第120話 【急浮上】この人もおかしい説
放課後、教室には何人かの生徒とバイトで抜けた東堂以外の3人が居た。
「……俺さ。東堂の姉貴たちを見てまともじゃねぇよ! って、思ったんだわ」
「ええ。まぁ事実、ユニークの枠組みには収まらなかったものね」
「でもさ。よくよく考えてみたら東堂も結構まともではない気がしてきたんだけど……どう思う?」
「なるほど……いい着眼点ね。流石。その目つきは悪いだけではないと」
「やかましいわ」
かれこれ出会って半年以上経ったが、東堂のプライベートというものは一切の謎に包まれていた。
北条と西宮は東堂の趣味もわからないし、学校から帰った後にバイト以外は何をしているのかも良く分かっていない。
そこで北条の頭の中にはある可能性が浮上した。
――こいつもかなりの変人なのでは?
「と、言う事で今回は専門家の2人を呼んでいるわ」
「2人……? お前まさか……!?」
北条の頭に赤髪と青髪の残像が
「ワ タ シ で す !」
「……あ、そっち。
まずは東堂さんの専属幼馴染こと南雲優氏。そして……
「私 で す 」
「うおぃ! いちいち後ろから出てくんな! てか、学校に不審者入り込んでんぞ!」
北条の背後からヌルっと現れたのは内偵調査のプロ、五味渕麻里奈氏。
という事で本日は、この最強犯罪者予備軍のお二人をお招きした形で東堂明里の謎を解き明かしていく会が催された。
「では五味渕。資料だけ置いて下がりなさい」
「かしこまりました」
「帰るんかい……なんで出てきたんだよ……」
今回の調査結果の資料を置いて五味渕は忽然と姿を消した。
そして彼女が置いていった資料を西宮が展開して全員で閲覧をする。
東堂明里 誕生日10月10日 血液型AB型
[身長]175cm
[体じゅ……
「おい、流石に体重とスリーサイズは伏せて差し上げろ」
「そうね。これを見ていいのは見られる覚悟のある女だけよ」
「ん? でもこれってまだ一般常識だよね?」
「「…………」」
やはり専門家ともなると一般の方とは多少見識が異なるらしい。
[好きなもの]多数(博愛主義者のようです)
[嫌いなもの]特になし
「……そんなことあるか? 人間なら誰しも好き嫌いはあるだろ」
「ワタシもあーちゃんが嫌いなものって見たこと無いかな」
「人間性の欠如が見られるわね」
[趣味]旅行、散歩
[特技]鳥を呼べるらしいです
「あーちゃんは暇なときは大体お散歩してるイメージあるね」
「女漁り以外に趣味あったんだな。だからアイツ異様に店とか地理に詳しいのか」
「……誰も特技についてはツッコまないのね。かなりのユニークスキルを所持しているのだけど」
基本的に何でもそつなくこなす東堂の特技は『全部』と言っても差し支えないのだが、その中でもお気に入りなのが鳥を呼ぶことらしい。
ちなみに原理は謎。
「どう? ここまででおかしい点はあるかしら?」
「はいはい! 好きな幼馴染の項目がありません!」
「そんなピンポイントな項目は存在しないわ。次」
「うーん? なんつーか、スパイがでっち上げたみたいなマジで当たり障りのないプロフィールだよな」
この時点で既に彼女たちの中からは東堂が真っ当な人間であるという可能性は排除されていた。
「ま、まさかあーちゃんは組織の人間ってこと!?」
「可能性は0じゃないわね」
「趣味の散歩って、つまり深夜徘徊ってことだろ? 怪しいだろ」
「そ、そういえば! あーちゃんが鳥呼びの特技を見せてくれた時に鳥の足に何かついていた気が……!」
そう考える始めるとそうにしか思えなくなってしまった3人。
こうして今日も東堂の知らない所で彼女の虚像が作り込まれていくのである。
***
――翌日。
「あーちゃん! ワタシはどんな事があってもあーちゃんの味方だから!」
「ゆ、ゆーちゃん? どうしたの急に?」
「捜査の進捗はどうなの? この街にはいつまで滞在出来るのかしら?」
「ごめん麗奈、話がまったく見えないんだけど……」
「安心しろ。俺は何も知らない。俺はなんの関わりもないから頼むから巻き込まないでくれ」
「いや、僕も何も知らないし僕は一体何に巻き込まれてるの……?」
通学路にて一般人が朝からおかしい人たちに絡まれていた。
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