第29話 百合ゲー計算
金曜日の放課後、学級委員として球技大会の打ち合わせ会議で帰るのが遅くなった南雲と西宮。
明日の件もあり、普段より二人の口数は少なかった。
「途中まで一緒に帰っても構わないかしら?」
「別にいいよー」
平静を装う二人は一緒に下校する事になった。
***
どんよりとした曇り空の中二人は肩を並べて歩く。
「……私の事、嫌いになったかしら?」
「は?」
「東堂さんとのデートを拒否しなかったから」
南雲は西宮の質問に目を丸くする。
面食らった南雲は質問に質問で返す。
「え……逆に今まで好かれてると思ったの??」
「え? 違うのかしら? キーホルダーの一件もあったから……」
「あー、なるほど。まぁ……友人だとは思ってるよ」
二人の関係性を表す妥当なラインを南雲は提示した。
しかし、今度は西宮が目を丸くする。
「そ、そんな……! 友人どころか恋愛対象にすら見られているものかと……」
「は!? 頭おかしいんじゃないの? え……じゃあ、まさかとは思うけど……」
「――ワタシがあーちゃんに嫉妬してるとか思って、ないよね……?」
「違うのかしら?」
事も無げに言う西宮。
あまりにも異次元な思考回路に南雲は言葉に出して状況を整理する。
「つ、つまり? キーホルダーの一件からワタシは西宮さんに気があって、」
「ワタシは西宮さんとデート出来るあーちゃんに対して嫉妬していて、」
「今日はそんなワタシの気持ちにフォローを入れる為に一緒に帰ってる……ってこと!?」
「概ね合っているわ」
「そんな訳ないじゃん!!」
陰鬱な空気は霧散した。
西宮のぶっ飛び思考に南雲の渾身のツッコミが炸裂する。
頭を抱える南雲は今度は西宮に状況整理を要求した。
「一緒に買い物をしたから好感度+20でしょ、お揃いのキーホルダーで好感度+50で……」
「……ちょっと。その、好感度ってなに?」
「好感度が70に達すると私の事が好きになるわ。要するにヤれるってことね」
「…………」
ここで南雲は一緒に買い物をした際、彼女が発した言葉を思い出す。
『あら? 私がやってるゲームでは大体むせび泣いて喜んでくれるのだけど』
「百合ゲか!!」
西宮がこうなった原因を特定した南雲は事の真相を説明する。
何故、自分の気持ちが沈んでいるのかを懇切丁寧に。
「そ、そんな馬鹿な事……! じゃあ南雲さんは私とヤりたくない……ってこと!?」
「殴るよ?」
わざわざ自分の身を削ってまで説明した南雲はこめかみに青筋を浮かべる。
その時、同時に南雲にはある疑問が浮上した。
「……西宮さんってさ、もしかしてワタシの事が好きなの?」
「ええ、私のハーレムに加えてあげても良いとは思っているわ」
「……(イラッ」
南雲の中で何かが切れる音がする。気づけば西宮は地面に伸びていた。
そのまま放置しておこうか迷ったが、一応は駅まで運んだ。
送迎車の運転手には途中で寝てしまったと伝え、西宮を車に捻じ込んだ。
「明日はあーちゃんをよろしく……」
小声でそう囁きながら。
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