第15話 究極の2択
入学から1週間ほど経ち、各生徒がクラスメートの顔と名前を覚えたであろう頃、
1-Aの
「はい、それでは皆さん本日は委員会活動についての話をしたいと思います。」
担任の百合が黒板に各委員についての説明をしながら板書していく。
全部で9つの委員会があり、生徒はどれかに所属しなければならないという旨だった。
そしてこのLHR最大の問題は――
「えー……、まず学級委員長と副委員長を決めなければならないのですが、誰か立候補する方は居ますか……?」
教室を見渡す百合と目を合わせまいと、生徒達がサッと視線を外す。
結果として例の4人と視線が合わさる事になる。
そう、このクラスで委員長をやるという事は自動的に
「……東堂さんと北条さんはどうかしら?」
苦渋の決断を迫られた百合は無難な組み合わせのカードを選ぶ。
「南雲さん、あなた役立たずらしいわよ」
「西宮さんも省かれてるけど?」
「違う、違うの! 全然選出に他意はなくて! ほ、ほら! ボケ担当よりツッコミ担当の方がまとめ役には向いてるかなーって……」
選出の意図がバレた百合は焦って余計な事まで発言していた。
「えーと、百合先生、墓穴掘ってるところ申し訳ないんですが……」
「ほ、掘ってないから!」
「俺ら放課後はバイトしてるから委員会活動にあんまり参加出来ないんで、出来れば活動の少ない委員会にして貰えますか?」
「そうなのね。じゃあ…………」
百合は極力、南雲と西宮に目を合わせずに言葉を繋ぐ。
「……他にやりたい方はいるかしら?」
「西宮さんは使えない方の例の4人だってさー」
「そうね、あなたも含まれてるようだけど」
「ち、違うのよ? そういう意味じゃなくて……ほら! 前科とか持ってるとやっぱり厳しいかなーって!」
どこまでも地中深くまで穴を掘っていく百合であった。
一方、
「ワタシやりますよー? 人と話すのは好きだし」
「ゆ、ゆーちゃん? 多分ストレスとか結構溜まるよ? 大丈夫? 我慢とか出来るかな?」
「任せてあーちゃん! 我慢は得意だから!」
「そ、そうだよね?」
「はい。私もやってもいいわ」
「は? お前はウケ狙ってんの? やめとけ、おもんないぞ」
「酷い言われようね。こう見えても私はチャレンジ精神が旺盛なの。『何事にも物怖じしないね』と褒められる事が多いのよ」
「どう考えても態度デカいから気をつけろって意味だろ」
――両者は謎にやる気満々であった。
「ワタシが委員長やります! 西宮さんの下につくのは嫌なので」
「残念ながら昔から委員長は黒髪巨乳がやるというのが日本の伝統なの。つまりは私ね」
「だ、誰か! 他に立候補したい方は居ませんか……!」
もはや百合は縋るような視線で生徒達に訴えかける。
しかし、敢えてこの二人の間に入ろうという猛者は居るはずがなかった。
それはこの二人のうちどちらかが委員長になってしまうという事だった。
「立候補者は居ないみたいだねー どうやって決めるー? 肩パン勝負?」
「もっとテクいやつにしなさい。ローション相撲とかどうかしら?」
「普通に多数決ですっ!」
「一体、僕はどっちに票を入れれば……」
「どっちにも入れたくねぇよ……」
二人に見られると気まずいだろうという、百合の意見により投票は全員机に伏せて挙手をする事になった。
「それでは、皆さん。私しか見ていないので正直に手を上げて下さい――」
後に、この様子を偶然徘徊していた学年主任に見られた百合は不祥事を疑われたという。非常に不憫な担任であった。
***
尚、全員無投票だった為、ジャンケンに勝った西宮が委員長になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます