第161話 タイプ 相性 『検索』
千堂と万里が禁断症状に苦しんでいるのを見て西宮はふと思った。
「人間誰しも弱点はあると思うの」
「どうした急に」
何気ない普段通りの昼休みに4人はのんびりと雑談していた。
「例えば東堂さんは万能に見えて意外と弱点が多かったり」
「え、僕? そうは言っても掃除くらいじゃ……?」
「あーちゃんはかっこいいけど弱点はいっぱいあるよ」
東堂に関しては他にもエロへの耐性や押しに弱かったりと、意外と耐性に抜けが多い。
RPGとかだと意外と使いづらいタイプである。
「南雲さんの弱点は知能でしょう?」
「おっけー。ボコボコってことでいいね?」
「待ちなさい。重要なのはここからよ」
南雲も特化型なのでRPGだと(以下略
とりあえずいつでも西宮を襲撃できる体勢のまま南雲は耳を傾ける。
「では考えてみなさい。この女の弱点は何?」
西宮は北条を指差した。
「あ? なんでそんなの知りたいんだよ」
「だって、みんなこんなにも弱点を曝け出しているのにあなただけズルいじゃない。私なんて五味渕のせいで弱点丸出しよ」
「それは監督不行き届きだろ」
西宮に関しては弱点だらけでお話にならない。
RPGで言うと、序盤はゴミでエンディング後の裏ダンジョンあたりでようやく覚醒するタイプである。
尚、これはRPGの話なので現実では覚醒しない模様。
「ん? でも、北条って麗奈とお化け屋敷に行って泣いてたって言ってなかったっけ?」
「喜べ西宮。弱点だぞ」
「…………お化け以外で」
文化祭で西宮を庇った北条は未だに『お化けが苦手』という設定になっている。
しかし、実際にゴーストタイプが弱点なのは西宮である。
「でも、確かに。お化けは意外だったけど、茉希ちゃんって苦手なものとかあるの?」
「そうよ、南雲さん。その探求心を忘れないで。これより『北条対策会議』を始めるわよ」
「なんで本人が対策会議に参加してんだよ。おかしいだろ」
対策会議という名の弱点探しは唐突に始まった。
この会議は西宮が北条の弱みに付け込むために私利私欲で開催されている。
3人は連想ゲームのように北条のベールを剝いでいく。
***
「シンプルに虫とかどうかな?」
「まぁ好きでは無いわな」
「えー!? 地球に6本も足つけてるのに!?」
「いや、足の数は関係ねぇだろ。その理論だとムカデとかやべぇぞ」
ちなみに
「じゃあ嫌いな食べ物はー?」
「特にないな。まぁ偶然まだ嫌いなものを食った事がないのかもな」
「辛い料理とかはどうかしら?」
「むしろ結構好きだな。まぁ芸人用の度が過ぎた奴とかは無理だけど」
猫舌や知覚過敏とかでもないので
「アレルギーとかはないのかしら?」
「多分ない。あったとしてそれを押し付けてきたら最悪だけどな」
「花粉症とかはどうかな?」
「ないな。免疫強い体に産んでくれてお袋に感謝だわ」
どうやら草花の類にも強いらしく、あの憂鬱な季節は来ないらしい。
***
ここまでの内容をまとめたが未だ北条の弱点は見えてこない。
――そう、一般人には。
常人とは異なる発想を持つ西宮と南雲には今ハッキリと見えるものがあった。
「……なるほどね。完全に理解ったわ」
「ワタシも理解ったかも。せーので答え合わせしよっか。……せーの!」
「炎とゴーストタイプ」 「ほのおと霊タイプ!!」
「「???」」
――ゲーム脳である。
彼女たちは自らがやっているゲームに当てがめて北条のタイプ診断をしていた。
彼女は『霊』に弱く、『虫』、『炎』、『氷』、『草』に強い。
もしかしたら、本当に僅かな可能性だが、お手元のスマホでも『相性表』とウェブ検索をかけたら北条の弱点は表で分かるかもしれない。可能性の話だが。
誇らしげな彼女たちは最後の詰めに入る。
「『石』をぶつけられたり、『土』をかけられたりするのが嫌なんじゃないかしら?」
「当たり前だろ」
「『水』をかけられたり、『悪』い人に襲われるのが怖いんじゃないかな!?」
「当たり前だろ」
西宮と南雲はハイタッチをした。
こうして、一つの謎が解けた事により満足した西宮が会議を締めくくった。
***
後日、南雲と西宮はゲームでモンスターに『まきちゃん』と『マキにゃ』と名付けて2人で盛り上がっていた。
しかし、残念ながらそれを見ても東堂と北条には何が面白いのか全く理解出来なかった。
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