Ver2.1終章前半

その頃、CSPAの連中は任務が遅れてることに不安を感じていた。

レヴイナも俺も焦りで足を進めるしか考えて居られなかったその時「少佐! 大変であります!」

と叫んで兵士が駆けつけて来た。

「ど、どうしたの?」

「――ス、スピジュンが戦死しました」

「――う、嘘でしょ!?」

動揺も抑えきれない状況下だったがさらに悪い事を言われた俺達で冷静を失うしか他ならなかったからだ 。

でも、何故スピジュンが? 確かにスピジュンにはもう、戦う力は残されていないはず。でも、何かまだあるとしたら……。

嫌な予感を感じた瞬間。

『警戒レベル3!! ウイルスが来ます!!』

警報が鳴り響くと同時に、停電が起きる。レヴィナは何か嫌な予感がした。懐中電灯を照らし、

「すぐ制御室に向かって!!ウイルスを早く止めないと大変なことが起きる!!」と命令される。

俺ら対策班は別ルートにウイルスを侵入するのを止める。

その偵察班は制御室に急いで向かう。



 そして、俺は対策班に着いてく。

エレベーターは故障して動かないため地下20階に行き、そこから階段で降りていく。

「何だか……空気が重いな……」

「気を付けろ大輝。どんな敵が待ち構えてるか分かんねぇからな」

ジューコフは銃を構えながら慎重に進む。

「それにしても、どうしてウイルスがここに来るなんて……。ここのセキュリティーシステムは完璧だったはずなのに」

レヴィナは不安そうな表情を浮かべて、そう呟いた。



地下20階に着くとその光景は地獄絵図でしかなかった。倒れている兵士の死体、タンクのガラスは割れていて液体が漏れている。

「こりゃひでぇな」

「ウイルスのせいか......!?」

ジューコフの不安をあおる発言が的中し、振り向くとウイルスが襲いかかってきた。

「危ない!!」

ジューコフが俺を突き飛ばし、何とか避けることが出来た。

しかし、ただのウイルスではない事は分かった。

「おいおい、こいつはやべぇぞ」

「何だあれ……」

「見たことねぇウイルスだな」

それは、機械的な身体をした怪物で右腕には巨大なドリルが装着されていた。

「大輝!ジューコフ!このウイルスは危険すぎる、私に任せて二人は制御室に行って! ここは私が食い止める」

レヴィナはウイルスに向かって構えると、ウイルスはレヴィナの目の前まで移動した。

「速い!?」

「危ない!!」

俺は咄嵯にレヴィナを助けようと、剣でウイルスの攻撃を弾く。

「――ジューコフ!! 制御室に急いで!! 私はこのウイルスを足止めする!!」

「お、おう! 死ぬんじゃねぇぞ!」

「大丈夫、私は死なないよ。だから、大輝は制御室に急いで」

「あぁ、気を付けてくれ」

「うん」

俺は制御室に急いで向かう。

「おい、大輝」

「何だ?」

