Ver1.6

今日のパソコンの作業を終え、俺はソファーに仰向けになりながら、部屋でくつろいでる。

「はぁ……疲れたな。今日はいろいろあったし」

「そうだねー」

「……本当に止めてくれ」

またアリサが俺の部屋にいたのだ。そして、なぜか椅子に座って足を組んでこちらを見下ろしていた。

「何故ここにいるんだよ」

「だって、鍵開いてたから」

「じゃあ帰れよ。あと普通に不法侵入だから警察に通報するぞ」

「警察? CRSのことか。そんなくだらないことでCRSに報告しても理解してもらえないよ〜」

「……」

確かにその通りである。

CSRは電脳世界の公安警察、しかし、犯罪を犯した場合は逮捕はするがそれ以上のことはできない。

例えば、万引きぐらいの重罪じゃない事件をしても犯人を捕まえることが出来ない。

それこそ殺人事件なんかしたら犯人を見つけても証拠がない以上逮捕できない。だから警察より上の階級なのだ。CRSに説明すれば一応解決するだろうが、余計な手続きが増えるからしたくない。

すると、扉が開きまた、誰か入ってきた。

「おい、勝手に!......なんだシオンか」

「失礼します。仕事が終わりましたのでこちらに来ました」

「お、おう」

なんか言いにくい。この態度の差で見る限りシオンの方が礼儀正しい。というかこいつらがどんな経歴をしてきたのか気になるな。

「ねぇ、皆に聞きたいことがある」

そう聞くと全員こちらを見た。

「なんだ?」

アリサが答えた。

「えーとだな……」

するとシオンは、青ざめた顔になった。どうやら自分の過去のことを暴露されたくないみたいだった。

しかし、アリサは特に表情を変えることもなく平然と答える。

「ん?別に気にしないよ〜だって、もう昔のことだし」



「……なるほど」

アリサの過去は最悪で、特に幼い頃に親に暴力を振るわれ、挙句の果てには村の人達は『厄介女』と呼ばれたらしい。

「そんなことがあったんですか……可哀想に。大丈夫です、今からは私達が仲間なので、安心してください!」

シオンが手を差し出したのに気づくと、アリサは嬉しそうな笑顔になり、手を繋いだ。

(あれ?この二人なんか良い感じだな……まぁ俺が気にすることではないか)



<次の日の朝>

「――うん?」

朝早くに俺は起きた。

――理由を聞くと、いつも俺の部屋にアリサがいなかったから。

部屋から出て、シオンに聞く。

昨日、夜中までずっと一緒にいたということが気になる。だから質問したのだ。するとシオンは頬を赤く染めた。そして口ごもるように言った。

(まさかとは思うが、そういう仲なのか!?)

「あーその、えっと……違うんです!アリサさんに頼まれたことがあって……それだけなんですよ!」

必死に取り繕うとするが逆に怪しい気がする……。まぁいい。

それより、今のうちに聞きたいことがあった。

「――アリサが何処にいったかわかるか?」

そう聞くと、シオンは焦ったように返事をする。

「はい!それはわかります。……多分アリサさんのことだから……」

そして、すぐに走り去った。どうやら本当に知っていたようだ。

ちょうどレヴィナが帰ってきたので、アリサについて聞く。すると、少し不機嫌になったのか眉毛をピクつかせながら答えてくれる。

「アリサがどこ行ったのか知らないわ。あの子だから多分、あの場所じゃないかしら」

そう言って指差したのは、窓の外。もしかしたら……と思った。

すると、アリサが居た。木の側で昼寝している。

何故外に出たのかはわからないが、とりあえず部屋に戻ることにした。



<次の日>

今日は休日なので、シオンと出かけることにした。

シオンと一緒に買い物に行く。理由は、シオンが「お世話になってるお礼に」と、言ってきたからだ。なので、遠慮なく付き合ってもらうことにする。

「――で、まずは何処に行きたいんだ?」

シオンが笑顔で言う。

「えっと、じゃあ……本屋さんに」

「わかった」

「……あと、服も買いにいきたいんですが……」

(なるほど、シオンも女の子だもんな)

