第70話 仲良し4人組(笑)
文化祭を目前に控えた今日は4人で当日の予定を決めていた。
1-Aの勤務シフトは前半・中間・後半の3つに分かれている。
9時に開催されてからは各シフト2時間おきに交代という仕組みだ。
東堂と南雲は前半のシフト、北条と西宮は後半のシフトに組み込まれた。
『丸井コレクション』が開催されるのは中間のシフトのタイミングなので4人で参加する予定だ。
と、言っても3人は主にサポートだが。
尚、
そんな事情の中、彼女たちはそれぞれの思いを胸に腹の探り合いをしていた。
「北条、ちょっとこっちに……(小声」
「あ? なんだよ」
「僕は中間のシフトの時間にしか麗奈と一緒に文化祭を回るタイミングが無いんだ。だから、ゆーちゃんの事をお願いできないかな?」
「……ふーん。なるほど。俺が南雲と二人でって事か……わかった」
平然を装っている北条であったが内心ではガッツポーズである。
東堂は東堂で異常にレスポンスが早い北条に感謝をしていた。
談合が成立したところで東堂が早速西宮に声を掛けようとした、その時。
「れい……」
「あ、あーちゃん! 当日は一緒に文化祭回ろ? 中間と後半、空いてるよね!」
南雲が先にそれを制した。
なんとかして東堂と一緒に回ろうと南雲も必死であった。
「えーっと……中間は……そう! 北条がゆーちゃんと一緒に回りたいって!」
「おい! 急に意味深な感じにするのやめろ!」
東堂は都合のいい理由として北条を使っただけだったが、北条としては冷や汗もののキラーパスだった。
「僕は中間のシフトに麗奈と一緒に回りたいかなぁ……なんて?」
「あなたたち……4人で一緒に回れば良いわけではないの?」
「「「…………」」」
西宮のマジレス一閃に言葉を失う3人。
それを言われたらもう4人で回らない理由を探す方が難しい。
3人の思惑としてはどうしても複雑な心境になり、視線を彷徨わせる。
「ちょっ、ちょっと! 西宮さん集合!(小声」
「なにかしら」
「ワタシはあーちゃんと二人きりで一緒に回りたいから協力して欲しいんだけど!」
「なるほど。完全に理解したわ」
こちらの談合も終了し、二人が解散した瞬間。
「私は北条さんと二人きりでご飯が食べたいわ」
「いや! 露骨すぎんだろ! こっちは目の前でひそひそ話見てんだよ!」
「わ、わかった! じゃあもうみんなで回ろう! 僕らはやっぱり4人じゃないとね!」
最終的に日和った東堂は良い話風にまとめて中間のシフトの話は纏まった。
そうなってくると会話は前半シフト組と後半シフト組の話にも発展する。
「では、前半は北条さんと私でイチャラブデートという事でいいのかしら?」
「……北条?」
「変な文言を使うな! ややこしくなるだろうが!」
仲良し空気に一瞬でヒビが入る。
西宮は知らず知らずのうちに東堂に言葉のナイフを刺していた。
「ほら! あっちはあっちでお楽しみみたいだからワタシたちもラブラブしよー!」
「……ごふっ」
「北条!?」
南雲によって東堂とおそろのナイフが北条にも添えられた。
更に深い亀裂が入ったところで北条は慌てて補足を入れる。
「い、いや。西宮とイチャラブってのがキツすぎて、な!」
「『な!』じゃないわよ。絶対にあなたを堕として見せるから覚悟なさい」
最終的には北条が西宮にナイフを贈呈してフィニッシュ。
混沌ここに極まれり。
「北条。僕は、し、信じてるからね!」
「噛むなよ! ちょっと揺らいでんじゃねぇか!」
「安心して! ワタシは絶対にあーちゃんを裏切らないから!」
結局、誰が得をして、誰が泣きを見るのか。
後輩組、教師陣を交えた波乱の文化祭がついに始まる。
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