「生きろ。絶対に生きるんだぞ」

「分かってる。お前もな」

「あぁ、じゃ、また会おうぜ」

ジューコフは制御室に向かって走り出す。

俺はそのまま制御室に向かう。

制御室に入るとそこには一人の少女が座っていた。

この状況、子どもがここに居たらとても危険だ。

「誰だ? ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」

少女が振り向くと、その顔は人間ではなかった。全て機械で出来てた。

「ア......ガ......」

言葉をまともに喋れてない。まるで壊れている人形だ。

「えっと、君は?」

「コロス……」

「はっ!?」

俺は少女に思いっきり蹴られた。しかし、痛覚が感じられなかった。

これは、どういう事だ……。

「おい、君、何をしたんだ」

「オマエ、シネ」

少女は俺に向かって攻撃してきた。

爪で攻撃してきたその時、銃声が鳴り響いた。頭に命中した破片が飛び、倒れた。

「大輝さん! 大丈夫ですか!」

シオンだった。

「あぁ、大丈夫だ。ありがとう」

「良かったです。大輝さん、とりあえず我々がこのウイルスを食い止めないといけませんね」

廊下から先は広く、大きな部屋があった。

そこには大量のウイルスが現れた。

「おい、なんだこれ……」

「恐らくウイルスが暴走し、ここに居る全員を殺そうとしているんでしょう」

「くそ……なんでこんなことに」

俺はこの光景を見て絶望した。2人でどうやって対象すればいいのか分からない。

「何があっても絶対にそなたをお守りします」

シオンが俺に言った。その目には強い気持ちで溢れてた。だが、もう既にウイルスが俺達の所に集まって来た。

「やるしか、ないか」

俺はそう思い、剣を取り出し、攻撃を開始する。シオンも同時に行動を開始しようとした。

しかし、切っても殴ってもすぐに直っていくのだ。どうなってんだ……。すると、急に天井から機械のような化け物が降りてくるのと同時に電気が一瞬消える程の強い衝撃音がなったと思うと何かが割れる感じがあり煙が出て来ていた。よく見ると、天井には大穴が空いていた。そこにあったはずであろうコンクリートが崩れ、地面に破片を転げ落ち、穴の奥からは光が見えるくらい綺麗に見えていた。まさかと思いつつシオンを見ると銃口を向けながら無感情そうな表情をしているものの額からは汗をたらしていた。こいつが攻撃したのは有り得ない。

目の前の大きな蜘蛛が沢山現れて床に転がった。それが集まり、大きな姿になったその時シオンの持っていたMP‐47拳銃が銃声を響き渡らせると共に蜘蛛達に向かって放ち続けていく。その姿を見るだけでも分かる、この動き、まるでロボットのようであるかのように見えるほど無駄がなくそして美しいのだ。撃ち切ったと思われる時であった。

