第2話 出店

 りんご飴に綿菓子。金魚掬いにヨーヨー釣り。たくさんの屋台が用意され、美しい花火を楽しめる夏祭りを娯楽が少ない田舎の住人たちは長い間待っていた。

 その中でも、浴衣を着た少女、ウミは特に楽しみにしていた。一昨年は台風で中止、去年は風邪をひいて欠席。一年の間心待ちにしていたイベントを二回も連続でパスしていたのだから、それはもう今年の夏祭りを楽しみにするのも頷ける。今年も出れなかったらどうしようと心配していたウミだったが、今年は無事に出席し、今は屋台で手に入れた甘くて真っ赤なりんご飴を舐めながら散策をしていた。

 次はどの出店に行こうかと辺りを見回していると、ふと一つの屋台が目に止まった。それは、沢山の面を網状のついに吊って並べている面売りだった。たしかに、お祭りといえばお面だ。唇についた飴をペロリと舐め取り、何か一つ買っていこうとウミは面の店に近づいた。特撮や子供向けアニメのキャラクターもの、ひょっとこやおかめ、動物など、たくさんのお面が並んでいる様子を眺めるのは、理由もわからないがなんだかワクワクする。どれがいいかと眺めていると、面売りの男が話しかけてきた。

「やあ、お嬢さん。どれを買うか迷っているのかい?」

 声はまだ随分と若そうだが、顔は狐の面に覆われていて少しも見えない。

「あ、はい。どれも可愛くて」

「それなら、これはどう?」

 この歳でお面ではしゃぐなんてと少し恥ずかしくなりながら答えると、青年は一つの面を渡してきた。

 勧められたのは、不思議な雰囲気の白い猫の面だった。鼻から上だけ隠れるデザインになっていて、目の部分が大きくくり抜かれている。視界が広い上に呼吸もしやすいいので着け心地は悪くなさそうだ。

「わあ、可愛い。ありがとうございます。これにします」

 気に入ったウミは、青年に代金を支払うと早速頭に着けてみた。

「よく似合っているよ」

 それ見た青年は、にっこりと笑って言った。顔は見えなかったが、なぜか笑ったような気がしたのだ。

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