第151話 新年開運ガチャ


元旦から一夜明けた朝、いつものメンバーは駅に集合していた。



「あけましておめでとう。みんな、今年もよろしくね!」



新年の挨拶をしたのは東堂……ではなく、



「どうした西宮。新年からイメチェンしたのか?」


「いえ。新年早々舐められないように東堂さんのモノマネをしてみたわ」


「全然似てない。てか、その行動が既にあーちゃんを舐めてる」


「あ、あけましておめでとう。みんな今年もよろしくね!(本物)」



新年早々ギスり掛けた雰囲気を東堂が挨拶で誤魔化す。

本日集まった4人が向かったのは街外れの神社。


言わずもがな、初詣である。


西宮が手配した車で約1時間ほどかけて到着した。



「うわー。やっぱり人一杯いるねー。あーちゃん、手つなご!」


「そうだね。はい、ゆーちゃん。……れ、麗奈も繋ぐ?」


「ええ。じゃあ、私のこっちの手は北条さんと……」


「アホか、お前ら。バリケードじゃねぇんだから。4人で並んで手繋いだらクソ迷惑だろ」



人がごった返す神社で4両編成はマズいとの事で急遽連結が外されることに。



「まったく……そんなに私と2人きりで手を繋ぎたかったのね。いいわよ」


西宮が照れる演技を見せながら北条に手を差し出す。


「別になんでも良かったけど、そう言われたら急に手を繋ぐ気が失せたわ」


「めでたい日にも文句の多い女ね。……そこで私は革命的な案を思いついたわ」



3人はとりあえず西宮の指示通りに動いてみた。

東堂と南雲が並んで手を繋ぎ、その後ろで西宮と北条が同様に並んで手を繋ぐ。

そして、東堂と南雲が後ろ手に西宮と北条の手を繋ぐことによりフォーメーションが完成。


要するに四角形である。

これにより、邪魔にならず全員が要望通りに手を繋ぐ事が出来た。



「ふぅ……完璧ね」


「歩きにくいわ!!」



ちなみに、前後の連結部は右手と右手&左手と左手なので繋ぐと言うよりかは掴んでいる状態だった。

しかも距離感が絶妙で前列の人間に足をぶつけたり、とにかく歩きづらい。



「うーん……一旦、縦の連結は外そっかー」


「そうだね……はぐれないとは思うけど、一応集合場所だけ決めて置こう。北条、麗奈の事は任せたよ」



こうして4人はそれぞれ参拝の列に並び、当然その後はぐれた。



***


東堂南雲ペアとはぐれた2人は手を繋ぎながら集合場所に向かっていた。


「マジで先に集合場所決めて置いて良かったな」


「そうね。まぁ、あれはフラグにしかなってなかったけれど。あら……?」



やや人が少なくなってきたところで、西宮が不思議なものを見つけた。


――『目指せお守りマスター!! 激運・お守りガチャ!!』



「なにそれ。うさんくせー……」


「面白そうね。2人で買って交換しましょう」


「なんで交換? 出したやつそのまま使えよ」


「記念よ。いいから回すわよ。 ……ところでどうやって回すのかしら?」



ご丁寧に置いてある両替機で1000円を崩した北条が小銭を投入して西宮に先を譲る。

あきらかに誰も回してなさそうなガチャを意気揚々と回した西宮。


カコン、と落ちてきたカプセルに入ったお守りを北条はなんとも言えない表情で見る。

お守りを落とすのは縁起的にどうなんだろうかという疑問が湧いていた。



「はい。これはあなたのぶんよ。まだ開けないで」


「おう。ほんじゃ次は俺が回せばいいんだな」


出てきたカプセルを西宮に渡した北条は、一応先にカプセルの開け方を教えた。


「それじゃあ行くわよ。いっせーの……」


「で」


――カポッ



(西宮)『安産祈願』

(北条)『長寿祈願』



「「…………」」



なんとも言えないお守りに固まる2人。



「……あなたは私を孕ませたいの?」


「意味わからんわ。てか、お前のやつも何? 俺の余命ってそんなに短いのか?」


「もう一回やるわよ」


「……待て。これがこいつのやり口かもしれん。冷静に考えれば普通にお守りを買った方がいいぞ」



射幸心を煽るやり口に気づき2人は冷静になる。


…………と見せかけて、もう1回だけガチャを引いて集合場所へと向かった。



***


西宮北条ペアとはぐれた2人は手を繋ぎながら集合場所に向かっていた。


「麗奈は大丈夫かな……ほ、北条と変な事はしてないよね……?」


「流石に初詣ではやらかさないでしょ。むむっ……!」



やや人が少なくなってきたところで、南雲が不思議なものを見つけた。


――『魔を狩り尽くせ!! 激運・破魔矢ガチャ!!』



「ゆ、ゆーちゃん? まさか回さないよね?」


「えー! 一緒に回そうよ! 面白そうじゃん!」


「え、僕も回すの? しかもこの破魔矢キーホルダーって何……?」


「難しく考えなくていいんだよ! 縁起物って事で!」



二の句を聞く前にガチャを回す南雲。


カコン、と落ちてきたカプセルに入った破魔矢を東堂はなんとも言えない表情で見る。

縁起物を落とすのは縁起的にどうなんだろうかという疑問が湧いていた。



「じゃあ次はあーちゃん。同時に開けようね!」


「う、うん……」


そもそも破魔矢のバリエーションが分からない東堂は渋々ガチャを回す。


「それじゃあ行くよ! 出でよ! 最強の破魔矢!」


「最強……?」


――カポッ



(東堂)『那須与一の破魔矢』

(南雲)『源為朝の破魔矢』



「「…………」」



なんとも言えない破魔矢に固まる2人。



「えー!! こっちの奴が欲しかったのに!!」


「ゼウスの破魔矢!? え、破魔矢関係なくない!? というかゼウスって弓使うの!?」


「いいじゃん! めっちゃ強そー! 西宮さんとか喜ぶんじゃない?」


「たしかに! もう一回回そう!」



まんまと南雲の口車に乗せられた東堂は2人でもう一回だけガチャを引いて集合場所に向かった。




==============================


更新が遅れて申し訳ございません。

自身の都合により少しお休みを頂きました。


ここからはまた毎日更新するつもりです。

別途、連絡があれば近況ノートにて報告させて頂きます。


今年もよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る