第150話 年越しコラボ(コンプラ違反)


いよいよ大晦日を迎えた今夜。

それぞれが様々な過ごし方でのんびりと年越しを行う中、ストリーマーである南雲こと梅雨町リリィはこんな日でも配信業を行わなければならない。


とはいえ、流石に今日はキツめの企画とかではなく雑談が出来るゲームでリスナーとの会話を中心とした配信を行っている。



「いやー、みんなも今年おつかれー」



モンスターをハンティングするゲームを視聴者参加型でまったりやりながらコメントを読む梅雨町。

ちなみに、梅雨町はこのゲームを相当にやりこんでいる。

どの武器を使おうとノーダメ余裕というレベルなので視聴者が狩りたいモンスターを手伝う感じに。



「……って言うか、そうか。お正月とか働いている人も居るもんね。仕事納め出来ない人とかも居るのかな?」


『(コメント)自分は今日仕事納めでした! 元旦から仕事始めです!』


「うん。それ納めてないね。本当にお疲れ」


『(コメント)会社で配信見てまーす(泣き お正月を会社で迎えるとは思わんかったわ……』


「マジか……もう会社のPCにゲーム入れな? 今から一緒にやろっか」



基本的に梅雨町は配信中はローテンション気味なので返答も割と淡泊な返しが多い。


この落ち着いたトーンで淡々とプレイするのが梅雨町の魅力。

(一部のリスナーの意見です)


でも、たまに急にテンションが上がっちゃったり、プレイングがチンパンジーレベルになるギャップも最高!(一部のリスナーの意見です)


先輩しか勝たん!!(一部のリスナーの意見です)


以上、梅雨町推しの一部の意見を抜粋させて頂きました。



『(コメント)さっき夜咲よざきがリリィの配信凸るみたいなこと言ってたぞ』


「でもまぁ、よじライブはコンプライアンスとかめんどくさいだろうね」


『(コメント)なんか丸井月まるいるなちゃんはリリィちゃんの配信見ながら配信してるらしいよw』


「慕ってくれるのは嬉しいけど……ながら配信はダメだよって言ってあげて」



同業の方々もやはり本日は配信をしているらしい。

しかし、あちら様は企業所属の配信者なので個人勢に凸る際のコンプラは厳しい。

流石に今日はいきなり乱入してくる事は無いだろう。


……と、高を括っていると。


メンバー交代の際に不穏なメンツが入ってきた。


『まぁるいつきさんがINしました』

『卍夜咲卍さんがINしました』

『南宮さんがINしました』



「なんか来てるし……あの子たちさぁ……」


『(コメント)これ本物?w』

『(コメント)偽物でも奇跡だろwww』

『(コメント)おい、丸井いま歌ってるぞwww』



例の如く、梅雨町と丸井の絡みに大盛り上がりの視聴者たち。

なんと丸井はアポなし共演がNGなら配信しながら視聴者として参加してやろうという気概を見せていた。


乗り気ではなかったが梅雨町も配信者として視聴者の期待に応えるため、丸井の配信にコメントを書きにいく。



『(梅雨町リリィ)流石に歌唄いながらゲームやってる奴はいないよね?』


『(コメント)リリィ来てるwww』

『(コメント)すご。リリィちゃんもるなちゃんの配信見てるじゃん』

『(コメント)おたがいに動画みてるのやば』


「あっ、せんぱぁい♡ えへへ、バレちゃいました! またコラボしましょうね!」


『(梅雨町リリィ)いま実質コラボみたいになってるけど。まぁ、また今度ね』



丸井の配信も梅雨町の登場に盛り上がる。

彼女の方は歌がメインの配信で、段取りも決められているようなので梅雨町も邪魔をしないようにすぐ去った。


……しかし、丸井はゲームには参加する姿勢を崩さないらしい。


残りの2人はおそらく夜咲(本物)と南宮(おそらく西宮)という、本当に奇跡のメンツ。



そんな参加者の夜咲が選んだのはそこまで難しくないモンスター。

それぞれの武器が、


丸井:笛

夜咲:太刀

西宮:軽装ボウガン

梅雨町:片手剣


という、構成。

難しくないモンスターで上記の編成で何が起こるかと言うと……


梅雨町が落とし穴設置 ⇒モンスター拘束

丸井が演奏しながら攻撃 ⇒パーティ強化&モンスタースタン

西宮が麻痺弾を装填 ⇒モンスター拘束



ハイパーハメ技タイムである。

その後も、麻痺罠、閃光弾、睡眠弾、ギミックによるモンスターの転倒など……

決して大晦日にやる事では無い一方的な狩猟がそこにはあった。


だが、このフィールドには忘れてはならないもう一匹の凶悪モンスターが存在する。


『卍夜咲卍さんが力尽きました』

『卍夜咲卍さんが力尽きました』

『卍夜咲卍さんが力尽きました』


『ク エ ス ト に 失 敗 し ま し た』



この鉄壁の布陣を突破して見事なハットトリックを決めたのは夜咲星空よざきせいら

デビュー半年でそれなりの知名度を持つ彼女は伊達にプレイヤースキルPSで名を馳せた訳ではない。



「マジかー……これ、夜咲リスナー的にはどう見てるの……?」


『(コメント)激寒プレイを温めた夜咲は神』

『(コメント)これこれ。夜咲のこれがないと年は越せない』

『(コメント)夜咲のやらかしでしか得られない栄養素がある』


「君たち今度星空ちゃんとゲームやってみな? たぶん、栄養素に殺されるよ」



こうして、大盛況だったコラボ配信(コンプラ違反)はクエスト失敗に終わった。

大晦日までまだ時間はあるのでパーティの再募集を掛けると……


『卍夜咲卍さんがINしました』

『まぁるいつきさんがINしました』

『南宮さんがINしました』



「あのー。2回入んのやめてもらっていっすか? 概要欄呼んでもろて」



しかし、これにはコメント欄も大ウケで結局もう一回、夜咲リスナーに栄養補給する事になった。

それ以降は一時的に彼女たちをブロックリストに入れて募集を掛けた梅雨町。


当然、これが大量の切り抜き動画にされる事となる。


これにて1年を締めくくる梅雨町にとってはまさに今年を象徴する配信になった。


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