「ああいいぞ。じゃあ行くか」

そう言って俺達は歩き出した。


――そして、シオンの服装を見て驚いた。

なんと、シオンが着ているのは、いつもの白衣ではなく、白のワンピースファッションだったのだ。

シオンは恥ずかしげに顔を赤らめて言った。

「……あの、変ですか?」

俺は慌てて答える。

「あ、いや、似合ってると思うよ!」

すると、シオンが嬉しそうに微笑む。

「ありがとうございます。これ、お気に入りなんですよ!」

(よかった。気に入ってくれたみたいだ)

ただ、会計したいが店員が見当たらない……。服は荒らされ、元にあったマネキンはバラバラになって倒れている。

これじゃあ服を買うこともできない。どうしようか悩んでいると、シオンが話しかけてきた。

「――あの、どうしたんです?そんな怖い顔して……」

「いや、なんでもない。それより、この店潰れちまったのか?」

すると、シオンが申し訳なさそうに言う。

「はい……、多分、ウイルスの仕業です……。昨日、私達がここにきたときは普通に営業されてましたから……」

「なるほどな……」

「仕方ありません。今日は諦めましょう。また今度、別のお店で行きましょ?」

そう言ってシオンは、俺の手を引っ張った。

「そうだな……、よし、行くか」

俺はシオンと一緒に服屋を出た。

すると、シオンがいきなり立ち止まる。

目の前にアリサがいたのだ。

(…………!?)

シオンはアリサを見て手を振る。

「あっ!アリサさん!」

しかし、アリサはシオンを無視して俺を見つめていた。表現がいつもと違う気がする。何か不機嫌顔な様子で苦汁を舐めるかような、するとアリサは俺に向かって言った。

「――ダイキ? 何してるんだ? こっちに来いよ」

俺は不思議に思いながらアリサの方に向かったが、大きな銃声の後アリサが倒れた。

「アリサ!」

「近付かないで!!」

シオンの叫び声により、つい足を止めてしまった。

「その人はアリサじゃない! 偽物です!」

(なんだと?)

シオンが指差している方を見ると、そこには、黒いローブを着た人物がいた。

そいつがフードを取ると

「――またバレた。もうこれでは通用しないのかなー、てかいきなり撃つのは卑怯だよ」

白髪ロングヘアー、赤い瞳、黒いマント、白いドレスを着ていた。マークラス組織の少女リリイだ。

「――お前、どうしてこんなことをしたんだ?」

「ん? なんのこと?」

とぼけた様子で言う。

「ウイルスだよ。なぜこんな事を……」

「あぁ、あれね。だって、面白かったもん」

「えっ?」

「だから、ウイルスに命令されてやったの。私はただの駒よ」

(どういうことだ……?)

「じゃあ、なんでアリサの姿になった?」

「それは、君に近付く為よ。アリサなら警戒心も薄れると思ってさ。それに、アリサの方が楽だったしね」

すると、後ろからシオンの声が聞こえてきた。

「――大輝さん!気を付けて下さい!」

「あぁ、わかっている」

「大輝さんから離れてください!!」

「だよね。でも、今は関係ないよ。私がやりたいことは一つだけだもの。――じゃあね......」

遠くの方に銃口を突きつけられ、リリイは動けない状態だった。シオンのスコープを覗かせ、いつでも引き金が引ける状態だ。

「動いたら頭が吹っ飛ぶよ!」

「くッ……!」

リリイはシオンに騙され、背中を向いてしまい悔しそうな表情をする。

すると、リリイは俺に話しかけてくる。

「銃口を突きつけられて動けないなら手空いてるダイキに手伝ってもらって欲しいなー」

「そんなの出来るわけない!」

「そう? それとも、怖いのかな? 弱虫ね。簡単な提案なのになー、しかも成功すれば自由だよ? ずっとここに暮らすのも嫌でしょ? だからその女を撃てばなんでも遊んでいいし、一生楽しい日だよ。こんなチャンス滅多にないよ? 仲間になろうよ、少し」

挑発してくるが、嘘をついてる訳でもないし案外いい人ってことが分かった。

すると、シオンが俺に断ってくる。

「ダメです! 撃っちゃいけません!」

「……」

俺は黙ったままだ。この二つの選択でどちらにすればいいのか悩んでた。

「あと三秒。この女を殺せば君は自由の身だよ?」

リリイが俺に言ってきた。

すると、シオンは声を震えながら俺に頼んできた。

「ダイキさん!お願いします!」

俺は考えるが、時間が迫っていた。

「二......一......」

「くそっ……!」

俺は銃口をシオンの頭に向ける。

ごめん……。本当にごめん……

そして、引き金を引こうとした時だった――突然俺の顔に殴られたような衝撃を受ける。そのまま後ろに吹き飛ばされる。

「ぐあっ!!」

(なんだ!?)

