第36話 基本、会議は踊るものである
「えー、本日はお日柄も良く、お集まり頂いた皆さ……」
「さっさと本題に入りなさい」
「ちょくちょく出てくるお前のスピーチはなんなんだ」
本日は南雲の誕生日プレゼントを買う為に南雲以外の3人が百貨店にあるカフェに集まっていた。
3人で贈る南雲へのプレゼントを相談し、あーでもない、こーでもないとする会合である。
「東堂は毎年何を贈ってたんだ?」
「花を贈ってたよ」
「毎年……? パターンの乏しい女ね」
「いや! 僕にも考えがあって……その、形として残るものだとゆーちゃんが大切にしすぎちゃうでしょ?」
「まぁ、それはそうだろうな。国宝みたいに保管しそうだもんな」
「今回はそういう制限はないと思うから。皆の忌憚のない意見をお願いするよ」
東堂が意見を募ると早速、綺麗な姿勢で西宮が挙手をする。
「どうぞ、麗奈」
「恥ずかしいから挙手はやめろ」
「私がキーホルダーを渡した時、彼女は難色を示したのだけど。避けた方が良いものはあるのかしら?」
「あー……。詳しくは言えないんだけど、ゲーミンググッズとかは止めた方がいいかな。ちなみにサブカルとかが嫌いって訳じゃないよ」
「なるほど、良かったわ。私が渡したキーホルダーは迷惑じゃなかったのね」
安心した西宮は自分の鞄にもついているお揃いのキーホルダーを指でつつく。
東堂は自分の鞄についている南雲のキーホルダーを見て冷や汗を流していた。
「アイツ、化粧品とかポーチには興味無さそうだよな」
「そうだね。香水とかなら使うと思うけど、僕はアロマキャンドルとかバスボムの方が喜んで貰えそうな気がするよ」
スマホを見ながら真剣に考えている北条も意見を出す。
恋心を抱いた相手へ贈るプレゼントなのだからそれも当然だろう。
しかし、この時の北条は考えに集中し過ぎていた。
「……あー、確かに。アイツん家の風呂
「「え」」
「ん……? あっ……!」
自然な流れで口を滑らせ焦る北条。
目を泳がせる北条に二人は間違いなくデートで何かあった事を察した。
「北条? ……あの日のデートプランってゆーちゃんの家とか入ってたっけ?」
「あー! いや、雨で濡れたからちょっと休んでいかないかって流れになって!」
「ちょっと休憩でお風呂に入るってあなた、ラブホじゃないんだから」
「ゆーちゃんの家って確か駅から少し離れてるよね? ……泊まったって事?」
「友達同士のお泊りがしたいってアイツが言ってたから!」
西宮は友達同士のお泊りなるものに目を輝かせていたが、東堂は自身の記憶からある疑問が浮かぶ。
「実は僕も同じような流れでゆーちゃんに誘われたんだけどさ。その時は僕のパジャマと下着まで用意してて……」
「ほ、ほーん……」
「めもめも……」
「布団は無いから同じベッドで寝ようって言われたから帰ったんだけど、どうだった?」
「いや、まぁ、普通に一緒に寝たぞ……?」
「す、凄いわね、お泊り会……大体どこまでヤるものなのかしら?」
「別に何もしてねぇよ!」
「なるほどね……ん?」
興奮する西宮を尻目に、東堂はスマホを弄りながら何かを見ていた。
「……北条。ちょうど今、僕の後輩からよく分からない写真が送られてきたんだけど見る?」
「……? なんだよ急に」
東堂のスマホには北条と南雲のラブラブプリントシールの写真があった。
スマホを渡された北条と覗き見した西宮は固まる。
「つ、付き合ってるとかって訳ではないのよね?」
「まぁ……ゆーちゃんなら仲のいい子にはこんな感じだよ」
まさか後輩たちの間で拡散されているのだろうか。
北条はどうゆう経緯で東堂の後輩がこの写真を入手したのかを考えていた。
「東堂。お前って美保と知り合いだったのか?」
「美保? これを送ってくれたのは別の子だけど」
「……あぁ、分かったかも。もしかして一ノ瀬って子か?」
「そうそう。知ってるんだ?」
「美保ってのは俺の妹だ。たしか一ノ瀬って子が唯一の友達だったはずなんだよな」
「あなた……妹まで友達が少ないのね……」
「お前が言うな」
画像の発信源を特定した北条は拡散されている訳ではない事に一先ず安心をした。
とりあえず、帰ったら妹をシバくことも確定した。
「一応言っとくけど。ただ普通に遊んで、その後お泊り会をしただけだ。特に何もなかったぞ。お前たちの方こそどうだったんだよ?」
あまり掘り下げられても困る北条は平静を装って話題を変えた。
「東堂さんがエロ本を拝借して怒られたわ」
「は……? 何やってたのお前ら」
「ちょっ……、
こちらも、あまり掘り下げらても困る東堂が軌道修正を装って話題を変える。
「と、とりあえず、アロマキャンドル、バスボムあたりを1回見に行こうか」
「そうだな」
「これで好感度+15ね」
結局、無駄話8割の上に会議は纏まらなかった。
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