第155話 光と闇の面接
本日4人は昼休みに学生食堂に来ていた。
丸女の昼食はレストラン、学生食堂、カフェテラス、購買部と施設が充実している。
これに加えて弁当を持参する生徒もいる為、人が分散して昼だからといって学生食堂が混雑するという事はない。
「今日は寒いからうどんにしようかしら。なるほど……きつねうどん。狐って食べれたのね」
「西宮さん、それ狐は入ってないよ」
「出たわね。メロンパン同様にきつねうどんも私を舐めているようね」
「……ていうかお前、よく食ったことない動物の肉を食う気になるな」
この西宮の無知アピールも学食では恒例である。
いつも何かにつけて料理名にいちゃもんをつけている。
「じゃあこのたぬきうどんも狸は入ってなさそうね。どうせまた見た目が狸とか抜かすのでしょう?」
「そ、それは、具を意味する『たね』を抜いた『たね抜き』が由来らしいよ。所説あるけど……」
「だとしても『ね』は何処に行ったの!? どこまで私をコケにするつもりなの……!」
「もういいからさっと選べ」
北条に急かされた西宮は結局『きつねとたぬきうどん』というよくばりセットを頼んだ。
料理を運んだ4人は同じ机を囲み、北条はそこでふと思い出す。
「料理の話してたら思い出したけど、そろそろ美保に縁起のいいもん食わせてやらないとな。なんかいいもんあるかな?」
「ああ、そっかそっか。丁度いま受験シーズンだもんねー。……まぁ丸女ごときにそんなゲン担ぎ要らない気もするけど」
「やっぱり王道で言えばトンカツとかかな?」
「なぜ受験でトンカツを食べるの? 縁起がいいの?」
「受験に『勝つ』っていう言葉遊びみたいなもんだ。お前も食っといた方がいいんじゃないか?」
「その心は?」
「……『喝』が必要、みたいな?」
「「「おー!(拍手)」」」
「拍手やめろ。俺が悪かったから……!」
調子に乗った北条の謎掛けもややスベリしたところでお次の話題は東堂が提供した。
「北条は知ってるだろうけど、麗奈とゆーちゃんが勉強教えてた紗弓ちゃんは推薦入試受かったみたいだよ」
「喜ばしい事だけど、なんというか……丸女に推薦とか、なんか複雑だよね……」
「そうなの? 私も推薦で入学したわよ」
「――ゴホッゴホッ! 冗談だろ!? お前のどの部分が推薦出来るんだよ!」
衝撃を受けているのは北条だけではなく南雲も手に持ったスプーンを落としていた。
東堂のみ気合でギリギリ平常心を保っている。
「そのー……滅茶苦茶面接の練習したとかかな?」
「いえ。普段通りに会話しただけよ」
「へー、丸女って日本語話せたら推薦受かるんだー」
「で、一般入試は鉛筆握れたら合格できると……やべぇな」
***
では、そんな面接はどのように行われていたのか。
これは推薦入試についての職員会議中の出来事である。
「えー、それでは推薦入試における面接ですが、今年も校長が参加するそうです」
(こ、校長先生が!?)
今年から面接官として面接を行う
「場所は特別教室を使うのですが、今年は校長自ら手を加えこのような構造となりました」
なぜ部屋の構造を説明する必要があるのか不審に思いつつも百合は会議用のタブレット端末で確認をする。
その面接室は隣接する教室にマジックミラーを設けて裏で面接を覗く事が出来るという構造。
(刑事物のドラマとかでよく見る取調室だー!!)
そこで、したり顔の校長がサプライズで会議にやってきた。
「ふっふっふ……どうだい? 私の力作は。今回、表で面接する先生たちが光の面接官だとするならば、裏で面接を採点する我々は闇の面接官だ……」
(……校長先生は闇なの?)
「我々からのお題は生徒の裏に置いてあるモニターに映し出すので適宜会話を振ってくれ。何か質問等はあるかな?」
そこで光の面接官である百合が挙手をする。
「ほう、百合先生。質問をどうぞ」
「どんなお題が来るのでしょうか? 例題のようなものがあると流れが想定しやすいのですが」
「なるほど。君は眩い程の光属性だな。そうだね……千堂先生」
眉間を押さえているフリをして寝ていた千堂陽子に白羽の矢が立つ。
「貝は貝でも、パパやママからもらうとうれしい「かい」ってなーんだ?」
「真珠貝」
「正解」
「えええ!? そういう感じなんですか!? しかも正解って『おこづかい』ですよね!?」
「あぁ、そっちですか。パパ活とかママ活の話ですね」
「なぞなぞですよ!!」
寝起きの千堂は割と即答だったが正解したらしい。
当然、なぞなぞの正解で言えば百合の『おこづかい』が正解である。
「このように、出したお題に対して面白ければ合格だ。最終的な合否は闇の面接官が決める」
「えっ……じゃあ、私たちって表で生徒と雑談してるってことですか……?」
「まぁ、そうなるな」
「えぇ……」
これこそが丸女の面接の真相であり、西宮が合格した理由であった。
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