目の前にはアリサがいた。アリサの拳が俺に当たったようだ。

「――ダイキ!! アホか!!」

「えっ?」

「お前、何しようとしてたんだよ!」

「いや、あの……」

「――お前、仲間を殺そうとしたのか?」

「……」

「――お前、人を殺す覚悟あるのか?」

「……」

「――おい、なんとか言えよ!」

そうだ。俺は今何をしようとしたんだ……?

すると、リリイが呆れながら俺に向かって話す。

「ねぇ、大輝。 私はどの方法で味方しても無理みたいね。残念だけど、あなたとはもう会えないわ。バイバーイ......またか......」

帰らさない為、銃口をリリイに全員向けて、撃つ準備をした。

「――動くな!次は当てるぞ!」

「あら? あなた達は私を撃てるのかな?」

「三対一ならこっちが有利だろ。それにお前は武器を持ってない」

「――確かにそうね。でも、これでも勝てると思うよ」

「はぁ……?」

すると、リリイは指パッチンをする。

「――う、撃てない!?」

「なに……? なんで弾が出ねえんだよ!?」

「どうなってるんですか……!?」

全員弾が出なくなり混乱すると、リリイは俺達に説明し始める。

「――これが私の能力よ。このプログラムを書き換え、撃てなくした。つまり、君達の攻撃手段を奪ったのよ」

「そんなのどうやってやったんだよ!?」

「教えなーい」

リリイは俺達をニヤつく。

「くそが……」

「――さて、邪魔者はいなくなった。後は、貴方達を殺し、コアを破壊する」

するとアリサが口を開く。

「あたしなら銃なんて使わずに倒せるぜ」

「え? それどういう意味?」

「そのまんまの意味だ。ほら、行くぞ!」

「あ!待って!」

リリイが止めようとするが、それを気にせず、アリサはシオンと一緒にリリイの元へ走り出す。俺はリリイの銃口を向け、もう一度撃ち込むが、やはり弾は出ない。

(何故だ……。まさか、本当に俺の銃のプログラムを壊したのか?)

俺は急いで銃を捨て、ナイフを取り出した。

(くそっ……。これでなんとかなるか……。相手も素手だし……)

そして、アリサが殴りかかる。

「オラァ!!」

「甘いですね……」

アリサの拳がリリイに当たった感触がなくなり、気付いたらリリイが消えていた。

すると後ろから蹴りを入れられ、吹っ飛ばされた。

「ぐあっ……」

壁に激突し、動けなくなり意識を失った。

この光景を見ていたせいで俺は戦えなかった。どうすればいいんだ。このままでは皆死んでしまう......。俺は悩んでた。

すると後ろから肩を叩かれ、振り向くと無表情の顔したレヴィナがいた。レヴィナは何も言わずにリリイの方に近づく。

リリイはレヴィナに気付き不思議そうな目で見ている。

レヴィナが喋り始める前に、リリイはレヴィナに質問をする。

「レヴィナちゃん? なんでここにいるの?」

「――リリイ、あんたを殺しに来た」

「私を殺す? 無理だよ。私は最強だから」

「それじゃあ、手加減は無しってことだね」

「本気出すなら、私もちょっと本気出しちゃうね」

そう言うと、リリイの周りに黒い炎が現れる。

そして、炎が消えるとそこには、黒いドレスを着たリリイの姿があった。

その姿はまるで悪魔のような姿だった。背中には大きな翼があり、頭は羊の角がある。尻尾もあり、先端が鋭利になっている。

レヴィナはその姿を見ても動じず、冷静に剣を構えていた。

そして、リリイに向かって走り出し、攻撃を始める。しかし、リリイは全ての攻撃をかわし、逆にカウンターを仕掛けるが、全て防がれてしまう。

リリイは距離を取り、レヴィナを見つめる。レヴィナも同じ様に見つめている。

リリイが喋り始める。

「――君の能力、何回でも使えるんだよね」

「そうだよ。それがどうした?」

「――なら、私が攻撃するまで無限に避けれるんじゃないのかな?」

「……やってみてよ」

「――じゃあ、いくよ!」

リリイはレヴィナの周りを高速移動しながら攻撃を繰り出す。

しかし、レヴィナは避けることもせず、ただ攻撃を防ぎ続けていた。

(何故だ……。何故、あのスピードについていけてる……?)

