ミア 短期間の本気

ガラクタだらけの倉庫で大掃除。

ジャハトはそんなミアを見て、呆れた様子で言った。「お前、何やってるんだ?」「見ての通り、掃除だよ」ミアは、ジャハトにそう答える。「お前、掃除なんてしたことないだろ」

「失礼な、私だって、掃除くらい出来るよ」ミアは、ジャハトの言葉に反論する。「じゃあ、やってみろ」「分かった」ミアは、掃除を始める。だが、すぐに、ジャハトが止める。「おい、待て、そこ、ゴミ捨て場じゃないぞ」「えっ、そうなの」ミアは、ゴミ袋を持って、戻ろうとする。「おい、そっちは、トイレだぞ」ミアは、トイレに入ろうとする。「あっ、間違えた」

ジャハトは、溜め息をつく。「やっぱり、ダメだな、これは」

ミアは、ジャハトの目の前に立つ。「ねえ、ジャハト、教えてくれないか? 掃除の仕方」

ジャハトは、面倒くさそうにする。「仕方ないな、特別に教えてやる」

ジャハトは、手をかざし、呪文を唱えた。

【ファインド】

散らかってたガラクタが浮遊し、真ん中が山のように積み重ねる。

「さぁ、この通り、綺麗になっただろ」ジャハトは、自慢げに言う。「凄い」

ミアは、感心した表情を浮かべる。

「そうだろ、これぐらい、朝飯前だ」

「うん、ありがとう、ジャハト」

ミアは、笑顔で言う。

「いや、お前の為じゃ無いぞ、そこだけ勘違いするな」

ジャハトは、照れ臭そうにしてる。

「でも、本当に助かったよ、ありがとう」

ミアは、ジャハトに感謝していた。

「まあ、別に、感謝される程の事でもないけど」

ジャハトは、少し嬉しそうにしている。

「倉庫も綺麗になったし、次はキッチンだね」

「おい、俺を道具扱いするな」

ジャハトは、少し怒っている。

「冗談、冗談、一緒に行こう」

「ああ、良いだろう」

二人は、台所に向かった。

「ここが、台所か」

「うわ、汚いな」

「もう使えないんじゃないか? ガスなんて使えなさそうだけど」

ジャハトは、ガスコンロを見て言う。

ミアはキッチンを観察し、ガスコンロを調べると「まだ大丈夫じゃん」と言って、ガスの元栓を開くとガス匂いがし、確かにまだ使えるようだ。「よし、まずは、床の掃除から始めよう」

