第23話 (17-10)÷ 7


 5月に入り中間考査がすぐそこに待ち構える今日この頃。

 入学最初のテストという事で、この時期の一年生のほとんどは憂鬱な気分を抱えていた。


 そんな中、本日の体育の授業では体力測定が行わていた。

 適当に流す生徒も居れば、運動部の生徒はゲーム感覚で楽しんでいる。

 持久走は無いのでシャトルランを除けばキツい運動は無く、生徒たちには丁度いい息抜きになった。



「勝負をしましょう」


「一番雑魚そうな奴が勝負吹っ掛けてきたな」



 何故か暫定最下位にしみやから勝負を持ち掛けられ、例の4人は体力勝負をする事となる。



「なに賭けるー? 小指?」


「物騒ね。総合一位の人が最下位の人に命令出来るなんてどうかしら?」


「麗奈、大丈夫? ハンデとかは要らない?」


「舐められたものね。この授業が終わるころには奥歯を鳴らして結果を見ることになるわ」


「フリにしか聞こえねぇ……」



 ***


(長座体前屈)

 東堂:69cm、西宮:?cm、南雲:31cm、北条:50cm


「ふふ、やはり口程にもないわね」


 綺麗にセットポジションに入った西宮は体を倒し計測器を動かす。

 記録は、


「ま、マジかよ……74cm?」


「うそくさー」


「も、もしかして麗奈って……」



(上体起こし)

 東堂:33回、西宮:?回、南雲:32回、北条:24回


「はぁ……、はぁ……。まぁ……こんなものね……」


「上体起こし5回でこんなにやり切った感だせる人は初めて見たよ……」


「まぁ、そうだろうとおもったー」


「わりぃ、もうオチまで見えたわ」



(握力)

 東堂:38kg、西宮:?kg、南雲:?kg、北条:26kg


「とーっ、パワー!」


「なっ、70kg……? バケモンかよ……」


「ふっ、パワー」


「なっ、7kg!? 女子かよ」


「女子よ」



 ***


(結果発表)

 8種目合計点

 A:58点以上

 B:47~57点

 C:36~46点

 D:25~35点

 E:25点以下


 東堂:79点、西宮:17点、南雲:71点、北条:49点



「そ、そんな馬鹿な……」


「そういう次元じゃなくない?」


 西宮が長座体前屈で取った点数は10点。

 その他の種目は7つ。

 合計点は17点。


 つまりは、そういう事である。


「ただの前屈自信ネキじゃねぇか」


「最初から前屈単品で勝負すれば勝てたんじゃないかな……」



 西宮は、前屈を除けば平均1点の女が8種目平均約10点の女に勝負を挑んでいたという驚嘆すべき事実に膝を折り、奥歯を鳴らしていた。



「東堂は反復横跳びの時、西宮の胸ガン見してなければ満点だっただろうな」


「そんなに揺れるほど動けてなかったけどねー」


「酷いセクハラね。これは-50点した方がいいんじゃないかしら」


「だとしても麗奈が最下位だよ……」



 結局、減点を免れた東堂が西宮の生殺与奪の権を握る事となった。

 測定の途中からなんとなく結果を察していた東堂は、あらかじめ用意していたカードを切る。



「中間考査が終わったらさ……、二人で遊びに行きたいかな、なんて……」


「あら、そんな事でいいのね。臓器の1つは覚悟していたわ」


「……おいおい、普通はちょっとした罰ゲームだろ。この機に乗じてきたな」


「ダメーーーッ!! 絶対にダメ!!!」



 あっさりOKを出す西宮に当然、南雲の断固NGが入る。

 東堂が西宮を、北条が南雲をカバーするいつものホームポジションが形成される。



「ゆーちゃん。勝負で決まった事なんだからいいでしょ? それに遊びに行くだけだしさ」


「うー……でも、でも……心配だもん……。西宮さんだし……」


「この場合、むしろ私が心配される側だと思うのだけど?」


「それは割と間違ってねぇな」



 それでも反対したい南雲は涙を溜める。



「じゃ、じゃあ! あーちゃんは私と茉希ちゃんが二人で出かけてもいいのっ!?」


「は? おい」


「「…………」」



 理解が追いつかない東堂と西宮の時が止まる。

 辛うじて反応はしたものの、北条の理解もまた追いついていなかった。



「いやぁ……別に、いいんじゃないかな……? 二人で親睦を深めてきなよ」


「じゃあ!じゃあ! せめて! せめてWデートって事にしようよ!」


「いや、おい」



「……それってただ4人で出掛けるのとは違うのかしら?」



 こうして、二人組×2は休日に遊びに行くことが予定された。



 しかし、忘れてはならない。

 5月中旬にはが待ち構えているという事を――



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