Ver2.2 終章後半

次元転送装置の空間から出るとそこはうつ伏せで倒れた部屋の場所だった。

「帰って来たんだ……俺の家……」

大樹は何か考えていた。

そして大樹はある事を思いついたのだ。

それは……?

シオンのあの言葉の意味を……。

俺が消える前に残した言葉……

【大輝さん。もし、我が息絶えたら我を探してください】

「……探せだと……?」

大樹はしばらく考えた。

「もしかして……あの時のあれか……?」

大樹はそう思うと、玄関からインターホンが鳴る。宅配便を頼んだ覚えないのに誰だろうと思い、ドアを開けるとそこには、睨みつける彼女がいた。右手には包丁を握りしめていた。彼女は怒りながら言った。

「大輝君……?何で逃げるのかなぁ?」

「……お前は……歩美!?」

大樹は驚き、そして焦った。

「なんで俺の家に……いるんだよ……!」

「135466、IDで調べればわかるよ……」

「そ、そうなのか……?」

大樹は急いでスマホを取り出し、自分のアカウント名を調べると……

「……本当だ……」

「それよりさ……?なんで私の計画を邪魔したのかなぁ……?大樹君」

歩美は包丁を大樹に突きつけながら、笑顔で言う。

「計画……?」

大樹は何の事か分からなかった。すると彼女は怒り出した。

「惚けないで! 私が作ったこの世界を消す気なんでしょう!?」

大樹は驚き、言った。

「いや、そんな事はしないぞ……!」

「汗水垂らして作った私の自信作のペットを消させないわ……!」

大樹は思った、

(え……?俺がこの世界の元凶なの?)と。

歩美は続けて話す。

「大輝君には分からないと思うけどね、私は今まで沢山の人に愛されて育ってきたの、だから今度こそは、幸せになりたいの……!邪魔するなら、貴方も殺さないと……」

歩美は包丁を強く握りしめ、大樹に襲いかかろうとした時だった。大樹は歩美を止めて、話した。

「ま、待ってくれ、この世界を消すなんてそんな事俺はしない……!」

「あーそうなんだ〜じゃあ何故C88115Mを壊したのかなぁ?」

大樹はその言葉に驚く。

「な、なんで知ってる……!?」

歩美は、この世界を消す理由を、説明した。

「この世界の元凶は、CSPAのコア、C88115Mなんだ、そのコアを破壊すると、この世界の人間は消え、この世界は滅亡してしまう、私は、それを止めたかった、でも、もう遅かった、君がこの世界に入ってきた瞬間、この世界のデータは壊れ、私には修復不可能になった、だから、このコアを奪おうとした……」

大樹は、歩美の話を聞いて、言った。

「ウイルスを出したのは、お前だったのか……?」

歩美は大樹に包丁を向けたまま、答えた。

「そうだよ。君が居なけりゃあ、こんな事にはならなかったのに……」

歩美は、涙を流す。歯を噛み締め、悔しさを見せる。大樹は歩美を止める。

「なぁ……!頼む……、この世界を消さないでくれ……!」

大樹は、歩美に懇願した。しかし、歩美はその願いを断る。

「無理だよ……、このコアを破壊したら、この世界の人間は消えてなくなる……、この世界は、終わるんだ……!」

歩美は、包丁を強く握りしめ、大樹に近づく。

「待て!! 落ち着け!!」

大樹は下がりながら止めるよう命じたけど声は届かず、歩美は、包丁を突き刺そうとしてた。

「死ね……!!」

大樹は死ぬだろうと目を瞑った……。

すると、包丁が床に落ちた音がした。

目を開けると心臓を押さえながら苦しそうにしていた。大樹は心配して声を掛けるが、歩美は答える余裕がなかった。

大樹はもう一度聞く。

「大丈夫か……!?」

「だ、だい、じょうぶ……」

「大丈夫じゃないだろ! 早く救急車を呼ぶからな!」

大樹はポケットからスマホを取り出し、救急センターに電話しようとした。



看護師達が歩美を運んで手術室に向かう為、大輝は背中を見送る事しか出来なかった。頭が真っ白になり、歩美が居なくなった現実を受け止めきれない。

大樹がその場に座り込む。

「俺のせいなのか……? なんでこんな事になったんだよ……」

大樹は、後悔と罪悪感に押し潰されそうになった。大樹は怒りを壁にぶつけるが、何も変わらない。大樹が頭を掻く。

(俺は一体何をやってたんだ……)

大樹は、自分の無力さに腹が立ち、壁を思いっきり殴った。拳に痛みが走り、もっと怒りが込み上がる。

「クソッ……! クソォ……!」

大樹は、また、壁を殴り始めた。すると、手術室から医者が出てきた。

大樹は立ち上がり、医師に聞く。

「歩美は……!?」

「落ち着いて聞いてください。……彼女の心臓はもう……」

大樹は絶望した。その瞬間、大樹の目からは涙が溢れ出た。

大樹は、歩美が死んだ事を受け止めきれず、泣き崩れた。

「あぁ……! ああ……! なんで……! どうして……! うわあぁ……!」

大樹は泣いた。今までの人生の中で一番泣いたかもしれない。大樹は、歩美との思い出を思い出し、歩美と過ごした時間を思い出すと、余計に悲しみが増していく。

大樹は、涙を流しながら病院を後にし、歩美の家に向かった。大樹は、歩美の部屋に入るとそこにはいつも通りの生活の跡があり、まだ歩美がいるような気がして、更に悲しくなっていく。