ミアは、モップを持ち、ジャハトは雑巾を持つ。「よし、始めるぞ」

ミアは、ジャハトと一緒に、部屋の掃除を始めた。

「ねぇ、ジャハト、聞いても良いかな?」

ミアは、ジャハトに質問をする。

「何だ?」

ジャハトは、返事をする。

「あのね、ジャハトは、どうして、私を拾ってくれたの?」

「それは、お前が困っていたからだろ」

「そうだけど、私は、ジャハトにとって、邪魔者だったんじゃないの」

「まぁ、最初は、そう思ってたよ」

「じゃあ、なんで」

「お前が、どうしても、行く宛が無いからって言うから、仕方なくだ」

「そっか、ありがとう」

ミアは、お礼を言うと、掃除を再開した。

それから、一時間後、部屋は、見違えるように綺麗になっていた。

ミアとジャハトは、疲れ果てていた。

「やっと終わったな」

「そうだね、今日は、もう遅いから寝よう」

「俺は、もう少し起きてる」

「分かった、じゃあお休み」

「ああ、おやすみ」

こうして、二人の共同生活が始まった。ミアが寝たから俺はある人物を探すために倉庫のドアをゆっくりと開け、廊下に出る。

ミアは、ベッドの上で横になってる。

ジャハトは、ミアが居ないことを確認すると、倉庫から出る。

ジャハトは銃を取り出し、ある場所に向かう。

プログラムで生成したバイクを飛ばし、倉庫から離れた。


道路を走ると後ろから始めて見る赤色の車両が現れた。

「赤色の球体マーク」

ジャハトは、その車両を見ると、警戒しながら、スピードを上げる。

後ろを向くと職員が銃を向けている。

「チッ、やっぱり来たか。これだけはやりたくないのに、仕方ない。逮捕覚悟だクソッタレ」

ジャハトは悪態をつきながら舌打ちすると、アクセルを強く踏む。

検知されないようにフードとマスクを被った。

この赤の車両はとても珍しく、普通は青色だ。

ジャハトは、楽勝だと思いながら逃げ続けるが、この車両は普通の車より速い。

ジャハトは、このままでは追いつかれると思い、電脳世界で使える拳銃型の武器を取り出そうとする。

しかし、取り出した瞬間に、発砲された。

弾丸は、ジャハトの肩に掠り、ジャハトは顔を歪ませると、ハンドルを切り、車体を傾ける。タイヤは空回りし、車は転倒した。ジャハトは、受け身を取り、すぐに立ち上がる。

「クソ、まさか、ここまでとは」

赤い車両が目の前に止まると、扉が開き、中から武装をした人間が大勢出てきた。

「おい!こいつを捕まえろ!」

武装集団のリーダーらしき人物が命令を出すと、部下達が一斉に襲い掛かってきた。

ジャハトは、攻撃を避け、隙を見て、銃弾を放つと部隊は倒れた。

「意外にも強くはねぇな」

ジャハトは余裕の表情を浮かべ

ると、倒れてた部隊が立ち上がり、また、襲いかかってくる。「ちっ、しぶといな」

ジャハトは、攻撃を掻い潜り、避け、反撃をする。

そして、全員を倒した。

「こんなもんか」

ジャハトは、息を整えると、バイクに乗り、再び目的地へ向かう。


 ジャハトは、ある場所に辿り着く。

「ここか」

ジャハトは、建物を見上げる。

「さぁ、行くぞ」

ジャハトは、建物の中に入る。

ジャハトは、ある部屋に辿り着いた。

そこには、一人の男が座っている。

「久しぶりだな、メムズ」

ジャハトは、男の名前を呼ぶ。

男は猫を撫で抱え、椅子に座っている。

「お前は誰だ?」

「俺だよ、俺、ジャハトだ」

「ジャハト? 知らないな」

「そうか、なら思い出させてやるよ」

ジャハトは、腰に掛けてる剣を抜くと、構える。

「行くぜ」

ジャハトは、メムズの懐に入ると、剣を振り下ろす。

メムズは、何もせず、剣を見ただけで一瞬で粉々にする。

「ほー」

ジャハトは、目を丸くして驚く。

「なんの真似だ? ジャハト」

「チッ、流石、最強のウイルスと言われるだけはあるな」

ジャハトは、苦笑いをして、後ろに下がる。

「まあ、良い、目的は果たしたからな」

「逃げるのか?」

「ただの挨拶代わりだ、今回はある人物を探しに来てるだけだ」

「ある人物?」

「ああ、そうだ、分かるか? 『BEST FRIEND』というウイルスだ」

ジャハトは、ニヤリと笑う。

「あの脅威のウイルスのことか?」

「そう、イリアス クロン型破壊型だ。数10年前に爆発的な感染力を持ってる。覚えてるか?」

「ああ、確か、サイバー警察が、必死に対処した奴か? 当時はウイルスを対抗する手段が無かったから大変だったらしいな」

「そうだ、あの時、俺はウイルスの退治をしてきた。その時、爆発のせいで一生残る傷を覆った」

ジャハトが話をするとメムズはジャハトの顔を見つめていた。

「だから、お前は、ジャハトなのか?」

「そうだ、ウイルスを退治するためにな」

ジャハトは、真剣な顔で答える。

「なるほど、それで、お前は何をしに来た」

「お前と協力してウイルスを撲滅させる」

ジャハトが話を終えると、メムズが口を開く。

「協力だと? 馬鹿言うんじゃねえよ、お前んとこ組織壊滅させられたじゃねぇか」

「あれは、仕方なかった、まさか、中央安全処理機関のプログラムで破壊されるとは思わなかったからな」

「まあいい、どうせ、選択肢はNOしか無いからな」

「呆れたな、メムズ、相変わらず、頭が悪いな」

「なんだと!?」

「この世界を滅ぼそうとしたら、ウイルスを殺す。当たり前だろう?」

「言っとくけどお前との組織は一度も入ってないからな」

「ウイルスは退治しないってか?ふざけるな、そんな事したら、ウイルスが増殖するだろ」

「しないとは言ってない」

「じゃあ何だよ? お前はここでひっそりとゲームでもやってんのか?」

「まあね、今はsupelunkerをやってるんだ」

「あんなもん不眠症になるだろ」

「まぁ確かに、僕も寝不足気味だけど、意外にも楽しいんだよ」

「駄目だ、お前とは話にならない」

「ごもっとも、とにかく、協力する気は無い、帰れ」

メムズが命令すると猫がシャーっと威嚇する。

「分かったよ、今日は帰るとする」

ジャハトは、扉に向かって歩き出し、ドアノブに手を掛け、外に出た。

落ちてる石を蹴り上げた。

「全く、面倒なことになったな」

 ジャハトは、溜め息をつくと、バイクに跨り、走り出した。

敷地内でノートpcを開き、メモリーを差し込む。

当時のベストの感染と、情報を調べ始めた。

ジャハトは、ウイルス対策ソフトを起動させ、パソコン画面を見ると、画面にはウイルス感染を示すベストフレンドマークが表示された。

「やはり、厄介だな、あいつは」

ログを確認すると、ジャハト用架空ののファイルコードが次々と削除されてた。

「これは、かなりやばいな」

数値はジャハトには劣らないが、重要なバックアップの破壊、そして、ジャハトのプログラムを乗っ取るなど、明らかにウイルスの方が上回っている。

「まずいな、このままでは、バイオスの機能がダウンしてしまう」

一度電源を切ると、死のスクリーン。キャントシャットダウンが表示された。

「イカれてる行為だな」

ジャハトは、溜め息混じりに呟いた。

「さて、どうするか」

ジャハトは、頭を悩ませる。

「ん?」

ジャハトは、ある事に気づく。

「ウイルスの本体は何処だ?」

ジャハトは、辺りを見渡す。

「ウイルスは一体じゃない?」

ジャハトは、ある行為に不信感を抱いた。あのファイル消去、あの数値、そして仮想pcの死のスクリーン……1人で出来ることではない。恐らく仲間がいるはずだ。

「取り敢えず、ウイルスの正体を掴むか」

ジャハトは、唯一ファイルに痕跡を残した感染ログを辿ることにした。発見したのはログにhidingというコードが残ってたことである。

「hiding、意味は、隠す、隠れてる、潜伏」

潜伏するウィルスのはマークラスやヴェスブラインディンなどの可能性が高い。

それか、ウィルスを合体させたウイルス、例えば、ウイルスを複数掛け合わせたウイルス、合成ウイルスとか。

だが、ウイルスを合体させるなんてことは、実例がない。

ウィルスを各役割で実行したとしても思うように行動出来ない。

更に、ジャハトが、ウイルスを乗っ取ろうとしても、無理だった。

「何だ? このウイルスは? 大物を狙ったかもしれないな」

脆弱性が低いジャハト専用のPCから侵入したその大物ウイルスは、ジャハトのプログラムを乗っ取り、書き換えようとした。だが、ウイルスは、ジャハトに勝てないと判断すると、データと痕跡を消去した。

