第14話 ライバル side 東堂 明里
「いや~ まさかこんな逸材がウチに来てくれるなんてねー あんな完成度の高いよろにゃん見た事ないよ!」
「……ぅ、くッ! ……殺してください」
「ま、茉希ちゃん! あなたはそんな属性までマスターしているの? まさかッ……!? その為の、金髪……?」
さっきから悶え苦しむ北条を見て何度も驚愕する店長。
無知蒙昧な僕には何が凄いのかがサッパリ理解出来なかった。
「店長。北条はそんなに凄いんですか?」
「凄いなんてもんじゃないよ、これは……。この尊さを
***
(凄いな北条は……)
思えば僕は今まで努力なんてした事がなかった。
自分の能力を過大評価するつもりは無いけど、他人が苦労するようなことはどれも簡単にこなす事が出来た。
しかし、初めて理解出来ない感情と出会った。
だからこそ僕は『女子力』とは何たるか、それを学ぶ為にここへ来たはずだった。
なのに北条に会った時、僕は心の何処かでは俺っ子の彼女よりかはマシだろうと見下していた。
それがどうだろう。
実際、僕は北条の女子力の一端すら垣間見る事が出来ていなかった。
学ぶ為に来たにも関わらず、僕は彼女だけではなく『学ぶ』という事すら軽視していた。
今なら分かる。
僕が麗奈にフラれた理由。
北条のお陰で僕は気づく事が出来た。
「店長。僕、ここで頑張ります。そうしたらいつか……彼女ようになれますかね?」
「ふふっ。いい目だね」
僕の決意は固まった。もう、間違えない。
「あの子は逸材だよ。それに追いつくにはきっともの凄い努力が必要になる。それでもやる?」
「やらせてください!」
誰かの背中を追うのは初めての経験だ。
だけど、追いつきたい。あの大きな背中に。
僕は店長が差し伸べた手を熱く握り返す。
「……あのさ、いい感じに話まとまってるとこ悪いんだけど、早く俺を殺してくんない……?」
――大きな背中は
***
「じゃあまずは簡単な片付け、清掃から。お客様がお帰りになられたら、コップやお皿を片付けて、机拭く!」
「「はい!」」
僕と北条は言われた通り清掃する。
「は!? お前どうやったら布巾でこんな机が鏡面仕上げになるんだよ!」
「とんでもない、僕なんてまだまだだよ……」
「じゃあ次はドリンクの作成と提供! うちは結構種類あるから頑張って覚えてね!」
「はい!もう全部作れます!」
「は!? さっきレシピ貰ったばっかりだよな?」
「ほほうー……言うねぇ~ こう見えても私は厳しいよー? じゃあ、りりあん謹製りんごヨーグルトスムージーなんてどうだ!」
僕は記憶を手繰り寄せ、迅速にレシピを再現する。
「どうぞお召し上がり下さい、お嬢様」
「……(ゴクゴク)。 ……ふむふむ、なるほどね。どうやら私が君に教えられることはもうないようだ……」
「いやいやいや不自然だろ! なんで冷凍庫の材料の位置まで把握してんだよ!」
「そんな、北条には敵わないよ……」
「さっきからお前のその謙遜はなんなんだよ!」
「じゃあ次はー、えーと……接客は三野宮ちゃんが教えるから、最後にレジ打ちか!実際に打って試して見よう!」
「ハイテク仕様じゃなくてごめんね~……うちのは1個ずつ入力するタイプでややこしくてー……」
店長が持ってきたサンプル用のレシートを何枚か取る。
「こっちは2,728円、これが3,971円、これは5,203円ですね」
「は!? お前まだレジ打ってなくね?」
「さっきメニューとサービス内容は全部記憶したから、注文履歴を見て合算しただけだよ」
「お前の頭ん中どうなってんだよ! パソコンでも入ってんのか!?」
「いやいや、僕は北条を追うので精一杯だよ」
「お前が追ってる北条は誰だよ! ここにいる北条はさっきから置いてけぼりだぞ!」
***
バイトは始まったばかりだけど、目標が出来てやりがいを見つけた。
僕はいつか
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