第146話 ゴッドハンド茉希
もはや万策尽きた北条はなされるがままに審判の時を待つ。
「正直に吐け。この中でアタシ以外で姉貴とキスしたことのある奴は誰だ」
「……はい」
「ゆーちゃん!?」
「私もよ」
「嘘だよね、茉希ちゃん……まさか、二股……?」
「ち、違う! こいつのはキステロみたいな奴で!!」
最早この際なんと罵らようと構わない。
しかし、南雲からの誤解だけは絶対に晴らさなければならない北条は腹を括った。
「……西宮とのキスは、不意打ちで無理やりされたんだ。お、俺が好きなのは南雲だけだから!!」
「茉希ちゃん……」
「わーお……ま、茉希さん大胆……」
「イライライラ……!」
北条が正直かつ大胆に告白した事により早々に誤解は溶けた。
むしろ、南雲とちょっといい雰囲気になっている。
ただ、忘れてはならない。
この女は先ほどキスの人数をチョロまかそうとしていたことを。
「北条さん……私とはお遊びだったの??」
「ややこしい事すんな! お前が俺で遊んでたみたいなもんだろ!」
「酷いわ……これはまた仲直りのキスが必要かしら?」
「イライライライライライラ……!!」
死んだ魚のような目でその光景を眺める東堂と、イラつきの臨界点が近い美保。
彼女たち関係各位には解消しなければならない疑問点がいくつか残っていた。
――そう、はっきり言って現状は『修羅場』なのだ。
①一ノ瀬⇒北条
「じゃあ、茉希さんと南雲先輩は付き合ってるんですねー」
「…………」
「えぇ!? 付き合ってないのにキスして……え、もしかしてセフ……」
「何言おうとしてんの!? 現状、俺はその……慰めて貰っただけというか……」
「?」
②東堂⇒南雲
「ごめん。北条がゆーちゃんに告白したのは分かるんだけど……」
「う、うん」
「僕とゆーちゃんの立ち位置って……どういう感じなの?」
「えーっとぉ…………はにゃ?」
「??」
③美保⇒西宮
「西宮さんは南雲が本命だって言ってたじゃん!! 嘘だったのか!?」
「嘘じゃないわ。本当よ」
「……うん? それじゃあなんで姉貴にキスしたの?」
「北条さんも好きだからよ」
「???」
とりあえず質問者の納得のいく回答は得られなかった模様。
そんな事はお構いなしに、回答内容が一番ヤバい南雲がこの修羅場からの脱出を試みる。
「と、とにかく!! 個々の原因追究はパーティー中にやる事じゃないよ! はい、茉希ちゃん。罰ゲームのカード引いて!」
「そ、そうだよなぁ!? あー、罰ゲームつれぇー!」
「そうね。さっさと引きなさい」
強引に話題を置き換えた回答者たち。
嫌疑の目が向けられる中、南雲がシャッフルしたデッキから北条が引いたカードは……
――『今回の出題者にキスをする』
「茉希さん……?」
「北条……?」
「姉貴……?」
「茉希ちゃん……?」
「北条さん……?」
「いやいやいや! 俺のせいじゃねぇよな!?」
まさかの神引きに困惑する一同。
やはりこの北条茉希という女はやる時はやる女なのだ。
「あ、あの。ところで……これってキスする場所は誰が決めるんですか?」
「出題者が決めれます!!」
「「「「「 !? 」」」」」
この時、全員に電流が走る。
欲に
この時点で北条の嫌疑は個々人の私欲によって一時的に帳消しにされる。
「じゃあ、茉希さん。あの、ほっぺたにお願いします」
ゲームに対するスタンスが変わった一ノ瀬は早急にキスを促す。
ちなみに彼女の本命は憧れの先輩である東堂である。
「お、おう」
「さ、モタモタしてねぇでさっさと回そうぜ。試行回数増やして絶対に姉貴とキスするぞ!」
まさか急かされると思っていなかった北条は一ノ瀬に短く軽いキスをした。
北条の4人目になった一ノ瀬だが、特に感想は無い。
現在、彼女の頭の中は次の出題内容をどうするかで一杯だった。
「……よし、じゃあ気を取り直して、」
「待ちなさい。この女、明確なルール違反を犯しているわ」
「あ、そうか。北条はキスした人数チョロまかしてたもんね」
色々とうやむやになったところで仕切り直したい北条だったが、西宮は余罪を見逃さなかった。
流石は丸女の犯罪件数一位の女。伊達ではない。
「んー……同じ出題者で2回罰ゲームしても楽しくないから-1Ptでもいい?」
「甘すぎる! 姉貴が全員に罰ゲームデッキから1ドローだろ!」
「でも、それやると茉希ちゃんがまたキス魔になるかもよ?」
「ま、また? 南雲、それはちょっと語弊が……」
「よし、やっぱ今のナシ! -1Ptで許してやる! 今後は嘘つくなよ!」
こうして無事、北条茉希の吊るし上げが終わる。
現在のポイントランキングは、
東堂・西宮が0Pt、南雲・美保・一ノ瀬が-1Pt、北条が-4Pt。
3人が出題した時点で-4Ptという北条のスコアを超えるものは現れるのだろうか。
ここからは罰ゲーム目当てで本当の蹴落とし合いが始まる。
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