「ふむ、厄介だな、ウイルスの癖に賢いじゃないか」

ジャハトは、ウイルスの恐ろしさに感心した。

「ん? 待てよ」

ジャハトは、ウイルスのファイルを見て、違和感を感じた。

「このファイル、何かおかしいぞ」

ジャハトは、ウイルスのファイルを詳しく調べると、あることに気づく。

「IDの最後が、lgとかjpの種類がある。複数いるのか?」

ウイルスのファイルをコピーし、プログラムを解析し始めた。

「なるほど、そういう事か」

ウイルスの正体がわかった。

「ウイルスは、2体で1つの生物か」

ジャハトは、詳しく解析をするため、受信IDの通りに特定していった。

「見つけた」

ジャハトは、ウイルスの居場所を突き止めた。

「電脳世界の果てのサーバーと、IDは34A『アド倉庫』……!?」

ジャハトは、驚愕する。

「何故だ……!?」

ジャハトは、この事実を受け入れられずにいた。

「このウイルスは、倉庫からアクセスしている……」

 倉庫と受信を繋ぐ唯一の場所『アド倉庫』。

そこには、ウイルスが潜んでいる。

「ウイルスを使用してるのはこの倉庫で一人しか居ない」

ジャハトは、ウイルスを操っている人物を特定する。

ウイルスは、ジャハトのプログラムを乗っ取ってもデータが消されるだけで、何一つ得はない。

つまり、ウイルスは、ジャハトのプログラムを乗っ取った後、ジャハトを始末するつもりなのだ。

「ウイルスの目的は、俺の殺害か?」

ウイルスの狙いは、ジャハトを殺すことで、ウイルスをばら撒くつもりだ。

「やってやろうじゃないか!」

アサルトコマンドを呼び出し、銃を生成すると、引き金を引き、準備を整える。

「行くぞ」

バイクのハンドルを二回回し、メーターが100になると走らせ、目的地に急ぐ。


「見えてきたな」

ジャハトは、スピードを落とし、辺りを見渡す。

「あれか」

ジャハトは、バイクを止めると、辺りに誰もいないことを確認した。

「よし」

ジャハトは、バイクを降り、銃を構え、裏口の窓を破った。「レディースアンドジェントルマン!」

お馴染みの挨拶をすると、ミアが体を起こし、目を擦っりながら、辺りを見渡す。

「誰ですか……?」

「あれ? ミア、お前か? 寝てたのか?」

「えぇ……そうですけど……てか急に起こさないでくださいよ! びっくりするじゃないですか!」

ミアは、不機嫌そうな表情を浮かべる。

「まぁいい、それより、あのウイルスについてだが、どうやら、ウイルスが操っていたのはこっちかららしいけど心当たりはないか?」

ジャハトは、ウイルスのデータを見せる。

「え? ウイルスが? てことは、ウイルスの正体は人間なんですね」

「そうだ」「それなら偽装してますね」

「何だと?」ジャハトは、疑問を抱く。

「ウイルスは、電脳世界に転送された時に、そのプログラムを乗っ取られてるんです」

「ウイルスを乗っ取る? そんなことが可能なのか?」

「可能ですよ。ウイルスにはウイルスをぶつければ良いんですよ」

ジャハトは、「成程な……」と呟いた。「ウイルスは何処にいるか分かるか?」

「それは分かりません。でもウイルスは、私達と同じ人間の可能性が高いと思います」

ミアは、真剣な眼差しで言った。

「根拠はあるのか?」

「ウイルスの管理者はコードを一から作り、アドレスも変更することが可能です。恐らく、ウイルスは、サーバーの関係者かもしれません」

「ふむ、確かにな。それにしても、ウイルスを複数掛け合わせたウイルスなんて聞いたこと無いが、ウイルスの製作者は一体どんな奴なんだ?」

ジャハトは、頭を悩ませた。

「ウイルスの製作者は、分かりませんが、恐らくサーバーの管理者……セキュリティーの誰かだと思われます」

「サーバーの管理者か……そいつがウイルスを操った犯人だな」

「はい、ウイルスが電脳世界で、ジャハトさんを襲おうとしたのは、その証拠になるでしょう」

「そいつでいいんだな?」

「はい、そのはずです」

ジャハトは、腕を組み、納得した。

「脅威のウイルスがやっと分かったな」

「はい、ですが、まだ分からないことが沢山あります」

ミアは、不安そうな顔で言う。

「あぁ、まず、このウイルスを作った人物だな」

「はい、それと、ウイルスの開発者がウイルスをばら撒いて何をしたいのか、目的も知りたいところですね」

ミアは、深刻そうな顔をして言う。

「目的は、サーバーを破壊するためだろう」

「そうですね。ウイルスは、この世界を守る為に作られた物なので、ウイルスが破壊したら、この世界の均衡が崩れる可能性があります」

「そうだ。――セキュリティか」

ジャハトは、セキュリティと聞くとこの世界で2つの機関を思い出す。

1つは、CSPAの『中央安全処理記憶コア』。

もう1つが、『CSR』。

どちらも電脳世界を護る為に活動している。

「CSPAの連中か……面倒臭いな」

ジャハトの表情が曇る。

「大丈夫です。CSPAは今、CSRによって人員を解雇させられています」

「何故だ?」

「分かりません……不法侵入とかなんとか……」

ミアは、深刻な顔をしながら答える。

「不法侵入? この部署に居るだけで解雇かよ」

ジャハトは、呆れた様子だった。

「はい……多分……ですけど」

「まぁいい、とりあえずウイルスを作った人物を探すぞ」

二人は、ウイルスの製作者を探し始める。

バイクに乗り、街を探索している。

「おい、ミア。ここら一体は検問エリア、飛ばすからしっかり捕まっていろ」

ミアは、ジャハトの腰に手を回し、強く抱き締めた。

「行くぞ!」

ジャハトは、エンジン音を響かせ、アクセルを全開にする。

「うわぁ!」

ミアは、声を上げ、必死にしがみつく。

ミア後ろを振り向くと青い車を見つける。

「あの、青い車は?」

「カスペル。ウイルスの敵だ」

機動性能は並のフェラーリでも並ぶことが出来る程の速さだ。また、機銃や、防弾性能も高い。

「あいつが来るとは予想してたけど、まさか、こんなに早く来るとはな」

ジャハトは、苦笑いをする。

「どうしますか?」

ミアは、心配そうな目で見る。

「ミア、射撃経験はあるか? 無くてもあっても、お前を戦わせるがな」

「えぇ……どうしてですか?」

ミアは、不満げな表情を浮かべた。

「まぁ、そうしょげるなよ。お前は俺のサポートに回ってくれ」

「はい!分かりました!」

ジャハトはリボルバーをミアに渡した。

「奴の前のタイヤを狙え、すぐには止まらないが、減速するはずだ」

「はい」

「いいか? 撃て」

ジャハトは、ブレーキを踏みながらハンドルを切る。

ミアは、銃を構え、引き金を引く。

銃弾は、車の前輪に当たる。車がバランスを崩す。そして、ジャハトは、ギアを変え、スピードを上げる。

「もっと面白いシーンがある。何か分かるか?」

ジャハトは、ニヤリと笑う。

「はい? 何が言いたいんですか?」

ミアは、意味が分からず首を傾げた。

「サバンナでは生と死が隣り合わせで、競争する危険地帯だ」

「何が言いたいか分かりません」

ミアは、少しイラついた声で言った。

「この世界でも同じことだ。今の状況を見て生と死が隣り合ってると思うか?」

「思いません」

「じゃあ、どうするか分かるな?」

「分かりません」

ミアは、無邪気な笑顔で言う。

「この野郎……仕方ねぇな」

ジャハトは、溜息を吐き、運転しながら、ミアの頭にチョップを食らわす。

「いたっ」

「馬鹿か……ここは、電脳世界だ。命を賭けなくても、ゲーム感覚で出来る。」

「な……なるほど……つまり、殺し合いですね」

ミアは、納得した様子だった。

「少し違う。今からこの群れを逃れる方法を体験してもらう」

「逃れる方法ですか……?」

「そう、しっかり掴まってろ!」

アクセル全開にすると300キロを越す速度が出る。

「え!? ちょ――」

ミアは、驚きの声を上げ、振り落とされないように、ジャハトの背中に強く抱き付く。

ジャハトのバイクは加速する。

青いカスペルが近付いてくる。

ミアは、後ろを振り向き、青い車を確認。

「速いな」

感心しながらもトンネルに入り、青い車から銃弾が飛んできた。

ジャハトは、蛇行して回避。

「危なかった……」

ミアは、安堵のため息を漏らす。

「おい、ミア、今の銃撃見たか」

「はい、凄かったですね」

「あれが本当の銃撃戦だ」

ジャハトは、不適な笑みを浮かべる。銃弾を避け、壁に触れるギリギリで曲がる。「うわぁー!?」

「驚くのはまだ早い。もっと面白い技を見せよう」

トンネルを通過し終わるとこの先は道路が盛り上がっておる。建物の瓦礫が散乱しており、ジャハトは、そこを通る。

バイクを傾け、右へ左へと、ハンドルを切り、障害物を華麗に避ける。

マップを見るとこの先、CSPAの本拠地の近くだった。「面白い、試合だな」

上から弾を通過した。狙撃手がいる。数百メートル前方に複数のマズルフラッシュが見える。

バイクが転倒するギリギリでドリフトしながら前進する。

頭上に弾丸が通過。目の前に塞ぐ大型車両をバイクごとジャンプして飛び越える。

着地と同時にバイクを180度回転させ、そのまま走り出す。着地すると青い車のエンジンが聞こえなくなり、止まった。「なんとか逃れたな」

ジャハトは、ミアに言う。

「はい、でも、まだ敵が居るんじゃ……」

ミアは、不安げに聞く。

「ああ、いるだろうな」

ジャハトは、余裕の表情を浮かべていた。

「ジャハトさんは、どうしてそんなに冷静なんですか?」

ミアは、不思議そうな顔をしながら質問する。「戦場では、常に平常心を保たなければ、生き残れない、生き残るには、冷静さが大切だ」

「なるほど」

ミアは、関心していた。

二人は、目的地に着くと、そこには大勢の武装集団が待ち構えている。

「おい、ミア、俺から離れるなよ」

「はい!」

ミアは、ジャハトの左腕に抱きつく。

「お前ら! 動くな!」

一人の男が銃を向けて叫ぶ。

「静粛に! 今から君達には、選択をして貰う」

ジャハトは、男を睨む。

「黙れ! 貴様らは、電脳世界の平和を乱した! よって死刑とする!」

男は、引き金を引く。

「はいはい、そうですか」

ジャハトは、呆れた表情をする。

ミアは、「ジャハトさん! 避けて下さい!狙われてます!」

「ミア、静かにしろ」

ジャハトは、ミアに忠告する。

「はい」

ミアは、口を閉ざす。

ジャハトは、銃口を向ける。

「銃を捨てろ」

「誰がお前なんか……!?」

ジャハトは、引き金を引く。

銃声と共に男の胸元から血飛沫が上がる。

