第61話 メンヘラサミット
「あーちゃん! ま、マズいよっ! どーしよ!?」
「おはよう……ゆーちゃん。昨日は大会お疲れ様……」
「応援ありがとー! でも、問題発生だよ!」
「うん……ごめん。話は後で聞くから……とりあえず顔洗ってきて良いかな……」
早朝から東堂はアパートの自室に侵入してきた人物の対応に迫られるという問題が発生していた。
正確には自室というよりは寝床まで侵入していた為、寝起きドッキリ状態だった。
「ふぅ……それで? 問題って、何か起きたの?」
顔を洗って軽くセットをしてきた東堂が帰ってきた。
東堂の枕に顔を埋めていた南雲が体を起こす。
「実は昨日の大会で副賞を貰って……それが『焼肉券』だったんだよ!!」
「あー、そうだったね。オフ会やるって話をしてたっけ?」
「そう……でも、どう考えても
大会の結果発表時に大会特別賞の内容も発表され、悪魔丸井は配信の場を借りてオフ会の約束をした。
夜咲もこれを了承したので完全に外堀の埋まった南雲は場の雰囲気に押し切られて賛同をしてしまった。
そして配信が終わった後に滝のような冷や汗を流した結果、現在に至る。
「意外と会ってみたら普通の人かもよ? 気が合ったりして……」
「絶対ヤバいヤツだよっ!! 自宅とか特定されて気づいたら家に上がり込んで来るタイプだよ!!」
「いやぁ……気は合うと思うけどなぁ」
東堂は現在の自身の状況と照らし合わせて遠い目をした。
余談ではあるが、東堂がこの夏休み中に寝起きドッキリを受けた回数は既に片手では数えられない回数である。
「あーちゃん……替え玉って頼めないかな……?」
「声でバレるでしょ。熱狂的なファンなら尚更だよ」
「うぅー……全裸で迫ってきたらどうしよ……」
「流石にそれはないんじゃ……だってほら、僕もそこまでの経験はしてないし」
東堂の中で丸井は『ゆーちゃん2号店』になっていた。
***
「
『……十河、あなた何時だと思ってますの?』
「先輩とオフ会の約束したよ!!」
『そう、おめでとう。それではごきげんよう』
「で、ね!?」
『続きは起きた後にして頂けるかしら……?』
早朝から十河の鬼の電凸で叩き起こされた杏樹は時間変更を懇願する。
普通に却下された為、なんだかんだ面倒見の良い杏樹はそのまま話を聞いた。
「先輩のスケジュールの都合上、オフ会は明日になったんだけど……」
『明日……? それって、梅雨町さんは『いきなり明日は無理だよね』とか言ってなかったかしら?』
「良く分かったね。先輩が今日って言ったら今日でも行くに決まってるのにね」
『……それ、絶対梅雨町さんは乗り気じゃないですわよ』
杏樹には引き攣った笑みを浮かべる梅雨町の顔が浮かんだ。
そんなビジネス同意などまるで意に介さず、ウキウキの友人は明日の服装の話題に移る。
「当日の服、どうしようかな!? 杏樹も決めるの手伝って!」
『お得意の全裸でいいんじゃないかしら』
「!? そうか、その手が……」
『絶対にやめなさい。真に受けないで頂戴』
この十河という女は本当にやりかねないので杏樹は服選びは手伝う事にした。
不肖の友人が梅雨町にご迷惑をお掛けしないように、と。
それはそれとして、杏樹はふともう一名の事も思い出す。
『夜咲さん……でしたっけ? その方のスケジュールは大丈夫だったのかしら?』
「あー、なんか来れるって言ってた気がするけど、正直どうでもいいよね」
『鬼畜ですわね……同じチームだったでしょうに……』
***
そして、噂の夜咲はと言うと。
「リリィちゃん、リリィちゃん、リリィちゃん、リリィちゃん、リリィちゃん……」
自分に向かって叫ぶ梅雨町の例のシーンを一生リピっていた。
吊り橋効果も相まって、見事に梅雨町沼にハマった夜咲も無事ヘラる。
例に漏れず夜咲もまた全裸だった。
何故か梅雨町の狂信者は全身で梅雨町成分を摂取したがるらしい。
こうして、ヤベー奴のみで構成されたメンヘラ女子会は明日開催される模様。
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