第3話:魔法
父さんの同意を得てから、教本を持って部屋に戻る。
魔法を使いこなす自分の姿を想い描くと、少し興奮してきた。もう魔法を勉強するのが待ちきれなくなった。
そして分かれ道に来た。俺はすでに部屋へのルートを覚えているので、部屋に行くなら左に曲がらなきゃ。
左へ曲がると、クライードと会った。
目の前にいるイケメンは俺の長兄であるクライード、彼は俺と同じく銀髮碧眼。俺たちの容姿はおそらく父さんから遺伝したのだろう。
「こんにちは、クライード兄様」
「チっ……」
頭を下げてクライードに挨拶したが、彼は嫌悪感をあらわにした。
やはりクライードは俺に敵意を抱いている。
「お前、手に持っている本はなんだ?」
クライードは教本に気がついた。
「これは下級雷魔法の教本です」
「なっ?!」
俺の返事を聞くクライードは驚き、急いで俺の手から教本を奪った。
「やはりだ……。まさかお前、魔法ができるのか?」
「―――っ!」
その目は殺気を帯びて俺を睨んでいる。
冷静を保たないと。
「いいえ、まだできません」
「……っ」
そう返事したけど、クライードは疑い深い目つきで俺を見つめている。
「まぁいい。せいぜい頑張るんだな」
と、教本を投げ捨てて悪意に満ちた笑みを浮かべたクライード。
思わず冷や汗をかいた。
「はい……」
クライードがその場を離れたので頭を上げた。
そうだな、俺が魔法を習得したなら必ずクライードの地位に影響を与える。
床に投げ捨てられた教本を拾い上げ、ため息をついた。
ちなみにクライードには水魔法の才能があるけど、クルヘームには魔法の才能がない。だから、クライードとクルヘームとの闘争では、クライードが優勢を占めている。
でもさっきの件で、俺はクライードに目の敵にされたようだ。
継承権に興味がないのに……。まぁこれから、俺はクライードを注意しなきゃ。
❖❖❖
自分の部屋で魔法を勉強する。
俺が魔法を勉強するのには二つ理由がある。一つは魔法に興味があること、もう一つは邪神を倒すために強くならなければならないという理由だ。
最初のページを開けて読む。
「魔法は想像されたものである」
と、一文だけが書いてある。
これはどういう意味かと思いつつ次のページを開けた。
「まず体内の魔力を感じてみよう」
魔力を感じるのか……やってみよう。
目を閉じて精神を集中する。体内を感じながら探っていくと、いきなり何かが体の中を流れていき、体も熱くなってきた。
成功した!すごい、なんか血流みたいな感じ。これは魔力の流れだろう。
さらにページをめくった。
そこには、いろいろな下級雷魔法の説明と詠唱するべき呪文が書いてある。
じゃ、一番目の【雷電】をやってみよう。
魔法を発動するには、魔力を魔法に変換しなければならない。ゆっくりと魔力を指先に集め、呪文を詠唱する。
「雷よ、呪文に応えなさい、来てくれ!【雷電】!」
……けど、まったく反応がなかった。
どうやら、俺には雷魔法の適性がないようだ。ちょっと挫折感を覚えた。しかし、俺は一度の失敗で挫折するようなやわな人間ではない。
俺の考えはきっとどこかが間違っている。それに最初のページの一文はどういう……なるほど、意味がわかった。
魔法は想像されたものであるって、多分頭の中で魔法の形を想像しなければ魔法を発動できないということだ。
俺のその一文に対する理解はこうだ。
【雷電】って、文字通り雷と稲妻だろう。
もう一度やってみよう。目を閉じて心を静めて集中させ、頭の中で雷と稲妻の形を想像する。魔力の流れを指先に集めてみると、奇妙な丸い模様が現れる。これは魔法陣というものだろう。
「雷よ、呪文に応えなさい、来てくれ!【雷電】!」
呪文を詠唱すると、魔力が集まって電気を放出した。
この光景を見て大喜びした。
「でっ、出た!魔法だ!」
と、大声で叫んだ。
にわかに脳内にシステムのような音が鳴り響く。
『スキル【雷魔法:下級】を習得しました、おめでとうございます』
これを聞くと嬉しかった。
俺はやはり魔法の才能がある。これも神様の加護のせいか、魔法ができる。
でも、ますます神様からもらった加護の効果が気になってくる。神様は俺に加護をくださるが、どんな効果があるのか説明してくださらない。
神様にお会いできる機会があれば、加護について教えを乞う。
さて、二番目の【雷球】を勉強しよう。【雷球】って、電気のような球体だよね。
深呼吸して【雷球】の形を想像し、呪文を詠唱する。
「雷よ、我が手に集いて力になれ!敵を倒せ!【雷球】!」
指先に魔力を注ぎ込んと魔法陣が現れ、電気が球体のようになった。
やった!【雷球】も成功した。
このまま、魔法の勉強を続けた。憧れの魔法は難しく思ったけれど、意外に簡単だ。
三番目の【雷弾】、四番目の【雷矢】、五番目の【雷槍】と六番目の【雷針】も発動に成功した。だが、今勉強したすべては攻撃タイプの魔法だ。部屋にいるので発射できない。
そして七番目の【電場】という魔法は周りに放電して敵を麻痺状態にする、防御タイプの魔法だ。
けど、部屋に放電するのはちょっと……。
やはり魔法を勉強するには広い場所に行かなきゃ。
八番目の【雷刃】、攻撃タイプの魔法だ。これもやってみよう。
目を閉じて呪文を詠唱する。
「雷よ、我が敵を斬る刃となれ……えっ……?」
いきなり眩暈がして、意識が飛びそうになった。
どうしたんだ、俺は?
魔力の流れを感じなく、頭がくらくらして足元がふらつき立てなくなった。
視線がぼんやりとなり、その場に倒れ、意識を失ってしまった。
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