第157話 丸女面接編②
本日の推薦入試は負傷した千堂に代わり養護教諭の万里が面接官をすることになった。
「……面接は養護教諭がやってもいいのかな?」
「あー……。大丈夫だと思いますよ。合否は校長先生たちが決めるので、面接官は誰でも良いみたいです……」
「そうなんだ。じゃあ、まぁ聡美ちゃんを一人にする訳にはいかないし、私が代役をやろう」
「万里先生、ありがとうございます」
と、言う事で万里が代役に入ったのだがサクサクと面接が終わっていく。
心なしか千堂が居た時よりも面接の回転が早い。
やはり、屋上でこそこそとタバコを吸っている女よりも保健室でセクハラ三昧の女の方が対人性能は高かった。
そんなこんなで面接は本日最後の生徒まで滞りなく進んだ。
***
有望株その②:四方堂 ガブリエル 杏樹(特別推薦)
「……聡美ちゃん。この生徒」
「あっ……! まさか、あの時の……」
「入りますわ」
「あ、ちょっ! まだ入室許可は……!!」
ノックも無しに入ってきた彼女はつかつかと歩き、椅子の隣で優雅にお辞儀をする。
「四方堂ガブリエル杏樹ですわ。よろしくお願いいたします」
彼女は髪をかき上げた後に椅子に優雅に着席する。
そして足を組み堂々と椅子に背を預けた。
「「…………。」」
あまりにも堂々とした態度に面接官の方が動揺する。
あっちが面接官だっけ? と。
しかしこれは絶対にやってはならないタイプの面接対応なのでくれぐれも受験生の方は参考にしないように。
「あ、あの。それでは自己PRをどうぞ……」
「実家が金持ち。寄付は任せなさい。以上」
『合格』
「いやいやいやいや!」
校長たちからのお題が表示されるはずのモニターには瞬時に合格が映し出された。
こちらも絶対にやってはならいタイプの裏口入学なので教職員の方は参考にしないように。
「もっと他のPRがありますよね!? そもそもあなたは成績普通、実績も特に書いて無いのになんで推薦枠貰えたんですか!?」
「実家が金持ち。以上」
「やはり世の中金か。 ……まぁいいや、じゃあ一応志望動機を聞こうか」
「貴校の校風に感銘を受けたからですわ」
『合格!』
「絶ッ対嘘ですよ!! 感銘を受けた人が裏口入学する訳ないじゃないですか!!」
表情一つ変えずに平然と嘘を吐く姿は西宮の姿と重なった。
ツッコミ続けた百合は息を整えた後に質問を変える。
「じゃあ……我が校が掲げる目指す淑女の姿がどのようなものかご存じですよね?」
「分かりませんわ」
「ギブが早いな君は」
『百合先生、可哀そうだからヒントを上げなさい』
「……立てば○○、座れば○○、歩く姿は○○○○です」
百合がホワイトボードにヒントを書くと四方堂はハッと目を見開いた。
「立てば西宮、座れば麗奈、歩く姿はお姉さまですわ!!」
「それはただの西宮さんです!!」
「遠目から観察した西宮さんの感想かい?」
「で? 今の正解でしたの?」
「不正解ですよ!!」
一応正解は『立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花』である。
校長が学園の名前にちなんだ『百合』が入っている良い感じのフレーズを探した結果こうなった。
「たぶん校訓とかも分からないだろうけどさ、それ以前の問題として……君、この学園の正式名称は知ってるかい」
「ば、万里先生、流石にそれは……」
「…………」
「嘘ですよね……?」
「さ、流石に知ってますわ。えーと、えーと……花丸……淑女なんとか学校?」
「嘘ですよね?」
四方堂が居た学校では電子化が進んでおり、願書を提出する際はタブレット端末に入力を行う。
この時、彼女はコピーアンドペーストで入力フォームに出力したので丸女の正式名称を完全に忘れていた。
「ヒントを要求しますわ!」
「志望校の名前を知らないなんて前代未聞ですよ!!」
『万里先生、可哀そうだからヒントを上げなさい』
「……可哀そう? まぁいいや、丸井
先ほど同様に万里がホワイトボードにヒントを書くと四方堂は冷や汗を流す。
「Hmm……丸井
「……万里先生。この子は一体何をしようとしているのでしょうか?」
「大方、日本語が分からないフリをしているんじゃないだろうか」
「く~ッ! フランス語だったら言えるのですが……Le
『2人とも彼女は日本語が得意ではないみたいだから合格にしてあげよう』
「さっきまで滅茶苦茶流暢に受け答えしてましたけど」
「というか、日本語でもフランス語でも学園名は変わりませんけどね」
南雲は学食にて、
『へー、丸女って日本語話せたら推薦受かるんだー』
と言っていたが、どうやら丸女は日本語が話せなくても受かるらしい。
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