「終わりましたよ。逃げてください」

さっきまで銃口に溜まっていた火薬が完全に無くなっていたのだ。

「シオン......後ろ!!」

指示を伝えたがシオンは振り向かず、前を向いていた。

大量のウイルスに飲み込まれ、シオンは消えていった。

「シオン!!......くそ!!」

すぐ、ウイルスから逃げるようにして俺は走った。

俺はこの時、自分の無力さを恨んだ。

そして、外に出ると、赤い空が広がっていた。

「何だよこれ……」

俺はそう呟き、周りを見渡すと、街には死体が転がっていた。

横にはぜネルが怯えていた。

「大丈夫か? 何があった?」

「偵察班の隊員が全滅したんだ。敵が何処にいるのか分からない」

「そうなのか……。なら、俺が見てくる」

俺は立ち上がる瞬間、後ろから誰かが歩いてくる音が聞こえた。

その音に振り返ると、そこにはカマキリの化け物が立っていたのだ。

「ウイルス!?」

「気を付けて! ただのウイルスじゃないよ!あの鎌はジャハトの武器、【死神の鎌】だよ!」

「死神の鎌だと……? そんなの聞いた事がないぞ……」

「とにかく気をつけてね、ジャハトがイリアスの身体に寄生させて操っているから、攻撃は全部クリティカルヒットだから、油断しないで」

「嘘だろ!?」

すると、鎌を持つカマキリの攻撃が襲ってきた。

「まずい!?」

その時、高速で動く何かがカマキリの攻撃を弾いた。

「大丈夫ですか?」

それはレヴィナだった。

「レヴィナ!無事だったのか!良かった……」

「はい、私はこの通り元気です。それよりあの敵、イリアスですね……。恐らくジャハトが操作しているはず」

レヴィナが助けにきてくれたお陰でぜネルが喜ぶ。

「姉ちゃん!ありがとう!助かったよ!」

「そろそろ姉ちゃん呼ぶのやめてくんない」

レヴィナはあだ名で呼ばれて呆れてた。

すると、ゼネルがレヴィナに言った。

「姉ちゃん! 後ろ!危ない!」

「えっ?」

そこには鎌を持ったカマキリがレヴィナに攻撃しようとしてた。

「しまった!」

間一髪、カマキリの鎌を弾く。しかし、あまりの強さで手が痺れる。

カマキリは、鎌をレヴィナの首元に当るが剣でガード......が、カマキリが手の位置を変え、物凄い勢いでレヴィナを吹っ飛ばそうとした。

地面に激突し、意識を失ってしまった。

まさかレヴィナが負けるなんて思いもよらなかった大輝は膝をついた。鎌を引きずりながら大輝に近づく。

大輝に近ずかせない為、ゼネルが銃で応戦、しかし苛立ったのか鎌を投げ、ゼネルの腹を刺した。血を流し、倒れ、動けなくなった。

「嘘......だろ......」

あまりのショックに大輝は声も出なかった。

まだゼネルは未熟で、戦闘経験もない、でもそこがゼネルらしいとこでもある。

レヴィナは気絶し、ゼネルは瀕死、そして目の前には巨大なカマキリが大輝を見下ろしている。

「嘘だろ」

もう絶望しかなかった。

すると、いきなり地面が揺れ始めた。

「地震?」

すると、気絶してたレヴィナが目を覚ました。

「レヴィナ!?」

「A11678、起動まで1......50......100......再起動、完了。システム良好。コンソール......完了。システム設定......全ての設定を最大化。A11678レヴィナ起動しました」

レヴィナは起き上がり、剣を構えた。

「レヴィナ?大丈夫なのか?」

大輝はレヴィナを心配するが反応せず、カマキリの方に近ずいた。さっきの勇ましかった表情が無表情になり、まるでロボットのように歩き出した。レヴィナが近づくと、鎌を振り下ろしてきた。

