第152話 おみくじの排出率


寄り道はあったものの、集合場所に戻った4人は早速プレゼント交換を始めた。



「麗奈、ちょっとしたプレゼントがあるんだけど……」


「あら奇遇ね。私もあるわよ」


「えっ! ぼ、僕のは本当につまらないものだけど大丈夫かな……?」


「大丈夫よ。私のプレゼントも大したものではないわ」



何故かビジネスシーンのようなやりとりをした後、西宮は東堂の手を取って自分の手を被せた。

その手をゆっくりと握りしめて東堂に語り掛ける。



「それでも……このプレゼントにはあなたへの思いを込めておくわ」


「ありがとう、麗奈。プレゼントを見てもいいかな?」


「ええ」



西宮の行動と言葉を受け取って頬を赤らめる東堂。

そして彼女が手を引いた後に東堂の手のひらに残るのは一つのお守り。


――『安産祈願』


そう書かれていた。



「……麗奈? 僕はこれをどう受け止めればいいのかな?」


「私にも分からないわ。だって、私も受け止められなかったもの」


「ど、どゆこと? 自分で買ったんじゃないの……?」


「厳密には北条さんから貰ったものよ」



西宮はガチャなるものを説明すると次第に東堂の目は丸くなっていった。



「えぇ!? あれ、お守りのガチャもあったの!?」


「あら? あなたたちも回したの?」


「えーと……僕のプレゼントはこっち……」



東堂が2回目のガチャで手に入れた伝説の破魔矢。それは――



「……ロビンフッド? 全然日本関係ないけど効果はあるの?」


「魔を祓いたい気持ちは万国共通だよ」


「なるほど。じゃあ大事にするわね。 ……たぶん」



一方、南雲と北条。

傍目で東堂と西宮のやりとりを見る限り、南雲からもしょーもない矢が来そうだなと身構える北条。


しかし、当の南雲は自身満々である。



「ふっふっふ……茉希ちゃん。ワタシが渡す破魔矢がそんなに気になるかい?」


「あ、いや。そんなにハードルは上がってない」


「見て驚けい! これが伝説の……! 『卑弥呼の破魔矢』だッ!」


「卑弥呼!? あの人、弓使ってた!? そもそも戦うのか!?」



その矢は申し訳程度に勾玉が装飾されており卑弥呼風味を必死に醸し出している。

要するにしょーもない矢だった。



「茉希ちゃんはどんな伝説のお守りを手に入れたの?」


「こっちはそんなイロモノじゃないぞ。……ちょっと効果が遅効性なだけで」


「?」



そう言って北条が渡したのは『長寿祈願』のお守り。



「こ、これはッ……!? ん? どゆこと? 不老不死的な?」


「いや、特に意味は無いと思う。あと60年後くらいに効力を発揮し始める」


「じゃあ60年後に欲しかったかもー」


「それな」



一応持っている意味自体はあるので南雲は保管をしておく事にした。



「ちなみに、茉希ちゃんたちは自分用のお守りとかもあるの?」


「ほい、俺はこれを西宮から貰った」


北条は西宮から貰った『家内安全』のお守りを掲げる。


「えー、凄い茉希ちゃんっぽい! メチャクチャまともじゃん! 西宮さんのやつもまともなの?」


「私はこれよ」


隣から西宮が『無病息災』のお守りを見せに来た。


「え……麗奈。僕に『安産祈願』を渡したのに……?」


「やっぱり効果がありそうなものは手元に置いておきたさがあるわよね」



正論ではあるが東堂の胸中は非常に複雑な心境であった。



***


こうして再び集結した4人の目的は、



おみくじガチャよ」


「さっきからどんだけ運試しがしたいんだよ」


「やっぱ初詣と言えばこれでしょ! 参拝よりこっちのが面白いもん!」


「ゆーちゃん、それは、だいぶ罰当たりというか……」



前哨戦のガチャが終われば本番のガチャおみくじが始まる。

実際、こちらの方が明確にレアリティが提示されるエグめのシステムとなっている。


時を移さず同時に開いたおみくじの結果は……



「うっわぁ……凶かよ……」


「僕も凶だ……」


「え! 私も凶なんだけど! 巫女さーん、このガチャ壊れてますー!」



3人が凶を引いてざわつく状況でも西宮は冷静だった。



「やめなさい。まったく、こんなガチャ程度で一喜一憂するなんて馬鹿らしいわ」


「いや、お前もノリノリだっただろ。まさかお前も凶だったのか?」


「あなたたちと一緒にしないで頂戴。大吉よ」



西宮が堂々と出したおみくじを見て3人は驚愕する。



「え!? うそー!? すご!!」


「じゃあ僕らはシンプルに運が悪かったんだね」


「……ちょっと待て。お前その指どけろ」



北条は西宮の『大吉』の『吉』の部分を覆う西宮の指を動かした。



「大凶じゃねぇか!!」


「えぇ……僕、大凶は初めて見たかも……」


「まったく腹立たしいわ……!! こんなおみくじ如きで……!!」


「メチャクチャ感情動かされてるじゃん」



その後、運営こと巫女さんにガチャの排出率について聞きに行ったが相手にされなかったので大人しくおみくじを結んで帰った。



そして翌日、大凶女にはさっそく災いが舞い降りていた。



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