「次は誰だ?」

 ジャハトは、銃を向けて、問う。武装集団全員はジャハトに怯えて銃を捨てて投降する。

「さすがです。ジャハトさん」

ミアは、ジャハトの左手を強く握り締めながら言う。

「いや、まだ武器を捨てない奴らがいるぞ」

ジャハトは、警戒を解く事なく、辺りを見渡す。

「ジャハトさん……あの人達は……」

ミアは、指を指す。

「来るぞ!」

ジャハトは、ミアを抱きかかえ、落下した物体は砂煙を上げる。

「大丈夫か? ミア」

「はい……ありがとうございます」

ミアはお礼を言うと、砂煙から人影が姿を現した。

「誰だ?あいつ」

ジャハトは、ミアを守るようにして立つ。

「ソアラです」

名を呼ぶと、ミアはソアラに近付き、抱きしめる。

「ソアラ……無事で良かった……」

「離してください。貴方はウイルスの味方なんですよね?」

「ち、違うよ!」

ミアは慌てて否定する。

「なら、何故さっきウイルスと一緒にいたんですか?」

「それは……その……えっと……そう! 道案内をしてくれたの!」

ミアは、必死に言い訳を考える。

「ミア、嘘はいけないですよ。あの人はウイルスの仲間なの」

「違うよ! 私は信じてるもん!」

ミアは、ソアラの手を両手で握る。

「ミア、騙されたらダメだよ。ミアは私達を裏切ったんだよ」

「えっ!?」

ミアは、困惑している。

「すまないけど、ミアは私達の敵なの」

ミアは、ソアラの手を振り払うと、銃口を向けて威嚇される。「おい、ミア、早く離れろ」

ジャハトは、ミアに命令した。

「ジャハトさん……」

「俺は、ソアラと決着を付ける」

「はい……」

ミアは振り向かず、その場から離れて行く。

ジャハトとソアラが対峙すると、ソアラは戦闘態勢に入る。

「行くよ。ジャハト」

鎌を振り回し、ジャハトを襲う。

ジャハトは、それを見切り、紙一重で避ける。

「どうした。こんなものなのか?」

ジャハトは、余裕の表情を浮かべる。

「まだまだぁ!」

ソアラは、再び攻撃する。

ジャハトは、それを避けた。

「遅い遅い!」

ジャハトは、嘲笑う。

「くそぉ!」

ソアラは、悔しそうにしながら、ジャハトに突進する。

「おっと、危ない」

ジャハトは、余裕で避けると、ソアラは、力を込め振り下ろすと地面を突き刺した。「嘘だろ!」

ソアラは、驚く。

「そんなんじゃ、俺を倒せないぜ」

ジャハトは、不敵な笑みを浮かべると、ソアラは怒りを露わにする。「調子に乗るなよ!」

「怒れば、冷静さを失うだけだ」

ジャハトは、呆れた顔をしながら言う。

「黙れぇ!」

ソアラは、ジャハトに向かって走り出し、鎌を振る。

「だから、当たらないと意味が無いだろ」

ジャハトは、軽々と避け、隙を見て、腹に蹴りを入れると、ソアラは吹き飛ばされた。

「ぐあっ!」

ソアラは、地面に倒れる。

「終わりか?」

ジャハトは、倒れているソアラに聞く。

「まだだ!」

ソアラは、立ち上がり、ジャハトに突進する。

「諦めの悪い奴め」

ジャハトは、溜め息を吐きながら呟くと、ソアラの攻撃を避ける。

「なんで!当たんねぇんだよ!」

 ソアラは、攻撃を繰り出すも、ジャハトに当たる気配がない。「お前のスピードが遅すぎるんだよ」

ジャハトは、呆れた表情をする。

「くっ!」

ソアラは、一旦距離を取り、体勢を立て直す。

「逃げても無駄だって」

ジャハトは、距離を詰めて来る。

「うるせぇ! 来んな!」

ソアラは、焦りながらも、攻撃を仕掛けるが、簡単に避けられてしまう。

「お前が弱いからだろ」

ジャハトは、呆れた様子で言う。

「黙れ!」

ソアラは、大声を出し、鎌を振り回す。

「お前は、ウイルスなんかより弱過ぎる」

ジャハトは、鎌を弾き飛ばすと、ソアラの腹に蹴りを入れ、吹き飛ばさせる。


「ぐはっ!」

ソアラは、血反吐を吐き出すと、「俺は……負けない……」

ゆっくりと立ち上がる。

「まだやるのか?」

ジャハトは、飽き飽きしたような態度を取る。

「当たり前だ……」

ソアラは、鎌を持ち直し、構える。

「そうか……」

ジャハトは、静かに言うと、ソアラの背後から現れる。

「!?」

ソアラは、驚き、後ろを振り返る。

「これで、お終いだ」

ジャハトは、ソアラの首元を狙い、手刀を入れた。

「がはっ……」

ソアラは、首を手で押さえながら、膝から崩れ落ちる。

「悪いな。もう終わらせてもらったよ」

ソアラは、気絶し、動かなくなった。

「これで、やっと終わったな」

ジャハトは、ミアの元へと歩く。

「ミア……大丈夫か?」

ミアは、泣きそうな顔になり、ジャハトに飛びついた。

「怖かったよぉ!」

ミアは、ジャハトに抱きつき、離れようとしない。

ジャハトは、ミアの頭を撫でてあげると、ミアは落ち着きを取り戻す。

「やれやれ、少し君には精神を鍛えないとな」

ジャハトは、呆れた声で言った。

「ごめんなさい……」

ミアは、ジャハトから離れると、頭を下げた。

「まぁ、いいさ。次からは気を付けてくれ」

「はい」

ミアは、返事をした。

「さて、ランチでも行くか」

「うん!」

ミアは、笑顔で答えた。

二人は、街へと歩き出す。「ミア、手を繋ごう」

ミアは、嬉しそうに手を繋ぐ。

「ジャハトさんの手、大きいね」

「ミアの手は、小さいな」

「むぅ~」

「ほら着いたぞ」

着いたのがジャハト財団の本拠地である。

「ここは?」

「俺達の家だ」

「えっ!?」

「驚くのも無理は無い。この家は、特殊な構造になってる。セキュリティーが厳重で、許可された者しか入れない仕組みになっている」

「へぇ~」

「まずは、入ってみてくれ」

「はい」

ミアは、扉を開け中に入る。「凄いですね」

「だろう」

ジャハトは、自慢げに答える。

「じゃあ、俺の部屋に行こうか」

「はい」

「ここだ」

ジャハトの部屋に入ると、パソコンが置いてあり、モニターが複数個ある。

「ジャハトさんの趣味ですか?これ」

「そうだ。俺にとって大事な物だからな」

「私にとっては、興味ないですけどね」

「なら、なぜ俺について来た」

「ジャハトさんと一緒に居たかっただけです」

「さぁ、食事の時間だ」

「はい」

ミアは、椅子に座ると、ジャハトはキッチンへ向かう。

材料はもやしとうどん、そして調味料。

ジャハトは、料理を作る。うどんの麺を茹でて、調味料は醤油とみりん、砂糖だ。味付けをして最後にもやしを乗せて完成だ。「出来たぞ」

ミアは、お箸を持って来て、席に着く。

「美味しい!ジャハトさん!天才だ!」

ミアは、目を輝かせながら食べる。

「ありがとう」

ジャハトは、微笑みながら言う。

組織が壊滅してから食料や生活に必要な物が無くなったので、ジャハトは、食材を調達したのだ。

食べ終わると、食器を洗い片付ける。

「今日は、疲れたからもう寝るか?」

ジャハトは、ベッドに横になる。

「私は、ジャハトさんの隣で寝ます」

「いや、断る」

ジャハトは、即答する。

「どうして?」

ミアは、涙目で訴える。

「それは、君が女の子で俺は男だからだ」

ジャハトは、真面目に理由を話す。

「分かった……」

ミアは、渋々了承して電気を消し眠りにつく。

ジャハトは、綿棒でミアの口に唾液を採取し、カプセルに綿棒ごと入れると財団本部地下にある研究施設に向かう。厳重な鉄の扉を開けると研究品がズラリと並んでいる。ジャハトはゴム手袋をはめるとさっきの綿棒を取り出し、皿に赤い液体を垂らす。その液に綿棒を入れると、徐々に赤く広がり、ガラスの試験管に入れ機械にセットすると、分析を始める。しばらく待っていると、ピーという音が鳴り、結果が出る。

「やはりな……」

ジャハトは、確信した。検査した結果、360nmの波長が検出。ブルーライトの成分である可視光線が付着していた。そして、電磁波も大量に付着していた。

ミアの体内から大量に、検出された。そのデータを元に何時何分何処に居るのか、時間まで割り出した。その結果、ジャハトは驚愕した。午後23時から午前3時まで60Ghの電力でブルーライトを5時間浴びていた事が発覚した。ミアの身体は、ブルーライトのダメージによって衰弱状態になっていた。更に血液中に大量の有害物質が検出され、免疫力が低下している事が分かる。しかし、健康のことより、ジャハトのPCに感染したウイルスを特定しなければいけなかった。なので、ジャハトは立入禁止部屋に入ると2メートルぐらいのシェルフが囲うように設置してある。その目の前に5台の液晶画面があり、それぞれの画面には、ウイルスの解析内容が映っている。ジャハトは、その中の1台に指を触れ、データを元に、ウイルスを特定していく。周波数6Ghと倉庫を頼りに、ウイルスを特定できた。場所は布団だった。布団というとミアが寝てた場所だ。もしかしたらミアがウイルスの管理者かもしれないとジャハトは考えた。元CSR長官の経験が発揮し、ミアを暗殺する事を決めた。ジャハトは、床から取り出したCSR主力武器V82.12ゼロマシンガンを取り出すと、充電器用のコンセントが付いてるマガジンを装填する。午後20時12分07秒、暗殺開始。非常階段で足音立てず、2階に上り、ドアをゆっくりと開ける。ジャハトは、銃を構え、中の様子を伺った。誰もいない。ジャハトは、ゆっくり近づくと、いきなり扉が開く。ジャハトは、慌てて後ろに下がると、ミアが立っていた。ミアは、ジャハトを見ると驚いた表情をする。ジャハトは、冷静を保ち、ミアに手を挙げるように命じる。

「元CSR長官ジャハト・ノート。大人しく膝を付き、手を頭の上に乗せろ」ミアは、ジャハトの顔を見て驚く。「ジャハト……さん?」「早くしろ」は、銃口を近付くと渋々従う。

ジャハトは部屋を隈なく捜査する。数分経ってもミアのPCは見つからず、ジャハトは焦り始める。何故無いのか不思議に思ったジャハトは、ミアに質問する。

「何故君のPCが無いんだ?答えてくれ」「知りませんよ!そんなこと!」ミアは、声を上げる。「何故無いんだ? 俺の手違いなのか?」

「そんなことより何故武器を持ってるの? 危ないじゃないですか」ミアは、ジャハトを睨む。「あぁ、これはすまない。今すぐ下ろす」

ジャハトは銃を下ろし、ミアを解放する。ミアは、ジャハトを疑うような目で見る。ジャハトは、ミアに質問するが、ミアは、知らないの一点張りだ。

「いや、俺のPCからウイルスが侵入してな、そのウイルスを頼りに探してたら君の側にPCらしき電磁波が検知した。もしかしたら、そのパソコンの中にウイルスを作成してる可能性が有ったと思って」