俺は不思議に思いながら見ていた。

(こいつらを殺せるのかも分からない……だが俺はレヴィナが居たら勝てるかもしれない)

するとレヴィナが走って来ていて、攻撃を仕掛けていたのが見えた。

 そしてその瞬間、2人は一瞬にして視界から外れてまた姿を現したと同時に戦っていたのを見た時にはもうすでに、周りに鉄と鉄がぶつかり合う音が響いた。

お互いの攻撃を相殺させているようだ。そして、戦いが始まった時に出来た地面が割れた後が残っている所に足を踏み込んでお互いに攻撃を仕掛けていた。

(互角の戦いかよ……!?いや、リリイに全然効いてねえし、むしろ反撃されてやがる)

少しリリイに押されてるようだ。能力と剣と闘っても能力の方が上だ。

しかし、リリイの放つ黒い棘を避け、腕を斬った。その攻撃を見てリリイの身体からは血色のブロックの形が流れ出したのが見えた。

「くっ......」

リリイが焦っているような声を出す。それはそうだ。リリイにとっては初めての敗北だろうから。

レヴィナは血の付いた剣を振り、血を飛ばす。

まるでこの殺し合いで、決着を付けると言ってるようだった。

しかし、リリイは敗北を察したのかその場から消えた。

レヴィナはそれに気付き、仕留めきれなかった事に苛立ちを覚えているようだ。

あと一歩踏み入ってきていれば間違いなくリリイを倒したかもしれないのだ……。

くそ......また賠償請求がある。この借りは返してもリリイから必ず返してやる。今回は俺達の敗北の事にした。

だが、これで終われない気がするがリリイを倒して証明する事が一番優先だった事は言うまいとした。

それにまだ復讐出来るとは言ってないだろう?

だから早く追い打ちをかけて来れるほど強い人間になれるためにトレーニングをして行こうと思う俺なのだと思った。

皆には迷惑をかけてしまったからな。

レヴィナとリリイの戦闘を見て、立ちすくんでしまい何も戦闘には参加していなかった。

かっこ悪すぎる......。

座り込み、顔を手に当て悩んでた。

すると、シオンが慰めてくれたのだろうか声を出し、励ましも入れた言葉で応援の声をあげる。

「できると決断して。方法などは後から見つければいい」

「誰の言葉だ?」

「エイブラハム・リンカーン」

リンカーンか、確かアメリカを代表する人物の名前だな。

その言葉で俺の心の中に入ってくる所が会った……。人間の価値はその価値を作るもの次第だからと言う部分が好きだったんだよ。

だから俺は決めたのだこの言葉通り自分の中で大切な物はちゃんと言い続けなければダメかもしれないと感じた俺は皆と一緒に戦うことを決意したそして守りたい誰かがいるというのは本当に心を支え、行動することに影響してくれようだと思うことが出来るはずだからだと思っている。それに、皆と協力してリリイを追いつめそして勝つことでこれからの人生を過ごしていけると思ってくれた。