レヴィナはそれをジャンプで避け、空中からカマキリの顔に向かって飛び蹴りした。

顔に直撃し、よろめいたがすぐに鎌を構え、攻撃してきたが、それをかわした。

今までのレヴィナとは違った動きをしていた。

「レヴィナがあんなに動いて、それにあのカマキリの攻撃を避けている……」

レヴィナがカマキリの攻撃を上手く回避し、カマキリが振り下ろした鎌の先にある木が切断され倒れた。

レヴィナがカマキリの懐に入り、腹を斬りつけた。カマキリは苦しそうな声を出しながら後ろに下がった。

レヴィナが剣を持ち替え、剣を逆手持ちにし、剣が青く光り、青いオーラが纏った。

「あれは、俺と同じ……?」

レヴィナはそのままカマキリに近づき、カマキリの首を斬ろうとしたが、カマキリは素早く反応し、腕でガードしようとした。

レヴィナは剣を振り下ろすと、剣はカマキリの腕を切断してそのまま首まで切り裂いたがまだカマキリは動いていた。

レヴィナが手から青い正方形のキューブを出してカマキリの身体を囲うとカマキリの動きが止まり、そのままカマキリは爆発と共に消えてった。

するとその時、さっきの爆発で地面が揺れ、レヴィナがよろめいていた。このままでは瓦礫に巻き込まれてしまう。

しかし、ゼネルをほっとく訳にはいかないので、俺は急いでゼネルの元に向かった。

息はしてるが腹から出血が酷く、もう虫の息だった。ゼネルの傷を手で押さえ、血を止めようとした。

最後に取っておいた。タンムズコアIVでゼネルを回復させるが、回復出来ない。すると、ゼネルが口を開き、何か言おうとしていた。

「ごめん……実は……人間なんだよ……」

「おい! 何を言ってる!」

どういう意味なのか分からず、必死に話しかけたが返事は返ってこなかった。

「ゼネル……?」

ゼネルは静かに目を閉じ、そのまま力尽きて死んだ。

「嘘だろ? おい、起きてくれよ!」

その時、金属音がして振り向くとレヴィナが倒れてた。レヴィナの足には瓦礫が乗っかっていて、動けそうになかった。

レヴィナを助けようとしたが、その前にレヴィナが俺の手を掴んだ。

レヴィナが最後の一言を言った。

「ありがとう……」

俺はレヴィナを抱きしめ、そしてレヴィナは死んでしまった。

レヴィナの手が重くなり、離すと手を下ろし、レヴィナの顔がとても安らかになっていたので、涙が止まらなかった。

すると、目の前に瓦礫が落ちて来た。危険だと思い、急いでその場を離れた。


草原に着き、出口も分からないまま歩き続けた。

俺はこれからどうすればいいのか分からなかった。ただ、このままじゃいけないと思い、歩く事をやめ、座り込んだ。

その時、誰かが呟いてる。声がした方を見ると、そこには赤いフードを被ったジャハトが下を向いて呟いていて、俺に話しかけてきた。

「やぁ、大輝君。久々だね。元気にしてるかい?」

「お前は……!」

「まあまあ、そう焦らないでくれ。それより、もうすぐ地獄が始まったようだ」

「どういう意味だ?」

仮面を外すと、その顔はハーフの青年男性だった。しかし、瞳に光がなく、目が死んでるのに気づいた。しかも、耳がない。

「耳がない理由は奴が何処からか声が聞こえて来るのを恐れて、自ら切り落とした。今頃後悔してるだろうよ。改めて紹介する。このウイルスの指揮する者ジヤハト財団幹部。ジヤハトだ」

「何故俺の前に出てきた? 何が目的だ?」

「目的なんてない。だが、前はな。今は違う。今はこの暴走した奴のウイルスを止めることだ。君が望むなら全力を尽くして守るよ」

まさかウイルスのこいつが俺の仲間になる? 嘘を付いてる可能性もあると思った。だから俺は断った。

「断る。お前を信用しない」

そう言うとジヤハトは笑った。

「そうか。じゃあ、あの目の前の奴を一人で倒せるか?」

ジヤハトは向こうを指差しその指差した方を向くと、そこには巨大な全身真っ黒な人型のロボットが立っていた。

「あれは?」

「神が作り出した最強の兵器、ノイマン最終大型システムだ。あれだけは避けたかったがまさか召喚するとわな。しかもイカれた男、ヤジンワフが乗っているな」

「あのロボットが……」

その巨大ロボは俺を見つめていた。

「君は、この世界を救えるか?」

俺は剣を構えた。

「当たり前だ!」

そして巨大ロボ、いや、ノイマンの最終型に向かって走り出した。

「おい、待て! お前には無理だ」

ジヤハトの声が聞こえたが、そんなことより今はあいつを倒す事の方が先だ。

すると、俺の目の前にジヤハトが立っていた。

「えっ?」

「いいか、よく聞け。まず、君が勝てる相手じゃない。君がいくら強くても、君がどれだけ速く動いても、君の剣技がどんなに強くとも、あのノイマン最終型は君を軽く凌駕している。だから、私が時間を稼ぐから君は逃げてくれ」

俺はジヤハトを睨みつけた。

「断る。お前は俺の仲間だ。だからお前を一人置いて逃げるなんて出来ない」

ジヤハトは首を横に振った。

「違う、私は仲間ではない。ただのウイルスだ。それに、もしここで私が死んだら、この電脳世界の人達は消えてしまう。それは嫌だ。頼む、この世界を救ってくれ。この世界を、私のいた世界を救えるのは君しかいない」