「だからと言って殺す事はしないでしょ」

ミアは、怒りながら言う。

「確かにそうだが、俺は、ウイルス作成を阻止する為に君を殺した。ウイルスが完成すれば、この現実世界にも被害が及ぶからな」

ジャハトは、ミアに説明すると、ミアは、「そう……」と呟くと黙ってしまった。ジャハトは、ミアに謝ると、ミアは、首を横に振る。ミアは、ジャハトに自分の正体を話す。「ジャハトさん、私、実は電脳世界の人間なんです」ジャハトは、驚きながらも、冷静に聞く。「どうして、分かった?」「私が、電脳世界に転送された時に、私は、ある人に助けてもらったのです。名前は、アルです。彼女は、私の恩人でもあり、友人でもある。彼女のおかげで、殺されずに済むことが出来ました。」ジャハトは、静かに聞いている。「それで、そのアルと言う人は、誰なんだ?」ジャハトは、真剣に問う。ミアは、少し沈黙すると口を開く。「なんか、とても優しくて、正義感の強い人、そして、電脳世界を良くしたいと願っている人」ミアは、アルの事を思い出す。ジャハトは、ミアの話を聞いて、アルが怪しいと思った。アルの過去を調べる必要がある。

ジャハトは、ミアに、今日はもう遅いので、家に泊まるよう促すと、ミアは、遠慮がちだが、了承してくれた。


次の日の翌朝、ジャハトはミアの謝礼にご飯を作ってくれた。ミアは、ジャハトが作った朝ごはんを食べていると、ジャハトは、ミアに質問をする。「ミア、君は、電脳世界に転送される前は何をしていたんだ?」ミアは、食べていた手を止め、答える。「普通の女子高生だよ。でも今は帰りたくないんだ。」「何があったんだ?」ミアは、少し間を置くと、話し始める。「私……ある人に殺されかけてたの」ミアは、震え声で話す。ジャハトは、ミアの話を遮る事なく聞いていた。ミアは、続きを話し始める。「あの日、私は、いつも通り学校に通っていたんだけど、突然、家に帰ると家のインターホンがなって、バレずに窓を覗いたら、見た事のない人が立ってたの。恐る恐る玄関のドアを開けると、そこには、ナイフを持った男がいて、咄嵯に逃げようとしたけど、すぐに捕まっちゃったの。そしたら、男は、包丁で刺してきたの。怖くて動けなかった。だけどその時、誰かが私を連れてってくれたの」「それが、アルだったのか?」ミアは、コクリと首を振る。

「そのアルという人は今何処に居るか分かるか?」ジャハトは、ミアに問い掛けると、ミアは、「分からないけど、覚えてるのが駐車場みたいなのが広くてガラスが貼ってある青色の建物だったかな」

ジャハトは辺りを見渡すとここじゃないなと思いながらミアに言う。「ありがとう。ミア、とりあえずここから出よう」ミアは、ジャハトの言葉に、コクりと首を縦に振り、2人で家を出る。ミアは、家を出てからジャハトに話しかける。「ジャハトさん、これからどうするんですか?」ジャハトは、少し考える素ぶりを見せる。「そうだね、君の好きな場所に連れて行ってあげるよ」ミアは、ジャハトの返答を聞くと、笑顔で言った。「本当ですか!?じゃあ、海に行きたいです!」ミアがそう言うと、ジャハトは、ミアの手を握ると、走り出した。駐車場に向かい、バイクにまたがりエンジンをかけると、エンジンをふかし、勢いよく発進した。安全に目的地を着きたいので遠い別ルートで行こうとする。

しばらくすると、山に入り、ミアは、少し不安になり、ジャハトに聞く。「ジャハトさん、道あってますよね?」ジャハトは、ミアの問いかけに、答えず、ただ真っ直ぐ走っていた。ミアは景色を見渡すと珍しい鳥を見かけたのでジャハトに知らせる。

「ジャハトさん! あれなんの鳥でしょうか? 初めて見ました!」ミアの指差す方を見ても、ジャハトはずっとその先を見ていた。ミアは、不審に思ったけどしばらく景色を楽しんだ。ジャハトはしばらくその先をずっと見てた。それは不安で寂しく、悲しい目をしながら。変な質問を聞いた。「ミア、何か楽しかった思い出はあるかい?」ミアは、少し考えてから答える。「友達と遊んだ事とか、あとは、家族旅行に行った時の事でも話しましょうか?」ジャハトは、静かに聞く。ミアは、続けて話す。「まずは、遊園地に行って、ジェットコースターに乗って、お化け屋敷に入って、お昼は、フードコートでみんなで食べて、夜は花火をして、それで……」ミアは、涙を流しながら話していた。

「そうか」

ジャハトは聞く気がない態度で返答をした。ミアは、泣きながらジャハトに訴えかける。「私、本当はもっと遊びたかった。もっと沢山お喋りしたかった」

ジャハトは無言で黙っていた。

あることを思い出した……。あれは数年前、マークラス組織の部下二人が戦死した時だ。あの時は悲惨だった。仲間が次々と殺されていき、最後に残ったのは、俺と、あの子だけ。俺は、あの子に最後の思い出として公園に転送させた。そしてそこで約束を交わした。必ず、生きて帰ろう。その時は嬉しかった。これで最後だと思えば思うほど、悲しみよりも、喜びの方が勝った。だが、現実は非情なもので、彼女は死んだ。通信が途絶えた2日後に遺体となって発見した。死因は、心臓による致命傷と出血多量死だ。彼女の遺体はウイルスの命令で公園の土に埋めた。あの時、判断を間違わなければ、こんな事にはならなかったかもしれない。ジャハトは、後悔しながら、運転を続けた。もし、この子が同じ様に殺されたら、俺と同じ気持ちになるのか……? いや、俺は俺としての役目を果たさなくては。絶対にミアが犯人じゃないと誓える。

 ミアは、泣いていた。しばらくしてミアは、ジャハトに話しかける。「ジャハトさん、私は今とても楽しいです」ジャハトは、ミアの方を見ると、涙の跡があり、目が赤く腫れていた。ジャハトは、ミアに話しかける。「ミア、少し方角を変える」ジャハトは、ミアの肩を持ち、方向を変え、また走り出した。ミアは、ジャハトに、感謝の言葉をかける。「ありがとうございます」ジャハトは、返事をしなかった。ジャハトは、無言で、ひたすらに走った。

ミアは、不思議に思い、ジャハトに質問する。「ジャハトさん、目的地まで後どれくらいですか?」ジャハトは、マップを見ると、現在地はCSPA本部の近くだった。あそこは海ではないけど、代わりに湖がある。ジャハトは、その場所を知っていた。ジャハトは、ミアに、目的地を教える。「ミア、もうすぐ着くよ」ミアは、楽しみに待っていた。数分して、到着すると、そこには大きな湖があった。ミアは、感動の声をあげる。ジャハトは、ミアに質問をする。「ミア、海の景色見終わったら今から旅行に行かないかい?」ミアは、少し戸惑った様子だったがすぐ理解し、答える。「はい!行きたいです!」ミアは、笑顔で答えた。


第9章あの時の思い出を最後に。

ミアとジャハトはしばらく水の掛け合いをしていた。ミアは、少し疲れて休憩していた。ミアは、ジャハトに声をかける。「ジャハトさん、楽しいですね。」ジャハトもミアに、声をかけた。「ああ、そうだな」二人は楽しく話していたが、ミアは湖に飽きてジャハトに話す。「ジャハトさん、そろそろお昼にしませんか?」ジャハトは、腕時計を見て時間を確認する。時刻は午後1時だった。ジャハトは、ミアに、昼食を提案する。「遊園地に行くか、そこの売店で食べよう」ミアは、ジャハトの提案に賛成する。

ミア達は、ジャハトの運転で、遊園地に向かった。バイクを走る中、会話する二人。


目的地はCSPAから1キロメートル離れた遊園地に着き、ミアが、ジャハトに話し掛ける。「ジャハトさん、私、観覧車に乗りたいです」ジャハトは、すぐに返事をした。「分かった」ミアは、ジャハトに、お礼を言うと、ジャハトは指を鳴らすと灯りが点き、観覧車が動き始め、人間に変装したウイルス達が、ゴンドラに乗っている。ジャハトとミアの乗っている観覧車は頂上に到達し、ジャハトは、ミアに声を掛ける。「ミア、綺麗な風景だな」「はい!」