俺はシオンに感謝した。

「シオン、ありがとうお陰で元気出た」

シオンは、少し笑顔になり、約束を伝えられた。

「......大輝さん。もし、我が息絶えたら我を探してください」

何だか意味が分からないけど俺は約束を守り、返事をする。

「分かった」

「おーい!大丈夫かー!」

向こうから男性の声がした。おそらく警備の兵士だろう……。

兵士に助けられる今の自分を見てかっこ悪い。

しかし、声をかけてくれたのは兵士じゃなく俺達の人間では無い服装をしている。

何処かの組織に所属してるのか分からない。

「あ! スピジュン!」

レヴィナが彼に出会うと手を大きく振った。

「やっと見つけた。お前らリリイと遭遇したから焦って捜索したよー」

「ごめんなさいね。私達はリリイと戦っていたの」

「そっか。無事なら良いんだよ『我が神よ......』」

彼は手を胸に当て、目を瞑りながら祈っていた。

「まだそれやってるの?」

「あ、そうだね。つい癖で」

俺はこの彼を全く知らない。なのでシオンに彼は誰なのかを聞く。

「シオン、この人は誰なんだ?」

「彼はスピジュンであります。スピジュンは元々イリアス組織のウイルスでしたが、本部に気に入られたので味方になりました」

理由が下だらなすぎた。でも確かにウイルスは仲間意識を持っていて、裏切ることはないと言われている。ここに来た理由は恐らくCSPAと協力したい事だろう。

スピジュンは俺達の前に立つと、挨拶をした。

「どうも初めまして、スピジュンです。宜しくお願いします」

「こちらこそ。中田 大輝です。よろしく頼む」

スピジュンと俺の自己紹介が終わると俺は質問を始める。

「スピジュン、君は何のウイルスだったけ?」

スピジュンは自分の頭を触りながら答えた。

「僕は、イリアス型のウイルスだったんです。元々スパイとして潜入するために、人間に近付くために人間の形をしてたんですよ」

レヴィナが少し苦笑いする。

「大輝、スピジュンは私達の極秘資料を盗んで大混乱にした人物だわ」

「あ、あぁ、そうだったのか、それはすまなかった」

「何故君が謝るのですか? もう過ぎたことですから、それに僕自身、今の生活に満足しています」

スピジュンは微笑みながら言った。この人なら絶対にリリイに勝てる。根拠無いし適当かもしれないが出来るかもしれない……。

「そういえば、お前らずっと戦ってばかりだから何処か行きたい所はあるか?」

急にスピジュン気を使ってくれるように行きたい場所を聞かれた。俺とレヴィナは答えた。

「ゲーセン」

「水族館」

「お前ら思い出が無さすぎるよ」

悪かったな、思い出が無さすぎて。でも、他に思いつくことは無い。だが、この荒廃した世界に水族館は危険だ。もしかしたらガラスは割れてるかもしれない。ゲーセンは機械が壊れてる状態じゃあ怪我をしてしまう。どうしても思い付かない......。

すると、シオンが小さく呟いた。

「遊園地......」

「ん? シオン何か言ったか?」

「遊園地に行きたい」

スピジュンは笑顔で言う。

「いいですね。んじゃ、遊園地に決まりだな」

皆賛成し、俺達は遊園地に行くことにした。

「いてて......」

さっき壁に激突して気絶したアリサが目を覚ました。

「アリサ! 大丈夫?」

「あぁ……なんとか」

アリサは立ち上がり、自分の体を見る。

「良かった。傷は何ともないや」

スピジュンは何ともないアリサを見ながら元気に言う。

「お? アリサではないか! こんな所にいたとは!」

「こんな所って何だよ。舐めてんのか?」

スピジュンに近づいて腰を手にあてながら上目遣いする。スピジュンは落ち着かせるため手を上げるフリしながら笑顔を見せつつ言う。

「まさかー。そんなはずありませんよアリサ様にそんなこと言うわけないじゃないかー」

この人、相変わらず嘘の誤魔化し方がわざとらしい。レヴィナがスピジュンに早く遊園地へ行くことを勧めるために聞く、

「スピジュン。早く行かないの?」

「あ! そうだった。早く行かないとな!」

皆行こうとしてた時、アリサは場所を聞かれた。

「何処に行くんだ?」

「遊園地ですよ」

スピジュンが答える。遊園地はどこかも分からず、シオンに着いてく。



やっと着いた。中に入ると俺達は唖然とした。俺達が知ってる遊園地じゃない。まず、アトラクションがボロいし、錆び付いてる。乗って大丈夫なのかこれ? チケットを買うカウンターはしっかししてるというのか分からないか知らんがこれでも生きてる事が出来ればいいというのか何を基準にこう、判断するか分からないが生きていると思うことが出来る遊園地に見えた。

