ルイーズさんと三つ子たち

 今回は、ルイーズさんと三つ子の話をしましょう。ルイーズさんの三つ子の誕生日プレゼントを届けに行った時の話です。送り主は彼女たちの祖母からでした。それと私からもささやかなプレゼントを三つ用意して行きました。


 家に着くと私は自転車のベルを鳴らして、それから「すみません」と声をかけました。すると、ちょっとしてから、ドアがガチャッと開き、可愛らしい女の子が出てきました。


 三つ子は皆ルイーズさんに似て赤い髪の女の子でしたが、私はどうしても彼女たちの区別がうまくつきませんでした。というのも、彼女たちが私をからかうからです。その時も、「エミリー、お誕生日おめでとう」と私が言いますと、「違うわ。私はゾーイよ」とそう言うのです。


 「おっと、これは失礼。はい、ゾーイ。私からの誕生日プレゼントだよ」と言って、私はカバンの中からクッキーをあげると、女の子は何やらいたずらっぽく笑うのです。「そんなに嬉しいのかい?」と私が聞きますと、彼女は「今お留守番してるの」とそう言って笑います。それで、私はゾーイ宛のプレゼントを渡しますと、エミリーを呼んでくるように言いました。プレゼントを受け取ると女の子は家の中に入っていきました。


 しばらくすると、女の子がまた一人ドアから出てきました。「ああ、エミリー。お誕生日おめでとう」と私が言いますと、女の子は「失礼ね。私はサラよ」と言うのです。「おや、ごめんね。ゾーイにエミリーを呼んできてと言ったものだから、つい」と私が言いますと、なぜか笑いながら「そうよ、私はサラよ」と言いました。


 それで、「はいどうそ」とサラ宛のプレゼントとクッキーを渡しました。そして、「サラ、今度こそエミリーを呼んできて」と言いました。女の子は家の中へと入っていきました。


 ちょっとして、「ボンジュール、ジャックおじさん」ドアが開くと女の子が言いました。「ボンジュール。お誕生日おめでとう。エミリー」と私が言いますと、女の子は「あれ?違うわ。私はエミリーじゃなくて、ゾーイよ」と言いました。


 それで「あれ、さっき私はゾーイにあったよ」と私は言いました。すると、女の子は「きっとからかったのよ」と言います。「じゃあ、君はゾーイなの?」と聞きますと、女の子は笑いをこらえきれずに吹きだして「違うわ。私は本当はエミリーなの」と言いました。それから私はエミリーにプレゼントとクッキーをあげますと、「それじゃあね」と言って、家をあとにしようとしました。


 すると、後ろから「あら、ジャックさん。ボンジュール」と言う声が聞こえました。見ると、ルイーズさんが物でいっぱいになった紙袋を抱えていました。そして、その後ろには赤い髪の女の子が二人、いたずらっぽく笑っていたのです。「あれ?ゾーイとサラかい?」と私が聞くと、「そうよ」と二人は声を揃えて笑いました。


 「おかしいな。家にもゾーイとサラがいたよ」と私が言いますと、「騙されたでしょ」と二人はまたもいたずらっぽくニコニコするのです。「すみません、うちの子が。エミリーが誕生日ケーキを作りたいと言うから、家で一人でお留守番をしていたのですが」とルイーズさんは言いました。しかし、その様子はどこか笑いをこらえているようでした。それから「いえいえ、みな元気で素敵ですよ」と私は言いますと、改めて(?)ゾーイとサラに「おめでとう」と言いました。


 次の家へと配達にむかいながら、「可愛らしいな。でも、エミリーとゾーイとサラはいつまで経っても見分けがつけられないなぁ」と私は困ったのでした。

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