ミアは、満面の笑みで答える。その景色を肘でテーブルを付き、じっくりと楽しんでた。そして、下に着くと、ミアは、走り出し、メリーゴーランドに乗る。ジャハトは係員にミアを傷つけないように細心の注意を払ってくれと頼むと、了承してくれた。そして、メリーゴーランドは回り始める。ジャハトは、ベンチに座ってミアを眺めていると、後ろの首元から鎌を向けられた。

「やっと見つけた。ジャハト」

その声はソアラだった。ジャハトは、首を動かさず、話しかける。「アルは居るか? そいつと話をしたい」ソアラは、少し黙ると、鎌を下げ、ジャハトの隣に座った。

「何故アルと話をするんだ? ウイルス相手にアルと話なんて、お前は何を企んでいる?」ソアラは、ジャハトに質問するが、ジャハトは無視して、ミアの方に視線を向ける。

ミアは、楽しそうに、メリーゴーランドで遊んでいた。

ソアラは察したのか、ジャハトの耳元で囁く。

「もしかしてミアを誘拐するつもりなのか?」

「全く……CSPAの職員は何も学習しない奴らだ。こいつはウイルスの可能性が高いが、十分な証拠が揃ってない。だから今俺がミアを武装解除しても何も意味がないんだよ」ジャハトは、ため息をつく。ソアラは、ジャハトに質問する。「ミアをどうするつもりだ」ソアラは、ジャハトに聞く。ジャハトは、ソアラに質問を返す。「それは白黒はっきりついたら教えてやるよ」

「殺すのか? ミアを」

ジャハトは、無言で肯定すると、ソアラは、ジャハトに言い放つ。

「じゃあ、私はミアを守る」

ジャハトは、呆れた表情で、ソアラに返答をする。

「はぁ、まだ話を聞いてないのか? 俺は、ミアを殺すつもりはないし、殺したくもない。しかし、それが世界に崩壊をもたらすなら、話は別だ。だから、俺がミアを殺した後、俺が殺そうとしても別に良い。俺は俺としての平和を望んだだけだ」

ジャハトは、ソアラに忠告をする。

「ミアは私が絶対に守る」

ジャハトは、ソアラに質問する。

「ミアを生かす理由は何だ?」

ジャハトは、答えを待っていると、ソアラは、ミアに聞こえるような大きな声で答える。「ジャハトの好きにはさせない」ジャハトは、ため息をつき、ソアラに質問する。「アルは何処にいる」ソアラは、アルの場所を教えると、ジャハトは、感謝する。

「操作にご協力頂き、誠に感謝いたします」ジャハトは、ソアラに礼を言いメリーゴーランドを降りてきた、ミアに近づき、話し掛ける。「ミア、少し用事が出来てしまった。待っていてくれるかい?」ミアは、メリーゴーランドから降り、ジャハトの横に座り、ジャハトに言う。「分かった。でもなるべく早く帰ってきてね」ジャハトは、ミアの頭を撫で、立ち上がると、ソアラの方を向く。

「おや? 君も、ミアの味方なら慰めの言葉でもかけてやればいいじゃないか」ジャハトは、ソアラに言うとソアラはハッと気付き、顔を赤くしながらミアの方を向いて、「ミアちゃん、頑張った。偉いよ」と褒める。

ソアラは、ミアに優しく微笑みながら話す。

ミアは、ソアラに顔を傾けながら答える。

「え? あ、ありがとう?」

ミアは、ソアラに抱きつく。

ソアラは、ミアの背中をポンポンと叩く。

「ソアラ、側調だ」

ソアラは、ミアの事を離すと、ソアラは、ジャハトの後を付いて行く。

遊園地から離れた付近にバイクを置いてあり、ソアラの案内の元、とある場所まで向かう。

ソアラは、ミアが居なくなったことに寂しさを感じながらも、ジャハトはバイクに乗るよう促す。ジャハトは、ソアラにヘルメットを渡す。ソアラは、ヘルメットを被り、ジャハトの後ろに乗って、目的地に向かう。

ジャハトは、ソアラに質問する。「ミアは、どんな子なんだ?」ソアラは、ジャハトにミアの事を話す。

「とても大人しくて、いつも笑顔で、皆を癒してくれる存在」

ジャハトは、その言葉を聞き、ため息をつく。

「ミアは、確かに、お前らから見れば、優しい子に思えるだろう。だが、ミアが本性を隠してる可能性もある」

ソアラは、その言葉を気にせず、ジャハトに答える。

「そんな事は分かっている。ミアは、私達の前では、いつも明るく振舞っている。でもそれは演技かもしれない」ジャハトは、ため息をつき、ソアラに質問する。「ミアは、お前達に何か隠し事でもあるのか?」ソアラは、首を横に振る。「分からない。ただ、ミアがなぜ捕まったのかは理解できなくて」

 ソアラは、ミアから聞いた話を思い出す。

「俺が勤めてたCSRの掟は絶対に、犯人と思われるウイルスと、犯人の協力者を見つけ出す事が最優先事項だ」ジャハトは、ソアラに言い聞かせるように話す。「もし仮に、ミアがジャハトの敵だとしたらどうする」

ソアラは、ジャハトの話を聞いて、考え込む。

ソアラは、ジャハトに聞く。「ジャハトは、ミアをウイルスとして疑うのか?」ジャハトは、ソアラに答える。「ミアがウイルスだとしても、証拠がない以上、俺にはミアを殺す権利はない。それに俺は、ミアがウイルスとは思っていない。ウイルスにしては、あまりにも出来すぎている。だから俺はミアじゃないと信じたい」ソアラは、ジャハトの顔を見て驚く。「ジャハト、泣いているの?」ジャハトは、涙目になっていた。

ジャハトは、慌てて、手で目を擦る。そして、再び走り出し、ソアラは、ジャハトの背中を見つめる。ソアラは、ミアを信じる事にした。

ソアラは、ジャハトの背中を見ながら、下を向く。

「ウイルスってただ感染して金を巻き上げる人間だと思い込んだけど、本当は違うのね」ソアラは、ジャハトに対して、申し訳ない気持ちになる。

「あぁ、金目当てでウイルスになった人が大半だ。俺は金目当てでウイルスになった訳では無い。だから、ミアがウイルスだと言うことはあり得ない」ソアラは、ジャハトの話を聞いた後、ある疑問を抱く。「ミアちゃんがウイルスだったら、ジャハトは、ミアちゃんに勝てるの?」

ソアラは質問をするとジャハトは、答える。

「数値的には証明済みだ。まだサーバーを破壊する力は持ってない。しかし、あくまで数値的な話だ。実際に戦えば、負ける可能性の方が高い」ソアラは、ジャハトの言葉に納得する。

ソアラは、ジャハトに言う。

「それは、この世界に崩壊の兆しがあるということ?」ジャハトは、首を縦に振り、肯定する。

 ソアラは、ジャハトに尋ねる。「ジャハトは、ミアちゃんが、ウイルスではないと確信できる理由は何?」ジャハトは、少し間を置いて答えた。「偽りの顔じゃなかったから」ソアラは、ジャハトの発言に違和感を覚える。ソアラは、ジャハトに質問をする。「ジャハトは、ミアちゃんの事を知っているの?」ジャハトは、ソアラの質問に答える。「知らない。けど、俺と一緒に生活して楽しそうな顔をしてた。それが、ミアの本当の姿なんだと思う」「じゃあ、本当は何かの目的でウイルスになってるかもしれないよ? ウイルスの目的なんて分からないでしょ」ジャハトは、ある一枚の紙をソアラに渡した。ソアラは、その紙を見ると、図形と数字とコードが書いてあるデータがあった。ソアラは、ジャハトに聞く。「これは?」ジャハトは、答える。「少し、ミアのデータを採取した」ジャハトは、そのデータの説明を始める。「ミアの身体からブルーライトと同じ360nmの波長が検出された。つまりミアの身体には、ブルーライトと同じような物質が存在するということだ。それを隈なく調べると結果が、ミアが使ってると思われるウイルス作成PCのOSのコードが見つかった。それとミアの指紋が一致。これで分かったか?」ソアラは、ジャハトに聞く。「そのデータは、どこで手に入れたの?」ジャハトは、ソアラに答える。「おやおや? さっき聞いてたました? 私は元CSR長官ですよ ?この程度の情報を手に入れる事など造作もない」ソアラは、ジャハトの話を聞いて、呆れる。ソアラは、ジャハトに聞く。「ミアちゃんのデータを取るのは、違法じゃないよね?」ジャハトは、ソアラの問いに答える。「もちろん、犯罪行為じゃない。ただ、CSRの人間としては、評判が落ちるだろうな」ソアラは、ジャハトに謝る。「ごめんなさい」ジャハトは、ソアラの謝罪を聞き、笑顔で言った。「大丈夫ですよ。私も同罪ですから」ソアラは、景色を見ると、ジャハトに止めるように命じる。

