第28話 二人二組 side 東堂&南雲
追試期間中、ずっとお預けをされていた僕は早速麗奈にデートのお誘いをする。
放課後の教室で、僕はみんなが解散する前に声を掛けた。
「れ、麗奈。今度の土曜日……」
「あーっ! あーっ!! そうだ、あーちゃん! この前の追試なんだけどー……」
「話題変えるの下手か」
「土曜日ね。予定を空けて……」
「あーっ! あーっ!! そうだ、西宮さん! この前の追試なんだけどー……」
「どんだけ追試好きなんだよ」
うやむやにされる可能性も考えたが、麗奈はすんなりと予定を空けてくれた。
そしてここからが最大の問題になってくるんだけど、
「ところで、ゆーちゃんと北条は本当についてくるの?」
「そりゃ、まぁ嫌だよな」
「一緒に行くよ! 西宮さんが途中で両足骨折したらあーちゃんが一人になっちゃうし!」
「絶対にやめなさいよ」
少し間を置いた僕は、なんとかして北条にゆーちゃんを押さえてもらう作戦をあれこれ考える。
でも、本来、後々の事を考えるなら作戦なんてものは多分要らない。
ゆーちゃんに真摯に向き合うべきなんだ。ここは、ちゃんと伝えよう。
「……ゆーちゃん。今回は麗奈と二人で出掛けたいんだ。だから、ごめん」
「ぁ……あーちゃ、ん……」
ゆーちゃんの目を見て僕の本心を真っ直ぐに伝える。
だから、先に目を反らしたのはゆーちゃんだった。
涙を一杯に溜めた後、俯いて消え入りそうな声で呟く。
「……ううん。ワガママ言ってごめんね……」
「こっちこそ。ごめんね、ゆーちゃん」
北条は項垂れるゆーちゃんの頭を撫でて慰める。
麗奈の綺麗な横顔は静かに外の風景を見つめていた。
「Wデートじゃなくなっちまったけどさ、俺とはデートしてくれるんだよな?」
「茉希ちゃん……」
北条は顔だけこちらに向けて『さっさと帰れ』と目で合図する。
「……じゃあ、今日は先に失礼するよ。麗奈、詳細はまた連絡するね」
明るく努めてくれている北条に僕は感謝して教室を後にする。
振り向きざまに見たゆーちゃんは北条の胸を借りて泣いていた。
***
「私も今日は失礼するわ。また明日」
西宮さんは誰の返事も待たず教室を出ていく。
「俺たちはもう少しゆっくりしていくか」
「ありがと……」
ワタシは茉希ちゃんの胸から離れゆっくりと自分の席に座る。
茉希ちゃんは私の前にあるあーちゃんの席に座った。
二人の間に少しの間、静かな時間が流れる。
優しい茉希ちゃんはワタシに掛ける言葉を必死に探しているのを感じた。
「大丈夫だよ。明日からは元通りになるから」
「そうか」
短い言葉に茉希ちゃんなりの思いやりを感じる。
再び沈黙が訪れる前に、今度は話題を提供してくれた。
「……デート、土曜日でいいか? 一人で過ごすのはキツいだろ?」
「……うん」
「場所はー……うん、まぁ俺に任せてくれ」
未だ全然気持ちの整理はつかないけど、これ以上茉希ちゃんに心配を掛けたくない。
もう一度だけ目元を拭ってワタシは立ち上がる。
「ワタシたちも帰ろっか!」
「だな!」
「茉希ちゃん! デート、楽しみにしてるね!」
「あんま期待はすんな」
今は考えるのを止めて気持ちを押し込めておこう。
あーちゃんの為にも、茉希ちゃんの為にも。
ワタシは週末のデートの事だけを考えることにした。
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