シオンはまだ子供だから乗り物に乗れない。

「あの乗り物に乗りましよう」

そう指さしたのは遊園地の代表、メリーゴーランドだった。シオンは乗りたそうに目が煌めいて楽しみしてるように見えるため仕方なく連れていくことにした。

「お? シオンと大輝、あの乗り物に乗るのか? 僕達は他の乗り物に乗るんで、楽しんできてください」

「行ってらっしゃい」

「頑張れよ!」

レヴィナとスピジュンはいいが、今アリサの言葉に違和感を感じた。まるで俺達と二人の時間を楽しんでこいに聞こえるけど俺は気にしないとこ。

「お前らは乗らないのか?」

「ああ。私達は別の乗り物に乗ってるから。また後で会おう」

スピジュンもレヴィナも同じことを言い、手を振って別れた。



メリーゴーランドの列はどれも子供心忘れてないロボット達が並んでいた。俺はその光景を見て不信感を抱く。そんな俺はシオンに言った。

「この遊園地。大丈夫か?」

「はい。この遊園地は大丈夫です」

「そうなのか?」

「はい。この遊園地は私が子供の頃に出来たのであります。その頃はもっと楽しかったであります」

「へぇー」

俺達はメリーゴーランドに待ってた時、スタッフである人が伝えた。

『まもなく死のメリーゴーランドに出発します』

そう言うと俺とシオン以外ロボットが興奮し始めた。

『ヤッター......』

『ヤットノレル......』

狂ってる。俺とシオンはそう思った。ロボット達が前へ進み、メリーゴーランドの入口前に近づいた。そして、メリーゴーランドが起動した。

その声は離れてても聞こえるくらい大きかった。しかし、聞こえたのは悲鳴だった。

『ウギャアアアアアア』

嫌な予感がしたので、シオンと俺が向かった先はメリーゴーランドの乗り場だった。そこには馬に乗るロボットが痙攣しながら倒れていた。部品が足元に転がり、壊れている。しかし、ロボットはまだ興奮していた。

「まだ動いてる?」

「シオン。離れよう」

俺はシオンを連れてメリーゴーランドから離れようとすると、ロボット達が俺とシオンを見詰めながら喋った。

『タノシンデナイヤツガイル......』

『コワクナイヨ……』

『コワクナイ......』

俺達は逃げようとするが遅かった。ロボットが俺の腕を引っ張ってメリーゴーランドの中に引きずり込んだ。メリーゴーランドは回り始めて、掴む部分に電気が走ってるのが見えた。

「おい!! やめろ!! 離せ!!」

シオンもロボットに引っ張られ、メリーゴーランドの中に引きずり込まれる。

「やめてください!離してください!」

必死の抵抗をするが、この人数では限界が来る。

『イッショニイコ......』

『コワクナイ......』

『コワクナイ……』

「くっ......離せ!!」

最後の抵抗をした瞬間、ロボットの腕が取れた。そのタイミングでメリーゴーランドの回転が止まった。

ロボットが腕を見ると、取れた事に気付く。急に全員暴れ出した。

『ウガァア!!ドウシテェ……』

『バケモノ!!』

俺はこの異様な場を見届けているだけしか出来ない。ここから離れるか。

『ジゴクニヒキヅレ......』

『ジゴク』

『ジゴク』

全員同じ言葉を同じ間隔で口にするが機械で、意味は無い事を証明してた、怖い……。

すると、シオンが苛立ちを感じたのか、ライフルをロボットの脳天に目掛けて引き金を引きまくる。命中した場所は割れていき頭部はほぼ消滅した。俺はシオンの冷静さを失ってる所をただ、見詰めることしか出来ない。



「はぁ......はぁ......」

疲れてている感じの仕草をとる。目付きが鋭くシオンらしくなさそうな顔をしている。

心配なので声を掛ける。

「だ、大丈夫か......?」

「……申し訳ありません。ついカッとなってしまいました」

笑顔で謝罪するように話す。誤魔化してる気もするが、言いにくいので何も返さない。

銃声が聞こえたのかレヴィナ達が向かってきたようだ。レヴィナも感じたのか伝えに来た。

「ここはとても危険だわ!逃げるわよ!」

すると、遊園地のアナウンスから流れる。男性女性混合の声が聞こえる。

「本日はロマンスパークへご利用頂きありがとうございます。お客様に不振な人物が紛れ込ん出るようにお連れの方の意識消失しておりましたね。ご安心ください。これから起きる惨い事を君達に受けてもらいます……」と言い終わるが、放送の後ろから不気味な悲鳴や叫び声を出す……。

焦りと苛立ちを覚える。

「おい! 何処だ! 出てこい!......」

呼ぼうとしても反応が全然返ってくれないが声を聞き逃すのを防ぐために拡聴スピーカーの機能を使用。

すると聞き耳していたのか、アナウンスしてきた人はこちら側に何か仕掛けてくるかのように語り出すと同時にノイズだらけになったかと思うと機械的な話し方をするように説明され……、すると、

