第144話 クリスマス猥談系女子
クリスマスパーティーの当日。
それなりにしっかりとした役割分担をした結果、かなりまともな仕上がりを見せた。
まず、メインシェフは東堂。
これは単純に北条が、一体東堂はどういう調理法を行うのかを見てみたかったという点が大きい。
そして、これにより北条が東堂のアシスタントとなった。
次に、パーティーゲーム担当の南雲。
平日という事もあり、時間的にも1種のゲームくらいしか出来ない為、西宮はこの担当から外された。
では西宮の担当はと言うと、まさかの運搬担当である。
大人数の食材の買い出し、そして帰りの送迎を担当出来るのは西宮しかいない。
正確に言うと、西宮の執事とお手伝いさんだが。
最後にケーキ担当は、美味しいコーヒーを提供しつつもまったくコーヒーが注文されない事で有名なあの『喫茶 オリーブ』の店主の娘、一ノ瀬が持ってくる。
マスターは忙しい中でも娘に頼られたのが嬉しかったのか相当に気合が入っていた模様。
尚、担当が無い2名だが、北条の母である瑠美は珍味担当という謎の担当を自薦したので却下。
妹の美保は南雲担当というパーティーに関係のない役割だったので北条がシメた。
***
こうして、完璧な準備の甲斐あってパーティーは恙なく進行した。
ケーキも食べ終わり、ここまではどのご家庭でも見られるほのぼのとしたパーティーである。
ただし、家主は酔い潰れた。
問題が起こりうるとすればここから。
南雲が企画したパーティーゲームは未だ誰も知らされていない。
一応、東堂と北条が定めたガイドラインには抵触していないらしく、ゲーム内容は知らない方が面白いし公平とのことで秘匿されてきた。
では、その南雲が持ち込んだゲームはと言うと――
「パンパカパーン! 今から『私はいままで一度も〇〇したことがありません』をやりまーす!」
「あ? なんだそれ。勝手に一人で暴露してろ……あたっ!」
「ごめん、南雲。多分全員ルール知らないゲームだから解説を頼む。 ……つーか、ゲームなんだよな?」
「コホン! それではルール解説を……」
[ルール]
①出題者になった人は『今まで自分が経験した事がないこと』を一つ言う。
②その内容に対して出題者以外の人は経験済みであれば-1ポイント、経験がなければポイント減算なし。
③この流れを出題者を変えて順番に繰り返し、累計で-3ポイントに達した人はその都度罰ゲームとなる。
つまり、①で言う内容は②を加味して『自分が未経験だが相手が経験してそうなこと』を言うのがミソとなる。
ちなみに、このゲームは海外では定番のパーティーゲームらしい。
そして、罰ゲームは南雲が作ってきた罰ゲームデッキからカードを一枚ドローして決める。
とりあえずはこれを飽きるまでやる予定だそうだ。
「はい、じゃあ。サンプルにワタシからお題出すね? みんな正直に答えてね!」
(南雲のお題)
『女の子の胸を揉んだ経験』
「うぉい! そういう奴かよ!! あるワケねぇだろ!!」
「……はい。」
「あるわ」
「やべ……姉貴は女に入るのか?」
「は、入るよ! みほっち……まさか寝込みの茉希さんを……!」
と、このように上の結果なら東堂・西宮・美保は-1ポイント。
ちなみにこれは、南雲が女の子の胸を揉んだことが無いという事でもある。
もうお気づきの方はいらっしゃるでしょう。
そう、このゲーム……ある程度の狙い撃ちが出来るのだ。
本来は相手との理解度を深めるゲームだが、相手への理解度が高い場合にはちょっとした尋問ゲームにもなりうる。
しかも、現在暗黒微笑を浮かべている南雲は罰ゲームデッキ(全10種)にとっておきのカードを仕込んでおいた。
その神のカードの名は『今回の出題者にキスをする』である。
あとは東堂が-2ポイントになったら自分がトドメを刺すだけの簡単なお仕事である。
「このゲームのルール上、嘘はついちゃダメだからね!」
こうしてクリスマスに闇のゲームが始まった。
***
出題の順番はくじ引きの結果、
美保⇒西宮⇒一ノ瀬⇒北条⇒南雲⇒東堂
と、なった。最初の美保は時間を置かず速攻で出題をした。
「ま、まずはポイントよりも……安否確認だ!」
(美保のお題)
『北条茉希とのHの経験』
「うおおおぉい!? お前、酒でも飲んでのか!?」
「いや、姉貴。アタシは真剣だぞ。これは大事な事だから」
最初のお題からかっ飛ばしている美保だったが、その表情は真剣そのものである。
「てか、お前……これ、俺はどう答えればいいんだ……?」
「姉貴はほら。自分でシたことあるかどうかだな」
「あら、それは大変興味深いわね」
「いえっ……言えるわけねぇだろ!!」
妹のとんでもない要求に北条はレフェリーに直接抗議する。
「ま、まぁそうだね。次からは名指しは無しにしよっか!」
「……え? どゆこと? 今回はやんの?」
「じゃあ行くぞ! 姉貴の貞操警察だ! 姉貴との経験があるやつは正直に手を挙げろ!!」
半ば強引にゲームは始まり、参加者は静まり返る。
真っ赤な顔俯かせて、北条だけが控えめに手を挙げた。
「……ふぃー。よかった、よかった。流石に、な? 姉貴の貞操ヨシッ!」
「なんもよくねぇよ!! んなもん、俺らの年ならシたことあるに決まってんだろ!! 拷問か!!」
「ご、ごめん、みんな。僕はさっきからよく分かってないんだけど…… 『シた』っていうのは何の話??」
「「「「「えっ」」」」」
衝撃の事実が飛び交う『私はいままで一度も〇〇したことがありません』はまだ始まったばかりである。
現在、北条茉希のみ-1Pt。
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