「ジャハト、ストップ」ソアラは、ジャハトの肩を掴み、ジャハトを止める。ソアラは、ジャハトに命令させた。「ここがCSPAの本拠地なので危険な武器と貴重品を預かります」

「全く……私はただの人間だよ?」

ジャハトは渋々ソアラの命令に従う。全ての貴重品と武器を預けると偵察部隊の職員が銃口をジャハトに向けてきた。職員は、ジャハトに言う。『何故ここにジャハトが居る!?』ジャハトは、職員に言う。「いやー、ちょっと、お散歩でね」ソアラは、職員に言う。「この人からアルに用事があるらしいから、案内してあげて」

ソアラはCSPAの手帳を見せると職員は二人を案内した。

ドアのパスポートに触れるとロックが解除され、中に入る。

ジャハトは辺りを見渡し、感心していた。

「ふーん、中々綺麗な所だな」

「綺麗なだけでまだ修復してない場所もある。それにここは、CSPAの本部だから、敵が攻めてきた時にすぐ対処できるように常に戦闘態勢でいる必要がある」ソアラは、ジャハトに説明する。ソアラは、ある部屋の前で立ち止まる。扉を開けると、そこには、データ管理室。そして、ソアラはドアをノックする。返事が無い。ソアラは、もう一度ノックする。しかし、反応は無い。ソアラは、ドアを開けようとすると、レイラがボルトアクションライフルを肩に置き、煙草を咥えながら話しかけた。

「ジャハト、何しに来た? 数年前の脅威をまた起こす気か?」

ジャハトは、レイラの質問に答える。「ミアちゃんに会いたいんだけど?」

 レイラは、ジャハトの言葉に疑問を抱く。「何故アルを? あいつは、今アリサが居なくて部屋で引き籠もってるぞ」ジャハトは、首を傾げる。「うーん、なんでだろう。まぁ、いいや、通してくれるかい?」ソアラは、ジャハトに聞く。「どうするのですか?」ジャハトは、答えを言う。「強行突破だ」ソアラは、呆れた顔で言う。「はぁ……」ジャハトは、ソアラを押し退けて前に出ると銃弾が顔の側に当たっていた。

「なぜ攻撃するのです? 我々はアルを会いに遥々ウイルスの本拠地から来たのですよ?」

レイラは、ジャハトの質問を無視して、ジャハトを睨み付ける。

「動くなよ。お前の行動次第では、ここで殺す」レイラは、ジャハトの額に銃口を当てている。ジャハトは、手の平を見せ、落ち着くように促す。「まぁまぁ、待ってください。我々は、アルに危害を加えたりはしないし、用事があって来たんです。信じてください」

「そうです。この人はアルに用事があるのです。なので銃を降ろして離れてください」ソアラは、レイラを説得し、レイラは、ソアラの説得に応じ、銃を下ろす。

二人はカウンター横の扉を開け、細い廊下に案内される。

奥に進むと大きな扉があり、レイラは、ジャハトの顔を見る。

ジャハトは、大丈夫だと、手で合図をする。

ソアラは、扉を開ける。

そこには、アルが写真を見て悲しそうな表情をしていた。アルは、こちらに気付いたのか写真を机に置く。アルはジャハトの方を見ると、驚きを隠せないでいた。ジャハトは、アルに向かって言う。「久しぶりだね。製造番号78652君」アルは、震えた声で話す。「100086E△……どうしてここに?」ジャハトは、アルの元に行き握手を求める。アルはそれに応じる。「君と同じ製造してからもう10年になるかな。元気にしてたか?」アルは、少し間を置いてから答える。「はい、お陰さまで」ジャハトは、笑顔で話す。「それは良かった。じゃあ、早速本題に入ろう。単刀直入に言うと、私達と一緒にウイルス退治をして欲しい」アルは、ジャハトの提案に眉をひそめた。「何故でしょうか?理由を教えていただいてもよろしいですか?」ジャハトは、ため息を吐きながら言う。「理由は、単純明快。ウイルスの調査に必要な証拠が揃ってないから。そこで君の力が必要だと思ったからだ」アルは、ジャハトの話を聞き、納得した様子で話し始める。「分かりました。協力させていただきます」ジャハトは、嬉しそうに笑い、二人は合意の握手をした。

早速アルにデータを渡し、作戦を伝える。

アルはサーバーと、周波数等の調査係。ジャハトはウイルスをあえて集めてPCが壊れないように制御する。ソアラは二人のデータを採取し、計算と分析を行う。

ジャハトは時計を見て、開始した。

午後2時00分00秒、開始。

ジャハトは、ウイルスのコントロールを始める。次々とウイルスはジャハトのPCに侵入し、徐々にカクつきが目立ち始めた。アルは、それに気付き、ジャハトの方を向く。ジャハトは、手を振る。大丈夫だよ。というサインだ。アルは、また作業に戻った。1時間後、ウイルスはジャハトのパソコンを完全に乗っ取られ、死のスクリーンと化した。ジャハトは作業を終わり、二人も調査が終わった。ジャハトは、アル達の方へ向き、ありがとうと言う。そして、三人は握手をした。

 ソアラは、ジャハトに説明する。「アルが調査したウイルスから来た周波数と場所と情報はどれもデータ通り、ミアを特定することが出来ました。恐らくミアはPCではない自作のリモコンを使い、遠隔操作で別のサーバーか

ら電波を特定し、その電波を使って自作したウイルスのファイルを回収し、ジャハトに感染したと思われます。なので、簡単に言いますと、ミアはウイルスを回収次第、他人のウイルスを感染する準備が出来てるということです」「なるほど、面白い発想だな。」ジャハトは関心しながら、ソアラの説明を聞く。アルは疑問に思ったのかソアラに質問する。「でも、そんなこと可能なの?だって、自分で回収したウイルスはセキュリティとか何もないから、自分に感染するかもしれないのに」「うーん、そこまでは分析不可能だったよ」ソアラは、そう答える。3人共答えが導けず考え込むとジャハトはあることを思い出した。自らジャハトのPCに感染したときミアは二つのアドレスを偽装って誤魔化してた。

もしかしたら……。

ジャハトは微笑み、あることを言う。「多分だけど、このウイルスは別サーバー用とリモコン用として二つ作ったんじゃないかな。ミアは天才ハッカーだ。ウイルスを作るのは容易いだろう。ただ、ウイルスは作ることは簡単だが、それをどう使うかを考えてない」

ジャハトは解説と説明を続ける。

「まず、ミアは別サーバー用のPCアドレスを保存し、圧縮ファイルと共に保管。その後、ミアが自分で制御装置を作り、ウイルスが出入り可能なプログラムを入力し、リモコンを完成させた。その後、このサーバーに入って来たら別サーバーのアドレスを入力し、ウイルスごと圧縮したファイルを回収し、あとは脆弱性の低いPCにボタン一つで感染すればいい。だから我々CSRは、そこを見落としてたんだ。あくまで捜索するだけだから身体を調べる必要はないっと」

ジャハトは、自分の推理を話す。ソアラは、なるほど!と納得していた。

アルも納得し、あることに気づく。「ジャハトさん、その仮説が正しいとすると、何故それを知ってるのですか? ウイルスはミアにしか作れないはずです」

ジャハトは椅子に座り、足を組みながら、ソファにもたれ掛かり話し始める。

「確かにそうだ。ミアのウイルスを考察と、あまりにも出来すぎてる。しかし、ある偶然で分かったことがある。それは、数年前の脅威のウイルスを調べてたら、ウイルスに感染した。もちろん仮想PCで良かったけど珍しいウイルスに感染してしまった。面白い話だろ? 自作コマンドでウイルスの情報を調べてると暗号がずらりと並んでた。その暗号が、これだ」ジャハトはポケットから紙を取り出し、机の上に置く。その紙にはこう書いてあった。

