第4話 side 南雲 優
まさに第一印象はギャルだった。
眩しく煌めく金髪、バシバシに決まった睫毛、耳から覗かせているピアス、少し気崩された制服。
彼女が醸成する柔和な雰囲気はなんだかアンバランスで。
話掛けようかと迷っているワタシ、そんな視線に気づいた彼女――
「俺になんか用?」
――第二印象はヤンキーだった。
***
(うーん、相談する相手間違えたかも?)
そう、ワタシこと
入学式で出会った同じ学年の子に親友自慢をしている間にその親友に置いて行かれていたのだ。
下駄箱まで来たものの、居たのはこのヤンキーかぶれのギャルぐらいだった。
「親友を探してるんですけど」
向こうから声を掛けられた以上、無視するわけにもいかないので一応返事を返す。
「連絡してみたら? Limeは?」
「ちょうど、ブロックされてて……」
「丁度……? てか、親友、なんだよな?」
「よくぞ聞いてくれました……!」
ワタシは抜かりなく親友自慢を交えながらこうなった経緯を彼女に説明した。
すると、意外にも彼女は親身に話を聞いてくれるタイプだった。
「――要するに厄介ファンって事でいいか?」
「違うよ?? 大親友で幼馴染」
どうやら彼女はあまり理解力がある方では無いらしい。
本来なら分かるまでワタシの親友自慢をしたいところだが、あいにく今はそんな時間がない。
「ま、まぁ乗りかかった船だし、お前のダチを見かけたら一応声掛けとくよ。お前の名前は?」
「ありがとう! ワタシは南雲優。連絡先交換しよ!」
「ん、俺は北条茉希。よろしく」
「よろしくー! 茉希ちゃんって呼んでいい?」
「別に構わねぇよ」
少し照れくさそうにする彼女はワタシと変わらない善良な市民だった。
さっきヤンキーって言ってごめんね?
「つかさ、南雲は全然俺にビビらないんだな? 一人称も変だろ?」
スマホを弄りながら彼女が問いかけてくる。
「ビビってたよー!か弱いワタシは小鹿のように震えてたよー! 茉希ちゃんはその『俺』っていうの気にしてるの?」
「相手に与える印象だけな、少し気になるっつーか。まぁ、今更変えれねーんだけどよ」
「ワタシは全然良いと思うよ! 個性?キャラ付け? うまく説明出来ないけど全然アリだよ!」
「ん……。ありがとな」
(……ホントに根はいい子なんだろうなー)
ワタシたちの間には和やかな空気が流れる。
同じ学年の皆は親身になって話を聞いてくれるし、茉希ちゃんのような素敵な友達も出来た。
入学早々、ワタシの学校生活は凄く幸せな幕開けになりそうだった。
「ワタシの大親友もね、自分のことを『僕』って呼んでるんだよ!」
「――僕と付き合って下さい!!」
***
「「………………」」
「えーと……。あんな感じにか……?」
――前言撤回。
入学早々、ワタシの学校生活は凄く不快な幕開けだった。
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