第12話

 茉莉による正確なナビゲーションの甲斐もあり、約二十分ほどで目的の公園へとやって来ることが出来た。


 あまりの速さゆえに、空気の壁が茉莉たちの身体に何度もぶつかっていたのだが、魔法の風のおかげか、二人は無傷で土の上に着地した。


「うわあ、懐かしいな。何年振りだろ、ここに来るの」


 周囲を見回して懐かしんでいる茉莉。そんな彼女を無視して、奏多は真っすぐに砂場へと歩いて行く。


「砂場って遊んでる時に出会った、って言ってたよな」


 そうだけれど、もう少し待ってくれても良くないだろうか。見て分かるように、私は今、感傷に浸っているのだ。数分だけでも待ってあげる優しさは、この男にはないのか。


 唇を尖らせながら、茉莉は訴えた。言葉にしなかったのは、自分も早くおじさんについて調べたいという思いを確かに抱いてからだろう。


「ここでお城を作ってて、そしたらあの茂みの中からおじさんが現れたんだ」


 茉莉は言いながら、砂場の先にある緑生い茂る一帯を指さした。公園を囲む深緑は、歩道に面するまで続いている。


「草木の先には、何があるのか知ってるか?」


「なーんにも。突き進んでいったら、反対側の道に出るだけだよ。ちょっとした坂道になってるから、油断して進んだらひっくり返っちゃうけどね」


「……お前、通ったことあるだろ」


「子供にはやっぱり、好奇心旺盛であってほしいよね」


 奏多もその意見には同意する。だがしかし、将来自分に子供が出来たら、旺盛な好奇心を全肯定するのは止めようと思った。好奇心がために、病院のベッドで顔を合わせるなんてことになったら――想像もしたくない。


「坂道になってるってことは、おじさんは逆にそれを上ってきたわけか。なんでわざわざこんな所から来たんだ? 回り込んで、普通に入り口から来ればよかっただろうに」


「あまり人に見られたくなかったから、とか?」


 一理ある。茉莉に自分が魔法使いだと言っている時点で、おじさんが予め自分の素性を明らかにするつもりだったのは明白だ。もしかしたら、視認で魔法使いだとばれてしまう何かが、おじさんの身に起こっていたのかもしれない。そんな状態でも茉莉に魔法をかける必要があったとすれば、まあ、この中から現れたのも納得出来る、か。


 それともう一つ考えられるとすれば。単純に、回り込む時間すらもなかった、とか。


「魔法でさ、過去のこととか見れないの? よくあるじゃん。過去の一部を映像にして空中に映すみたいなさ」


「出来ないことはないが、時に関係する魔法はかなり魔力を使う。俺でも、せいぜい一日に映せて一分弱ぐらいだろうな。新堂が、おじさんと出会った正確な年月日と時間が分かるって言うんだったら、やってみるけど」


 何年だったかは、逆算すれば分かる。確かあれは小学校二年生の頃だったはずだから……と、確か、と思っている時点でもう論外なのだと、思い出しながら茉莉は悟った。


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