俺は剣を構えた。

「おい、やめろ。死ぬぞ」

「俺は死なねぇよ。俺がこの世界を救う。それが俺の存在理由だ」

そう言い、大輝は巨大ロボに突撃し、斬りかかった。

「死ね!!......!?」

巨大ロボから青白い光が照らされ、大輝はその光のせいか、段々と熱くなっていった......。

「……あ、あれ?」

「何カッコつけてるんだ。今のでお前死んでたぞ」

ジヤハトが呆れながら言った。

「え?嘘だろ?」

「ああ、本当だよ。全く……」

「じゃぁなんで俺は生きてんだよ」

「私の能力だ。光の熱射を防いだんだよ」

「あ……ありがとう……」

「とりあえずお前は裏から回れ。そいつの背中に乗ってコアを壊せばいい。それと、お前の通常の身体を一時的に最大化した。今のうちに早く行け」

「分かった」

大輝は巨大ロボの裏に回り、そして剣を構え、突撃する。その間ジャハトは時間稼ぎに攻撃を続けた。

巨大ロボは光を放ち、熱を発し、ジャハトを攻撃した。

しかし、ジャハトはその攻撃を軽々と避け、巨大ロボの攻撃を避け続けた。

すると、ヤジンワフの声がスピーカーから聞こえてきた。

「おい!!避けんなクソが!! 二度とお前の顔見なくしてやろうか!!」

「羨ましがってんの〜? 嫉妬してるのかなぁ?」

ジャハトは煽りながら攻撃を避ける。

「てめぇ、許さん!!」

ヤジンワフが激怒すると攻撃が激しくなった。

「おいおい、そんなに怒っていいのか?もうすぐ死ぬぞ?」

「あぁ!?」

ジャハトが挑発した瞬間、大輝が剣を振りかざしてきた。

「うわっ!」

しかし、その巨大ロボが硬すぎて刃が折れてしまった。巨大ロボは身体を揺らし、大輝は吹っ飛ばされてしまう。

「ぐあっ!!」

「大輝!? 」

「……大丈夫だ……」

「おい! 言っとくがな。俺の仲間はどんな技でも喰らわないんだよ! 」

ジャハトは巨大ロボに近づき、攻撃しようとした。

ジャハトの能力はどんな敵でも瞬殺できる【バイナリーデストロイ】という技を持っているのだ。ジャハトの周りに浮いてる赤い物体を巨大ロボに目掛けて放とうとしたその時……口からレーザーを放とうとしてた。それに気づいたジャハトは大輝に命令した。

「伏せろ!!」

「分かった」

大輝は伏せて、目を閉じ、頭を押さえた後、巨大なレーザーが発射された。光線が地面を焼けた後、爆発が起きた。

爆風で吹き飛ばれそうになりながらも、ジャハトと大輝は耐えていた。

目を開けると、辺には草は燃え、黒煙が立ち上る。

「大丈夫か?」

「大丈夫だ……」

「クソ、これじゃあどんな作戦でも意味ねぇよ……」

ジャハトが諦めかけた時上から巨大ロボの足が見え、踏み潰そうとしてきた。ジャハトは大輝と共にテレポートし、少し離れた所に着地した。

巨大ロボの足が地面を踏むと、地面が揺れ動き、その衝撃で大爆発が起きた。

今度の爆風は想像を超える、もっと大きな爆風だ。

ジャハトは大輝を後ろからバリアをするが爆風の威力に耐えきれず、バリアのフィールドにヒビが入る。爆風が止むと今度は土を掘るような音が聞こえた。ジャハトは上を見ると、巨大ロボは腕を伸ばし、土を投げようとした瞬間だった。

ジャハトは土に当たり左腕を失う。痛みを我慢し、バリアを発動する。

しかし、巨大ロボの腕からガトリングガンが現れ、ジャハトに弾丸を撃ち続ける。

地面が飛ぶくらいの威力で爆弾を投げつけてるようだ。

ジャハトの腹に命中し穴だらけになり、血まみれになりながら倒れ込む。

目の前の大きな弾丸を見た時、ジャハトは死を覚悟していた……その時、弾丸が真っ二つに割れ、ジャハトの横を通り過ぎる。後ろを振り向くとハマーナスの姿があった。

「大丈夫か?」

「あぁ……」

すると巨大ロボがまた巨大な手で押し潰そうとしたが、ハマーナスは足を蹴り

上げ、巨大ロボの手の関節部分に当たる。巨大ロボはバランスが崩れ、地面に倒れた。

ジャハトは立ち上がり、巨大ロボに向かって走る。

巨大ロボは立ち上がろうとするが、その隙にジャハトは巨大ロボの頭に乗り、両手で頭を掴んで持ち上げようとするが、目から光が放たれ、バリアを発動するが、一瞬にしてバリアは破壊され、ジャハトはそのまま吹き飛ばされて壁に激突した。

レヴィナはジャハトの元に駆けつけるが、血だらけで倒れていた。

「ジャハト!? 」

ジャハトは息が荒くなり、声が出なかった。肩を揺さぶり、必死にジャハトに呼びかける。

「しっかりしろ! ジャハト! お前が死んだら誰が私を守るんだよ!」

ジャハトは薄っすらと目を開け、大輝を見る。そして大輝に何かを伝えようとした時、巨大ロボがまた起き上がり、ジャハトを踏み潰そうとするが、ハマーナスがジャハトを抱え、回避する。