大樹は、歩美の写真を手に取り、写真を眺めていた。すると、電話が鳴り、電話に出る会社の上司からだった。

大樹は、「すいません……今は……」と言うも「話は聞いたぞ。今日から入社する浅野さんが亡くなられたって聞いたけど」と言われ大樹は、「そうですか……分かりました……」

「まぁ、君も葬式は行った方がいいから今日は休んでくれ、皆にそう伝えたから」と、言われた。

「分かりました……」

大樹は、返事をし、電話を切った。



家に帰り大樹は、怒りをぶつけた。

「……俺が……守れなかった……! 俺が……! 俺が……!」

大樹は、自分の無力さを呪い、自分を責めた。

すると、シオンのまたあの言葉を思い出す。

大樹はその言葉が頭から離れず、考えた。

「探す……?何を……?」

大樹は、シオンを探し始めた。

しかし、何も情報が無く、分からなかつた。

「くそ……! 情報が無さ過ぎる……!」

大樹は、家にある本を全て読んだ。

「どこだ……! どこにいるんだよ……! シオン……!」

大樹は、シオンの情報を探すも、全く無く、大樹は諦めかけた。

しかしある記憶を思い出した。シオンの隠れ家に行こうとした。



シオンの隠れ家に着き、大樹はある事に気付く。

「あれ? あの時、確かこの辺りでシオンが……」

目の前にはただの空き地で、大樹は頭を搔く。

「居ないから別の場所に居るかもな……」

大樹は、あの頃シオンと洋服屋に買い物に行ったり、喫茶店でお茶したりなどした事を思い出す。

「懐かしいな……」

大樹は、ある場所に足を運んだ。



しかし、着くとビルしか無く、洋服屋なんて書いてなかった。

「何でだよ……! くそ……!」大樹は悔しさのあまり、地面を蹴った。

大樹は諦め、家に帰った。



社会人3ヶ月目になった頃、大樹は仕事に慣れてきた。

今日も会社に行き、いつも通り仕事をしていた。



飲み会で長くなり、夜の12時を過ぎていた。

大樹は疲れた体で帰り道を歩いていた。

公園のベンチに座り息を吐く。

「はぁ……やっと終わった……。でも、明日もまた朝早いんだよな……」

大樹は、ため息をつきながら空を見上げる。

目の前に缶コーヒーを渡され、受け取った。

「あ、誰か分からんけどありがとう」

大樹は、貰ったコーヒーを飲み、喉が潤う。

すると隣に座った人が喋り出した。

「大樹さん、お久しぶりであります」

「え……? 誰……?」

大樹は驚き、隣の人を見た。短い白髪にカチューシャを付けてて、落ち着いた顔。間違いない、シオンだった。

「忘れましたか? シオンでありますよ。探しましたからね」

「あー! シオンちゃんだ!」

大樹は思い出し、嬉しそうに言った。

「そうです。全く、探すのに疲れましたよ……」

「ごめんごめん」

「そういえば、大樹さんは覚えてませんでしたね……」

「ごめん、ちょっと忙しくてさ……」

「あの意味は分かりました?」

「あー、あの意味か」

「探しても見つからなかったでしょう? 私もであります。大樹さんを探しても見つからなかったので諦めかけてました。でも、もしかしたらここで休憩するかもしれませんでしたからここで待機したら予想的中でした」

「いや、それは俺がたまたまここに来ただけで……偶然だよ」

「いえ、私の運であります。大樹さんの運の良さに私は感動しました。だからこうして大樹さんに会えたので感謝します」

シオンが会釈をする。そのシオンの手に持ってる缶が気になった。

「え? それビールじゃないよね?」

「え? ビールですけど?あ、大樹さんはお酒弱いですか?」

「あ、そうじゃなくて、何でシオンちゃんが飲んでるのかなって思って……」

「あー、これは仕事終わりに飲むのが楽しみなんですよ」

「もしかして成人超えてる?」

「あー、はい。今年で20歳になりますよ」

大樹は驚いた。シオンがまさか成人だったとは、見た目でまだ幼かったのにとんでもない勘違いした。

「ごめん、俺知らなかったからさ……もうちょっと待ってくれれば良かったのに」

「大丈夫ですよ。それに大樹さんと飲みたかったですし」

「そっか、ならいいんだけど……」

大樹はシオンの隣に座った。そして大樹は飲み物を口に入れた。

「そういえば、もう終電過ぎてますよ。大樹さんは帰らなくても良いんですか?」

「あー、まぁ、うん」

大樹が言葉に詰まる。

「何かあったんですか?もしかして大樹さんも迷子ですか?それとも家出?」

「いや、別に家出とかではないし、迷子とかも違うから」

「そうですか? 大樹さんが嘘ついてるように見えますよ」

「い、いや! 違うし! 嘘ついてないし!」

大樹が慌てながら否定するとシオンがクスッと笑った。

「分かりました。では、帰れないなら私の家に来ませんか?」

「え? でも迷惑じゃない?」

「大丈夫ですよ。大樹さんに会えただけで嬉しいですから」

「そっか、ありがとう。じゃあお願いしようかな」

大樹が立ち上がるとシオンが手を差し伸べてきた。

「よろしくね。大樹さん」

「こちらこそ、シオンちゃん」

大樹はシオンの手を握って、シオンの家に向かった。まだ人気も居ないこの夜道でまだ二人の景色は明るかった。

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