第127話 ツイン二股システム side 南雲 優


茉希ちゃんとをちゅーして少し経った後、あーちゃんから『謝りたいから家に行っても良いかな?』というメッセージが来た。

まだ、あーちゃんと会うのはちょっと怖い気持ちもある。


だけど、ちゃんと話し合いたい気持ちの方が強いから、ワタシはそのメッセージに了解の返事をした。



「あーちゃんが謝りに家に来るみたい」


「そ、そうか。良かったな。仲直り出来そうじゃん」


「……うん。ありがと、茉希ちゃん」



なんとも言えない空気の中、茉希ちゃんは帰り支度を始めた。

玄関で靴を履いて扉に手を掛けた茉希ちゃんが振り返る。



「……そうだ、東堂が謝るんだったら、南雲も謝っとけよ。それでお互い様ってのが一番丸いだろ?」


「……うん! そうする!」


「おう。それじゃ、頑張って」



アドバイスと激励くれた茉希ちゃんはせわしなく帰った。


閉じた扉を少しの間見つめたワタシはあーちゃんと会うためのをする。

服のシワを確認し、匂いを確かめ……



(……あれ? これってなんか浮、気……ち、違う! 親友を慰めてただけ!)



何故かワタシは心の中で弁解をする。

茉希ちゃんが帰った後も、なんとも言えない空気はまだ漂っていた。



***


しばらくした後にあーちゃんが家に来た。

ちなみに、ワタシは服を着替えたけど他意はない。



「ゆーちゃん。ごめんなさい。今日は僕が言い過ぎたよ」


「ううん! ワタシこそごめん! ……自分勝手だった」


「これで仲直り、かな?」


「うん! 喧嘩はおしまい!」



お互いに謝って仲直りと喧嘩の終わりを宣言した。

ワタシも気づいてるけど、あーちゃんもきっと気づいてる。


……この宣言だけじゃ根本的な解決はしてない。


でも、ワタシがそこに触れないように、あーちゃんもそこには触れてこないだろう。



――そう思っていた。



「ゆーちゃんに聞いて欲しい事があるんだ。これはゆーちゃんに辛い話になるかもしれないけど、それでも聞いて欲しい。ダメかな?」


「…………」



また現状維持の日常が始まる、そんな事を考えていたワタシには寝耳に水だった。

だから、すぐに答えは出せなかった。


それを察してくれたあーちゃんは静かに待ってくれている。


覚悟を決め、

…………る事なんて出来るワケない。

たぶん、この関係の終了を宣告されたら泣くに決まってる。



それでも、

これはもう……遅いか早いかの問題でしかない。



(そっか、ワタシ。とっくにダメなのは分かってたんだ……)



ずるずるとあーちゃんにしがみついてたけど、内心ではもう諦めてたのかもしれない。

どうやっても西宮さんには勝てないって。


たくさんの思いは巡り、浮かんでは消えていく。


あぁ、もう言わる前から泣いてるじゃん。



「……ッ、うん……。言って、あーちゃん」



ワタシは断頭台に首を添えた。



「…………あの、えーと。話す前から泣かれると非常に言い出しづらい事なのですが……」


(……あれ? なんかあーちゃんのノリがギャグ路線のような……?)



一旦、断頭台から首を持ち上げる。



「……続けて?」


「う、うん。あのね。ぼ、僕はゆーちゃんの事を大切に想ってる。けど、好きになったのは麗奈なんだ」



少し引いた涙がまた溢れてくる。



「で、でもね! これは、その、麗奈から認可が降りたんだけど……麗奈が好きでもゆーちゃんと今の関係を続けていい?」


「……???」



溢れそうだった涙がまた引いた。



「ど、どゆこと……? 西宮さんは好きなまま、ワタシはキープってかんじ?」


「そ、そういうことになるよね……!」


「それって、仮に西宮さんと付き合ったらどうなるの……?」


「そ、それでもゆーちゃんと付き合って……いいそうです!」



ど ゆ こ と ? ?



冷静に考えよう、あーちゃんが何を言っているのか。

と、言うかこんな頭のおかしい事を言うのは西宮さんなワケだから……


(つ、つまりは現状滑り止め、いずれは妾ってこと!?)


だ、だけど、待つんだ、落ち着けワタシ!

今の時点であーちゃんはまだ西宮さんと付き合ってない。

なのにワタシのアタックは拒否しないという謎の好条件。



(これは逆にチャンスなのではッ!?)



ワタシは断頭台を蹴り飛ばした。



「ちょ、超おっけーです! ワタシもそれでいい! あーちゃんと浮気しますッ!!」


「う、浮気!? そ、そういうことになるのか……で、でも僕が麗奈と付き合うまでダメだから!」


「うんうん、ウンウン。全然ダイジョブ。ラインはしっかり守るから! ちなみに、が浮気なの??」


「そ、それは……流石に、いい雰囲気でとかは、もう浮気かな……」


「……うん?」



……あるぇ?



「……ちゅ、ちゅーはしていい!?」


「ぜ、絶対ダメだよ! それは確実に浮気だよ……」



ほほぅ…………、つまり?


(ワタシは茉希ちゃんと浮気してる……って、ことーーーッ!?)


ワタシは小さい頃に何度もあーちゃんとちゅーをしてた為、仲良し同士ならちゅーは全然OK!だと思っていた。


気まずそうに二股の承諾を取りに来たあーちゃんは思いもしないだろう。

まさかワタシの方が先に二股していたなんて……!!



「はわわ……はわわ……小生はなんと罪深き事を……」


「ゆ、ゆーちゃん?」



でも、流石に『あーちゃんの妾になれたんで茉希ちゃんはポイっ』はクズ過ぎる。

結局この関係は続けるしかない……!


それに、わ、ワタシ自身、茉希ちゃんとのちゅーは嫌じゃなかった。

……あれ? もしかしてワタシってクz――



「だ、大丈夫! ワタシはふ、二股でも大丈夫だから!」


「そ、そうなんだ……!? 意外だったよ……ゆーちゃんは絶対に二股とかダメって言うかと思ってたから」


「……ちなみに、あーちゃんは二股についてどう思う?」


「正直、まだ僕は抵抗あるかな……」



(ですよねーーー! ワタシだって二股だって分かってたら、もうちょっと抵抗あったもん!)



「で、でもね。ほら。もう起きちゃったことはしょうがないからね、二股するしかないね!」


「そ、そうだね。じゃあ、ゆーちゃん。これからもよろしくね?」


「うん!」



ごめんね、あーちゃん。

ワタシが気にしてるのはの二股じゃないんだ……


でも、こうなったからにはワタシもう……二股しますッ!!



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