「遊園地全体は私が管理してます。ご安心ください」と言うだけだった。いや、もしかしたらこの遊園地は俺達の行動を全部監視されていると思う。やっと理解した。

ガラクタ音がした。振り向くとさっきまで俺を殺そうとしたロボットたちが大量に這いずる気持ち悪さを表に出して迫っているような音を立てて近づいてきている。

『ジゴク......』

またさっきの言葉を口にしてる……嫌すぎる……もう勘づかれる。気がつくと同じ思考ばかり浮かび続けている事に気付き諦め、戦うしか無くなってきたのか決意をして腰に着いた銃を握るようにして構え直し身を固め……覚悟を決めるよう口に出た台詞を出すと同時に一斉に撃つしかないの一言を発した瞬間―……。

ガラクタの皮を剥いだゾンビを現にした怪物達に襲われる。

この拳銃【ラガーマンカスタムP40LZ2】

だと全く効果が無かったらしく反撃を受けやられると身体に電撃のように、走るような感覚に驚きを隠していた様子になっていた……。何か俺の体はどうなってるんだ......。何度も 撃っても撃っても弾かれるだけ。そんなのを知らずに取り乱しそうになる衝動を抑えて、なんとか対処法を考えることにしたもののいいアイデアがひとつも無いことに対して更に心の中で驚いて絶望に陥る。

どうしようも出来ないままレヴィナに質問する。

「レヴィナ。この化け物は何者なんだ?」

「......ヴェスブラインディン組織とイリアス組織の合成機だと言うのは解析済み。だけど装置内が単純構造になってるわ」

「単純構造と言うことはあのロボットは感情が一つしかないのか?」

「そう。つまりプログラムを書き換えなきゃ倒せないわ」

「くそ......どうすれば......」

俺は打開出来なかった出来事に対して苦心する事しか思いつけられなかったので焦っていた……。

誰かが肩を叩く。振り向くとスピジュンが笑顔で言ってきた。

「任せてください。プログラムを書き換えれるなら僕が専門にやります」

そう言うと、化け物の近くに立ち、スピジュンは姿を消す。何が起こったかと思ったら今度は次々と化け物が爆破される。

状況が掴めないまま混乱する。

そして、スピジュンは姿を現し、化け物から抜き取ったであろうディスクを拳で割った。

それと同時にアナウンスから流れる。

すると、アナウンスが……こう語った。

『ih81056。スピジュン様。なぜここに......」

「久しぶり、vi51335sジョーカー」と言って手を前に挙げるような形で声を上げるがなんていったのかがよく分からない事をぼっかりとするだけだった…….。

「気が変わったぐらいかな。前の仕事よりこっちの方が楽になった」そう呟くさと同時に……いきなり遊園地辺りの様子が変わる。これは現実?いわけないと俺は思ってたら突如現れる人の形に近い二足歩行な怪物達は消えてなくなっていきまた。

すると目の前に呻き声をあげて苦しんでる人がいた。シルクハットの黒とシルバーの模様が入った執事スーツ、身長170程度ほどに見えた男性。しかし、俺達を見ながら笑っているところを見て奇妙に見える。

「あなた様こそ主と認めたお方でしょうか」

息継ぎを入れて男は喋った。どこか聞いた事がある声でまるで男じゃないような女の囁く様に聞こえていた。見た目的にも不気味だろ……そんなことは今は気にすることではないとしておき男は語る……そして続ける。