「起きてください……」

ハマーナスはジャハトを呼びかけるがまた気を失った。気絶したジャハトを地面を下ろし。

ハマーナスは巨大ロボを遠くから睨みつける。

立ち上がり、巨大ロボから近づき、ハマーナスは巨大ロボを見上げる。

巨大ロボの目が光り、ハマーナスは両手で目を隠す。

ハマーナスは巨大ロボの目が見えない間に後ろ回り、巨大ロボの背中に乗る。

肩に乗ったら飛び降り槍を巨大ロボに目を向けて構え、そのまま巨大ロボの目を刺した。

すると巨大ロボの身体が徐々に崩れ落ち攻撃を止めた。

背を地面に付けて一回転し、着地する。

「……危なかった……」

「ハマーナス。怪我はないか?」

大樹は駆け寄り、ハマーナスは大樹の顔を見て口角を緩ませる。

「大丈夫です」

そう優しげに答え、ハマーナスは巨大ロボの方へ向く。巨大ロボはさっきより動きが早くなり、また走り出した。

「何だ!?」

大輝は驚き、ハマーナスは巨大ロボの動きに違和感を感じ取る。

「これは面倒な事になりましたね……」

「危ない!!」

巨大ロボが拳を振り上げ、ハマーナスは咄嵯に避け、大樹はハマーナスの元へ駆け寄る。

ハマーナスは巨大ロボを見つめ、何か閃いた。

「……あ、あの。ちょっと良いですか?」

「なんだ?!」

「このロボットの内部には必ず量子コアがある筈です。そこを狙いましょう」

ハマーナスの提案を聞き、大樹はハマーナスを見つめる。

「分かった!やってみよう」

大樹は巨大ロボに近づき、巨大ロボの内部へ入ろうと近づく。

巨大ロボの腕が動き、大樹は攻撃を避けながら巨大ロボの背中に乗る。

すると急に影が差す。

「なっ……!?」

上を見ると巨大ロボが平手で潰そうとしていた。

もうダメだと思った瞬間、ハマーナスが装備してた槍が飛んできて巨大ロボの手に当たり、巨大ロボは手を下ろす。

「今!!」

ハマーナスの合図で大樹は巨大ロボの内部に入り込む。

そして、巨大ロボに乗っかり、内部を調べる。

「量子コアは……あった!これか!」

大樹は巨大ロボの心臓部である、量子コアを見つける。

「大樹さん、その機械を壊してください」

大樹は言われた通り、巨大ロボから降りて、剣で量子コアを刺した。

すると、巨大ロボは動かずにそのまま崩れ落ちる。大樹は巨大ロボの背中に乗り、ハマーナス達と合流する。

「大樹君、お疲れ様」

「大樹、大丈夫?怪我はない?」

「あぁ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「大樹がいなかったらきっと今頃この世界は終わってました……。本当に助かります」

