへそ出し巫女服
スカート:袴っぽくサイドからふとももが見えるミニスカ
腰:脇差(模造刀)
腰(背面):帯っぽいリボンとネコしっぽ
足:足先は足袋のような形をしたニーハイ
靴:草履
「西宮……お前これ自分で考えたの?」
「ええ。私のイメージをデザイナーに伝えてオーダーメイドしてもらったわ。どうかしら?」
「まぁ、一言で言うなら『属性つめ込みパラダイス』だな」
西宮が思う可愛いをとにかく東堂というお皿の上にぎゅうぎゅうに敷き詰めてみた結果、皿には乗り切らず溢れていた。
小学生が考えたランチプレートみたいになってしまった東堂はもはや方向性を見失いつつある。
「せ、拙者はネコミミ巫女侍でござるニャ!」
「おーい、東堂。迷子になってるぞ」
「うーん。何か違うわね。何が足りなかったのかしら……?」
「いや、減らせよ。今のお前に必要なのは引き算だろ。足りすぎてるんだわ」
ここまで来ると東堂の棒演技も相まってネコの要素は激薄だった。
「なるほど。そこに気づくとはやはり……では、その反省を早速活かしましょう。行くわよ北条さん」
「……チッ。やっぱ俺もあんのかよ」
西宮はもっとゴネると思っていた北条があっさり了承してくれた事に驚く。
もしかして意外と乗り気なのでは?と思い、同じく更衣室で着替え中に胸に触ろうとしたら思いっきり手を叩かれた。
「調子乗んな」
「何がネコの日よ。ただの狂犬じゃない」
北条としてはただ単純に人間不信に陥っているので抵抗を諦めただけだった。
そして着替え終わった北条は淡々とホールに戻る。
「おー? ……ちょっと待って。北条のはだいぶ普通じゃない?」
「そうだな。思ったよりはマシだったわ。……コレ以外は」
北条はチャイナドレスにネコミミ、扇子を添えたシンプルな構成。
唯一、エグめのスリットが入っている事だけは気になった。
私の足を見て下さい、と言わんばかりの露出である。
「やはり、シンプルなのが正解なのかもしれないわね」
「この足の部分だけなんとか……って、おい」
「な、なんで麗奈までコスプレしてるの? ……かわいいけど」
何故か客の西宮までもがネコミミサンタのコスプレで登場した。
こちらもシンプルではあるが胸元が大きく開いて大変けしからんネコとなっている。
「じゃあ行くわよ」
「は? お前の行動すべてが突飛すぎて訳わからんわ」
「ネコと言えばお散歩よ」
「え、僕たちまだ勤務中なんだけど……」
恐ろしい程に用意周到な西宮は五味渕を介して看板を受け取る。
そこには『りりあん☆がーてん、すーぱー☆にゃんにゃんデイ開催中ニャ!』と書かれていた。
斯くして、西宮は2匹のネコを市中引き回しにする大義名分を手に入れお散歩を楽しんだ。
尚、東堂は脇差が本物ではないかの確認のため、警察からの職務質問を受けていた。
***
西宮の宣伝効果は絶大で大繁盛で終わった『りりあん☆がーてん』にて店長の二川と店員の三野宮はまったり片付けをしていた。
「結局、あの子は何しに来たんでしょうね……?」
「わからない……いや、もしかしら彼女は幸運の招きネコなのかもしれないね」
「ネコの日だけに?」
「
オバハンたちはしょーもない会話で盛り上がっていた。
もしかしたら、本日のベストオブキャットは西宮だったのかもしれない。
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