第145話 キス魔みてーな女
一人、猥談についていけなかった健全系女子の東堂。
なんとも言えない感情になったのは西宮である。
「ちょ、ちょっと待って……あなた、私の体を見て想像とかしたりしないの?」
「想像……とは?」
「それはセッ……」
「西宮さん? 直接言ったら……こう! だから」
NGワードが出そうになった所で南雲が割りばしを膝蹴りで粉砕した。
折れた割りばしは『次はお前の番やぞ』と西宮を見つめている。
なので西宮は出来るだけオブラートに包んで解説しようとした。
「東堂さんは私とデートしててムラムラした事はないの?」
「ムラムラ? よく分からないけど、モヤモヤはした事あるよ」
「多分それよ。その先にあなたが『シた』い事、その答えがあるはずよ」
「え、えっと……手を繋いで、抱きしめて……」
「うん、うん。それで?」
答えに近づいている、しかし西宮はもっとを先を促した。
突然始まったハラハラの性教育を全員が固唾を飲んで見守る。
「き、キスとかしたり……ッ!!」
「……それで?」
「そ、それで? え、その先ってあるの……?」
「……私の胸を揉んでみたいとかは?」
「ないよ! なんで胸を触ろうとするのかが分からないよ!」
ここで東堂は図らずとも巨乳目当てで西宮が好きという訳では無いことが判明した。
しかし、現代性教育の敗北を感じた西宮はここで匙を投げた。
「そ、そうよね……あなたは今度、自分の胸を揉んでみなさい。もしかしたら答えにたどり着けるかもしれないわ……」
「はい! Hな話題はもうおしまい! 次いくよー」
「えっ……H!? これHな話題だったの!?」
未だ罰ゲームも始まっていないのに既に犠牲者が2名出ている、
『私はいままで一度も〇〇したことがありません』ゲーム。
次の出題は西宮である。
「そうね……Hな話題と名指しは禁止、と……じゃあ」
西宮はチラリと北条を覗き見た。
(西宮のお題)
『他人に暴力を振るった経験』
「おい。南雲、これって西宮を殴ってた場合経験に含まれるのか?」
「いや……含まれないんじゃないかな?」
「暴行警察よ。今までの罪を罰ゲームで償いなさい!」
舌打ちをした2人と控えめに一ノ瀬が手を挙げた。
ちなみに彼女が暴行未遂を犯したのは十河の一件だ。
これで北条が-2Pt、南雲と一ノ瀬が-1Ptとなった。
「あと、美保。お前自覚持てな?」
「えぇ!? アタシのは正当防衛か姉貴を守るための不可抗力だろ!」
偽善で何度か暴行未遂を犯している美保も-1Ptされた。
そして、お次は一ノ瀬が出題する番になる。
優しい彼女はみんなのポイントが減らないような出題を探した。
「えーと……えーと。じゃ、じゃあ!」
(一ノ瀬のお題)
『2人以上と……
「あ、や、やっぱりちょっと増やしますね!」
(一ノ瀬のお題)
『3人以上の女性とキスした経験』
「紗弓ちゃんは優しいね。でも、三人は流石に……」
「おいおい、一ノ瀬。流石に居るワケねぇだろ、そんなキス魔みてーな女」
「私ですらまだその領域へと達してはいないわ。流石にね」
「……あ、あぶなー。2人だったらアウトだったよー。流石に危険だったのはワタシだけかな」
全員が安心した余裕のムードの中、一人沈黙貫く女が居た。
――北条茉希。その人である。
流石に誤魔化そう。北条はそう思った。
しかし、この状況が非常にマズいのはこのメンバーの中に北条とキスした人間が3人居るという事だ。
北条の脳内シミュレーターによると、
東堂:西宮とのキスを知っている
美保:南雲とのキスを知っている
西宮:自分とだけキスしたと思っている
南雲:自分とだけキスしたと思っている
つまり、2人とキスをしていて、美保+誰かとキスをしているという事にすれば辻褄が合う。
絶対に避けなければならないのは、その『誰か』がバレる事だ。
この間、約10秒。北条は先手を打って西宮にアイコンタクトを送る。
(絶対に言うな)
こういう時は意外と聡い西宮がコクリと頷く。
「お、俺も2人だから危なかったーッ!!」
「……待ちなさい。もう一人は誰なの?」
「美保ちゃんじゃない? 北条は泣きつかれたら断れなさそうだし」
「ちょっ……え? ご、ごめん。もしかして、あーちゃんって知ってるの?」
「……うん。北条から聞いたよ」
北条にとってひっじょーーーうにマズい展開となっている。
この会話は噛み合っているようで絶妙に噛み合っていない。
「そっか、茉希ちゃんから……でも、あーちゃん! 私、あーちゃんの事も大事で、好きだから!」
「う、うん? それはどういうタイミングの告白なの?」
「……おい、姉貴。さっきからどうにも会話が噛み合ってないように見えるんだけど。姉貴がキスしたのって、アタシと南雲だけだよな?」
「えっ」
「あれ? 東堂先輩なんで驚いて……茉希さんから話を聞いてたんじゃないんですか?」
嘘をついた北条は無事に罰ゲームが確定した。
しかし、実際は罰ゲームより酷い状況になる見込みである。
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