【VEN_8O86&DEV_3249】

【PCB800168】

ジャハトは椅子にもたれながら振り向いて言う。

「これは、ミアのPCと制御装置のアドレスだ」ジャハトは、その暗号をアル達に見せる。アルとソアラは解読すると、PCのサーバーと制御装置のサーバーを検知した。

「最初は暗号化のせいで解読する時間が掛かったが、やっと解いたよ。その暗号を解読したらデータをまとめて封筒に入れてくれ」

ジャハトは、そう言い残して部屋から出て行った。

 アルとソアラは、早速データの資料を作成に取り掛かる。アルとソアラは、データをUSBメモリーに移し、ジャハトの元へ行く。ジャハトは、モニターを見ながら何かを考えていた。アル達はジャハトの後ろから声を掛ける。

ジャハトは、驚いた様子でアル達の方へ向く。アルは、先程作った資料を渡す。ジャハトは、受け取った資料を読み始めると文句を言う。

「あー、ここは図形にしたかったな〜」

ジャハトは、アルとソアラに質問する。「なんで、このウイルスはこんなに複雑になってるんだ?」アルとソアラは、その質問に対して、ジャハトが答える。「ミアは、ウイルスの解析や弱点がバレないようにするために複雑化にしたと思う」ジャハトは、腕を組んで考えている。「でも、ミアは電脳世界の事を何も知らない素人だ。だから、こんな複雑なウイルスを作るのは無理だと思う」アルは、反論する。「じゃあ、誰がこのウイルスを作ったのですか?」「ミアの姉かミア本人しかいない」ソアラは、自信満々に答えていた。

「なぜそう言い切れるんだ? 根拠はあるのか?」ジャハトに質問するとソアラは、少し考えると口を開く。「ミアは、電脳世界に転送される前に姉の話をしていた。その時、姉の名前を教えてくれた。姉の名前は、アリビラだ」

アルは、その名前を聞くと驚く。「えっ! アリビラ!?」ジャハトは、アルの反応を見て気になる。「知ってる名前なのか?」アルは、首を縦に振る。「はい、始めてスパイウイルスが登場した時代に名前として使われていました。ウイルス名は、アリビラーでした。データに感染することが多く、特にコアを破壊寸前に追い詰めました。ウイルスの特徴は、ウイルスに攻撃された時、ランダムで、あるプログラムを実行する。それは、ウイルスに感染したコアを破壊する事です」「なるほど、その姉に受け継がれ、ミアに受け継がれたという訳だな」アルは、肯定する。ソアラは、話を戻す。「それで、ミアが犯人じゃないとしたら誰なんだ?」アルは、答える。「電脳世界に転送させたのはミア一人だけです。つまり、ミアだけしかいません」

ジャハトはアルの話に少し気になった。

「アル、なぜそいつを転送させたんだ? 最も理解できない行動だ」アルは、答える。「電脳世界に転送すればウイルスを倒すことが出来ると考えたからです」ジャハトは、呆れる。「はぁ〜 君はいつも人に頼るな」

アルは、ジャハトの言葉を返す。「あなたも人に頼ってばかりでしょう」ジャハトは、言葉が詰まる。ソアラは、会話に参加する。「電脳世界でのウイルスを倒せる方法は一つしかない。ウイルスを退治する。それしか方法はない」アルは、ソアラに聞く。「どうやってウイルスを退治するんですか?」ソアラは、答えた。「そこはジャハトさんに任せる」ジャハトは、ソアラの発言を聞いて突っ込んだ。

「君も、人のこと言えないね」

「ソアラさん、貴方も共に戦うのですよ」

ソアラは、苦笑いをすると息を整え、覚悟を決めた。「分かったよ。私達でウイルスを退治しよう! まずは、遊園地に戻ってミアを探すぞ!」二人は、急いで、ミアを探しに向かった。

ジープに乗り込み、ソアラは運転席に座りエンジンをかける。そして、アクセルを踏み込み、車は勢いよく発進して遊園地に戻る。

アルはソアラと会話して、ジャハトは窓を開け、仮面の口から煙草を吸いながら話しかけた。

「二人はこのCSPAに入って何年目だ?」

ソアラは、運転しながら答える。

「私は、一年と半年ぐらいかな」

 アルは、質問に答える。

「私は20年目です」ジャハトは、話に割り込む。「そんなベテランなのか」アルは、話を戻す。「はい、ベテランなのですが、最近、CSRの捜査が活発になってきて収入が大赤字です」

煙草の煙を吐くと答えを出した。

「奴等の目的は、何なのか理解できないが、経験でいうと酷い職場環境だ。飯は不味いし、俺の部下以外やる気ないし、夏は40度を越す気温だし、冬はマイナス10度の極寒で仕事は地獄そのもの、それに、彼等の任務の評価も最悪だよ」アルは、ジャハトの話を真剣に聞いている。ジャハトはあの人のことを思い出すと舌が過敏になり、煙草が不味くなってきた。ジャハトは、この場から逃げようと話を終わらせようとした。

「まあ、その話は後でゆっくり話すとして、ウイルスを倒そうじゃないか」アルは、ジャハトの話を聞き終わる前に、話を切り出した。ジャハトは、驚いた表情をしてアルを見た。ジャハトは、アルに聞く。「なんで、急にやる気になったのです?」アルは、真面目に答える。「さあな、早く任務を終わらせて美味しい飯を食べたいからかもな」ジャハトは、笑顔を見せると、アルは呆れた顔で答えた。「変わった人ですね」

ソアラは、ハンドルを握ると、車を加速させ、目的地に急行した。

そして、遊園地に戻ってきた。三人はドアを開けると、ジャハトはソアラに手を曲げる動作をした。

「武器を返してくれ」

ソアラは、トランクの中からマシンガンと弾薬が入ったバックを取り出し、ジャハトに手渡した。ジャハトは、手渡すと、アルは、車の中にあった予備の銃を渡す。ジャハトは、アルから受け取った銃弾をポケットに入れる。ソアラは、車から降りると、ミアを探す為に辺りを見回しながら走り出した。

ジャハトとアルもついていき、探すことにした。

すると、観覧車の上に景色を見るミアを発見した。アルは、ミアに向かって叫ぶ。

「ミア!こっちだ!」

アルの声に気付いたミアは、アル達の方へ降りてきた。

ミアは、アル達の方へと向かってくる。

ソアラは、ミアに近づき、抱き締めた。「無事で良かった」ソアラは、涙を浮かべると、ミアを離すと、次はジャハトに近づいて抱きしめた。離すとジャハトはミアに話しかける。

「遊園地楽しんだか? ミア」ジャハトは、笑顔で質問する。ミアは、ジャハトの胸に頭を擦り付ける。「楽しかったよ!」ジャハトは、フッと微笑むと、頭を撫でる。ジャハトは、ソアラに目をやると、ソアラは口を開く。「ミアちゃんは無事だった。これからどうする?」ソアラは、ジャハトを見ながら言うと、ジャハトは、頭を回転させながら答えを出す。

「最後に、海に行って夕日を見よう。そこで『all day』だな」

ソアラは、賛成する。

「ほんじゃ、車に乗ろうか」ジャハトは、ミアの肩を触る。ミアは、首を縦に振ると、ジャハトと一緒に歩き出し、ソアラの後ろを付いていった。ソアラは、振り向くと、ジャハトの背中を叩いた。「すまない……だが、こうしないと……」ジャハトは少し照れくさそうな顔をして言った。

ミアは、車に乗ると、すぐにジャハトの膝の上に眠りについた。ソアラは運転席に乗り込むと、エンジンを掛け、車を発進させた。

ソアラは、運転をしながら会話を開始する。

「随分気に入ってるね」ジャハトは、ミアの髪の毛をいじると、ソアラの質問に答える。「まあ、この子は可愛いからな」ソアラは、ハンドルを握りながら話を続ける。「確かに、可愛らしいよね」ソアラは、横目でジャハトの顔を見ると、ニヤリと笑みを見せた。

「今日は大変な一日だったな。アルのお陰でミアを特定出来るとはな」ジャハトは、座席にもたれ掛かり、窓から見える外の景色を眺めていた。ソアラは、ジャハトの話を真剣に聞く。「でも、ミアが無事で良かったよ」ソアラは、少し笑いながらジャハトの方を見た。すると、ジャハトは、ミアの表情を見て悲しくなってきた。「これは、弁護士に呼んでもダメだな」ジャハトは、小さな声で呟くと、窓の外の流れる風景を眺め続けた。

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