「失礼。この遊園地の本当の責任者、ジョーカー。よろしくお願いします」

紳士的にまたゆっくりと深い例をお礼した後すぐ手を出した。彼は握手を求めていた……しかし、スピジュンは握手などせずに冷たく突っ込む事を告げる。

そして口ずさんでいた

「ジャハトとは誰?」

しかし、ジョーカーにはそんな事など興味なしという様な表情をしながらまたもやとんなうい。そして、スピジュンは話す「ところで。あなたは一体何者で?」

「私は、イリアス組織最高幹部の一人です」

「あれ? おかしいな。僕がその最高幹部の一人だけど?」

「それは昔の事です」

「あぁ! そうだった。忘れてた」

スピジュンは思い出したかのように言う。すると、ジョーカーがスピジュンが居ると戦闘にならないのかと思い、スピジュンに引き下がるように伝える。

「スピジュン様。ここに居るのは危ないじゃないでしょうか? 離れた方が良いでは?」

「無理。腕試ししたいから」

「承知しました。それなら私も本気を出します」

「スピ!......」

レヴィナがスピジュンとの決闘を阻止するが、スピジュンは片方の手を広げる。

そうすると、ジョーカーはスピジュンに近づき、スピジュンが攻撃しようと構えるがジョーカーがスピジュンの手を掴み、スピジュンがジョーカーに攻撃しようとするがジョーカーがスピジュンの腕を掴む。するとジョーカーがスピジュンに話しかけてきた。

「スピジュン様。私の攻撃に耐えられましたら、お引き取り願いましょう」

「そうか。分かった」

そうするとジョーカーは、ガラクタのおもちゃを召喚した。すると、大量のロボットが現れて、スピジュンを襲う。

「これぐらい倒せるよね? スピジュン」

「簡単簡単」

姿を消しながら、スピジュンは銃弾の雨を避けていた。そして、ジョーカーの目の前に現れるとジョーカーは驚く。しかし、スピジュンはジョーカーに向かって剣を振りかざすが、ジョーカーはスピジュンの攻撃を華麗に避ける。

「ほう......スピジュン、なかなかやるじゃないか……」ジョーカーはスピジュンに称賛の声を上げる。

そしてジョーカーはスピジュンに攻撃を仕掛けようとするが、ジョーカーの背後にスピジュンが居た。

「背後に回り込んだつもりだろうが、残念だね。僕はもう既にお前の後ろだ」

「......動いたら体が真っ二つになるよ」

ジョーカーの言葉を聞いたスピジュンは動きを止める。

「この遊園地が私の全て。私が外に出ない限り永遠に倒すことが出来ない」

ジョーカーはニヤケながら喋る。

「それに、ここは、現実世界じゃない。つまり、君の負けだ」

「……確かにそうだ。だけど、ここで終わる訳にはいかない」

「……そうかい」

ジョーカーは指を鳴らす。

すると、スピジュンは動けなくなった。

「まあ......こうなると思ったな」

「最後の言葉だ。何か言い残すことは?」

スピジュンは下を向く。考えた結果顔を上げるとニヤけていた。

「入場料は返金する」

「何を言って......うがっ!......体が......」

ジョーカーの動きが止まる。

「どうやら、頭は冴えてないな」

「何をした......」

「ちょっとだけプログラムをいじくった。――そろそろ花火ショーの時間かな」

「ふざけやがって!!」

ジョーカーの怒りが込み上がる時に爆発した。そしてジョーカーも吹き飛び、遊園地の外まで飛ばされてしまった。そして、廃墟だった遊園地が跡形もなく消え、ただの荒野になってしまった。

「これで終わりか……。意外と呆気なかったな」

スピジュンは倒れているジョーカーに近づいてくる。

「どうだった? 僕の自作プログラムは?」

「私の遊園地は......何処だ……」

「ああ、夢でも見てたんじゃないかな」

「夢......か......」

そよ風が吹く草むらの底でジョーカーはそのまま目を閉じた。

レヴィナはスピジュンに近づくと、スピジュンはレヴィナの頭を撫でて、笑顔でレヴィナを見つめた。するとレヴィナもスピジュンの顔を覗き込むようにして見つめていた。

「スピ……無茶な事をして......」

「僕は君達を守りたかった。ただそれだけだ」

「ありがとう。スピ……」

「こちらこそ」

レヴィナをそっと頭を撫でる。

その光景を見てると俺も泣けてくる。

「あ! そうそう。お前らお腹は空いてないか? 俺は空いたんだけど……」

「うん。お腹減った」

レヴィナはお腹をさすりながら言う。

「じゃあ、ご飯食べに行こうか」

アリサとシオンも笑顔で返事をする。

「はい。そうですね」

「腹減った〜パフェ食べたいよ〜」

「アリサさん。それは間食です」

「えー、いいだろー別に」

アリサは机の上に体を乗せて、椅子の後ろにある窓を見たままダラけてお菓子ばっかり食べてる姿を他のCSPAの職員全員は、その有様を聞いて黙ってしまい空気が悪くなるばかりとなると思う。

 でもそれが俺達にとっては今一番の落ち着く空気だ。

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