「いやいや、そんな……」

「大樹、貴方がいて助かりました。ありがとうございます」

「……そ、そうかな……」

大樹は頬を赤く染めながらハマーナスに礼を言う。

「さっきの巨大ロボはなんだったんでしょうね」

「巨大ロボ……あれは多分、誰かが重要なコアを破壊したと思う」

「誰が破壊したのでしょう? それに、何の目的でコアを破壊したのか?」

「目的かぁ、何なんだ一体」

「まあ、今はゆっくり休みましょう」

「そうだな、ちょっと疲れたよ……」

二人はここで地面に座りこもうとした時、ハマーナスが後ろから気配を感じた。

「大樹! 危ない!」

「えっ!?」

銃声の音がし、ハマーナスは、大樹を庇う形で銃弾を受ける。

「くぅッ……大樹君、大丈夫ですか?」

「お、おい、ハマーナスさん、血が出てるぞ!」

「大丈夫です……。このくらいの傷、大したことありません」

「そんなことねぇだろ!早く手当てしないと……」

大樹はハマーナスを病院に連れていこうとしたら、目の前にダウンを着た男が立っていた。その男は大樹達に向けて銃を構えていた。

「ちっ、仕留めきれなかったか」

「……ッ、お前は……まさか……ヤジンワフ……なのか……?」

大樹は男を見て驚愕した。ヤジンワフはCSPAの仲間だったのだ。しかし、なぜここにいるのか分からなかった。

「……俺の名前を知ってんのか……まあ顔見れば判断出来るな。おいクズ男が。貴様は生きてちゃいけねえんだよ!」

「何でだよ!?」

「それは、貴様に生きる価値が無いからだ。貴様が生きているだけでイラつく、虫酸が走る、吐き気がする、不愉快極まりない! だからここで死ね! 大樹!」

「くっ……!」

大樹は銃を構え、引き金を引いた。銃弾は真っ直ぐに飛んでいった。

「無駄だ」

「なッ……! 弾を素手で……?」

大樹は唖然としていた。大樹の放った弾丸を、ヤジンワフは片手で掴んでいた。

「こんな豆鉄砲で俺を倒せると思ってんのか?大樹、貴様も所詮この程度か。ガッカリだぜ」

「ぐっ……」

「じゃあ死ね!」

頭に狙いを向けられた瞬間、ハマーナスは立ち上がり、ヤジンワフに近づく。

「ハマーナスさん!?」

「おいおい、邪魔すんじゃねぇよ。お前には関係ないだろ?」

「関係ある......」

「そうかい……なら先にてめぇが死んでもらおう」

ハマーナスは銃口を額に当てられるが、素早い動きで回避し、ヤジンワフの顔に拳を入れる。

「ぐあっ!」

ハマーナスが芝生の土に隠してあった槍を取り出し、ヤジンワフに向かって投げた。

「速い......!くそが!」

ヤジンワフは避けて、ハマーナスに攻撃しようとするが、既に背後を取られていた。

「遅い」

「なッ……!」

背中から心臓部分を貫かれた。

「がはっ……!」

「貴様は私の事を舐めてるようだが、私は貴様より何倍も経験を積んでいる。貴様は弱い、そして、貴様にはもう生きる価値は無い。死ね!」

「うぐっ……!」

ヤジンワフは大樹に銃を向けた。

「さようならだ。大樹!」

引き金を引いた......が先に銃弾が頭に命中した。

「え……」

ヤジンワフは倒れて死んだ。撃たれる前に大輝がヤジンワフを撃ったのだ。

「はぁ……はぁ……危なかった……」

「大輝、大丈夫ですか?」

「あ、ああ……」

「お疲れ様です」

レヴィナは大輝の肩をポンっと叩く。

すると、ヤジンワフの死体は消えていった。

「これでヤジンワフさんはこの世には居なくなりました」

「そうだな……」

「ジャハトの所に行かないと行けませんね」

「ああ……行くか……」

ジャハトの所に向かい、気絶してるジャハトを起こしに行った。

「おい、起きてくれ」

「ん……ここは……?確か……俺は……死んだのか……?」

「いや、生きてますよ。それより早く次元転送装置を起動させてください」

「ああ……そう言えば……分かった……」

ジャハトは立ち上がり、次元転送装置を起動させた。

「ありがとう。それでは皆、家に帰ろう」

「……」

「……」

二人は帰りたくないのか無言で下を向く。

「おい、どうしたんだ二人共?」

「……帰れねぇんだ……」

「え……?」

「帰れないんだよ……」

「ど、どういう事なんだ……?」

「大樹さん……実は……」

ハマーナスは大輝に説明した。

「実は私達、この電脳世界で別次元に行くことは出来ません。この世界から出る事は出来ないんです……」

「そ、そんな……」

「……ごめんなさい……」

「……」

大輝は呆然と立ち尽くしていた。

「……帰れないのか……」

「すまない……大輝……」

二人の表情は暗いままである。

「まぁ……しょうがないよね……」

「あと一つ忘れてましたがコアを破壊した後この電脳世界は消滅します」

「消滅……?」

「はい、この電脳世界は消滅するので、帰ることが出来ません」

「じゃあ……ハマーナス達は……?」

「はい……ここに残ります……」

「……」

「ごめんなさい……」

「……」

三人は沈黙のまま、しばらく立っていた。

「あの……大樹さん……」

「ん……?」

「早く行かないと次元転送装置が壊れますよ……」

「ああ……」

「早く行きましょう……」

「……」

大輝は黙ったままだった。

「なぁ……ハマーナス……」

「何ですか……?」

「俺の事、一生忘れないでよ」

「もちろん。さようなら……」

大輝はそう言い残し、手を振り、この世界を去った……。

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