第68話 最強西宮決定戦 side 西宮 麗奈
『丸井コレクション』。
丸井百合ヶ咲女学園が主催する文化祭のイベントらしい。
学園関係者なら誰もが参加可能。
趣旨は明確。
――もっとも可愛いヤツが優勝。
と、のことだ。
東堂さんから聞いた概要では、自由なファッションで体育館に特設されたランウェイを歩くだけの簡単なイベントらしい。
最近は座るだけだの、歩くだけだのと侮られている気がしてならないわ。
投票は学校関係者だけでなく、外部からの観覧者も参加出来るみたいね。
結果発表は上位3名のみが公表される為、えげつない放送事故にはちゃんと配慮されていた。
いくら私でも自分の票数が3票と公表されたらショックで
今日はそんなイベントに参加する為の話し合いを4人で行っている。
最近の彼女たちは私に対する扱いが雑で、私のクールビューティー担当としての矜持には瑕がついていた。
なので本日私は尊厳を取り戻すために、彼女たちにある宿題を出していた。
「……では、始めましょうか。第一回『僕とワタシと俺が考えた最強の西宮決定戦』、開幕よ!」
「麗奈! 僕はたくさん考えてきたよ!」
「ごめんー あんまりおもしろいのは思いつかなかったよ」
「あれ? ウケ狙いだったか? 真面目に考えてきちまった」
「変な衣装を着せたその時は来年まで震えて待ちなさい」
彼女たちには自身も表舞台に晒されるつもりで臨んで欲しい。
被害者としては生半な気持ちで着せ替えごっごを堪能するつもりはない。
ただ、この会議には私にとってのメリットもある。
それは、彼女たちが求める『私』を知ることが出来るという事。
ガチレズハーレムを作る為に今日は彼女たちの性癖を暴いていこうと思う。
***
(エントリーNo.1 東堂さん)
私は彼女が選ぶであろうものに対してはある程度の信頼を置いていた。
しかし、そんな私の信頼はいとも簡単にに裏切られる事となった。
「あーちゃん? ふざけてる? というか……ふざけてる?」
「うっわぁ……お前、なんかリアルすぎて引くわ……」
「い、いや! ほら! 趣旨としては間違ってないよねっ!?」
彼女が選んだのはゆったりとしたサイズのYシャツ1枚のみで下はショーツのみ。
所謂『彼シャツ』というやつかしら。
「あなた……私にこの格好でランウェイ歩けって正気じゃないと思うのだけど……?」
彼女は人前で恋人を半裸で歩かせたい願望でもあるのだろうか?
「でっ、でも可愛いよね? 素材の味が一番活きてるよね!?」
「下着合わせて布3枚……もうほぼ素材しか残ってねぇんだわ」
「それで票数入らなかった場合の素材の気持ちを考えた事はあるのかしら?」
「……はっ! 今度あーちゃんのベッドに忍び込むときこの格好で……」
服はともかく、とりあえずは東堂さんがムッツリである事は分かった。
(エントリーNo.2 南雲さん)
彼女に関してはおそらくまだ私の知らない謎も多く、内面には闇を抱えている以上その予想は困難を極める。
そんな彼女が持ってきた服はこれまた予想外のものだった。
「なんだこれ? ドレスか? 露出多めだけど割と普通だな」
「なんか麗奈お嬢様って感じだね」
「こっ……、これは……!!」
彼女が持ってきたのは名作百合ゲームである、
『転生した悪役令嬢がメインヒロインを全員堕としてガチレズハーレムを作ってしまった件』
に出てくる主人公である悪役令嬢の衣装。
「コスプレなんだけど、西宮さんとか似合いそうじゃん。小悪党とか」
「一言余計よ。でもこれは素晴らしいわ! 作中の名シーンを再現したくなるわね」
「あ、ごめん。ゲームの内容は知らなーい」
「え…………」
一瞬で会話の熱が冷めた。
とりあえず、彼女はサブカルに理解がある事だけは分かった。
(エントリーNo.3 北条さん)
彼女は先ほどの会話を聞く限り真面目に考えてきたという発言をしていた。
なんだかんだで一番の常識人の彼女が選んだ服が、これがまた……。
「なんだろうかこれは……まともに着込んでるのに僕のやつよりも……」
「西宮さんって普通の服着るだけでセンシティブになる時あるよね」
「……なにかしらこれは? 団地妻?」
タートルネックのノースリーブセーターにタイト気味のスカート。
これにエプロンをつけたらそれはもう完全に人妻なんだけども。
「うーん。素体が悪かったか」
「刮目なさい。これが内なるあなたの欲望よ」
「お前はサキュバスか」
北条さんからは人妻愛好家の可能性を発掘した。
***
こうして性癖大収穫祭は盛況に終わった。
第一回大会の方は南雲さんが優勝。今後は是非、連覇を狙って欲しい。
その後、南雲さんのドレスをベースに東堂さんと百合先生が調整をして、北条さんがメイクを担当することになった。
私の為に彼女たちが頑張っているのを見るのは心が満たされる気分だわ。
まぁそうね、じゃあその努力に報いる為に。
私も当日は真面目にやってあげましょうか。
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