第35話 狂気の政治家志望 side ???
「最近なんかさらに目つき悪くなってるよねー」
「しーっ! 本人聞こえるよ!」
あいつらは隠す気あんのか?
これ以上、この生まれつき悪い目つきを更に悪くするような行動は控えてほしい。
こちとら最近、気が気でないのだ。
「ほ、北条さん……。怒っているとこ悪いんだけど……」
クラスメイトが恐る恐るといった様子で声を掛けてくる。
「あ? 別に怒ってはねぇよ」
「ご、ごめんなさい! 一ノ瀬さんが呼んでて……」
「ん? もうそんな時間か。ビビらせてごめん。伝えてくれてありがとな」
気づけば放課後になっていて、教室の前では友人が手を振っていた。
鞄を肩に担いで彼女の元へと行く。
「今日はいつにも増して目つきが悪いねー!」
「うざ」
「はいはい。じゃあ、帰ろっか、みほっち!」
***
北条の血筋に掛けられた呪いは厄介で、アタシに気兼ねなく話しかける人間は少ない。
家族以外でそれが出来るのは友人か変人かのどちらかだろう。
ちなみに一緒に下校している彼女、一ノ瀬紗弓は両者である。
「何か嫌な事でもあったの?」
「あ? 別にねーけど」
「当ててあげよっか?」
ニマニマと笑う彼女はこの上なくウザい。
ここ数年で知り合った仲ではあるが、彼女はアタシの事情にはそれなりに詳しかった。
「アタシの交友関係知ってれば大体分かんだろ」
「まぁねー。お姉さんとなにかあったの?」
「最近姉貴の様子がおかしくて、机の中漁ったらこれが出てきた」
「いや、勝手に漁っちゃダメでしょ」
アタシはスマホで撮影した証拠写真を彼女に送信する。
それは、どこの馬の骨ともわからない女にキスされる姉貴が写ったプリントシールだった。
「わーお。仲良しさんだ」
「いや、これはどうみても犯罪だろ」
「……どゆこと?」
「妹が居る姉に手を出すのは国の法律で認められていない」
「そうなの!?」
アタシはゆっくりと頷く。
テストでは万年赤点で脳が筋繊維で出来ているコイツには法律とかは分からないだろう。
法律という言葉すら知らない可能性も考えられる。
「……いずれ改正する予定だ。アタシが」
「あ、なんだみほっちの妄想か」
「覚えとけよ。すぐに実現してやるから」
故にアタシはもっと勉強をして政治家になろうと思っている。
この世のあるゆる害悪から姉貴を守るという大義を果たす為に。
「この女の素性を調べる方法ねぇかな」
「やめときなよー、ただの友達かもしれないでしょ」
「いーや。これは犯罪者の目だ。人を
「いや、目瞑ってるじゃん……」
「顔つきで分かんだよ。こういう奴は大体、涙を見せて色仕掛けしてくるんだ。まぁ、ウチの姉貴にその手は通用しねぇけどな!」
「ふーん……」
アタシの話を興味無さそうに流す一ノ瀬はスマホを弄っていた。
「へー、その人……やっぱり丸女の生徒だってさ」
「なに!? 何処情報? お前のお気に入りの例の先輩か」
「そそ」
「でかしたぞ一ノ瀬。お前のお陰でアタシの進路は決まった」
「え!? まさか……やめときなって! みほっちは頭いいんだから!」
「お前も行くんだろ? お礼に鉛筆の握り方を教えてやろうか?」
「みほっちを殴る時と同じ手の形だよね?」
今日この時アタシ、北条美保は来年から姉貴の学校生活を守る為に丸井百合ヶ咲女学園へ進学することを決断した。
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